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*** 226 名前: ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/09/30(土) 23:30:44.78 3Zf/PY4C0 じゃあ、覚えてる人少ないと思うからあらすじから。 あらすじ アツシは親友がしばらくの間部活を休んでいたのを不審に思い、連絡を取ろうとするが通じない。 しかしやがて直接家に来て欲しいとのメールが返信される。 家に向かったアツシは密かに惹かれていた親友の双子の姉のユウカに出会う。 しかしそれは女体化した親友だった。名前はユーナになったらしい。 二人っきりの部屋でユーナを慰めた後、帰ろうとするアツシにユーナはこれからも友達かどうか尋ねる。 当然だと答えるアツシをユーナはうれしそうに見送った。 家に帰ったアツシはテレビで、「でんじろう」の物理の実験をみる。片栗粉と水を混ぜ合わせ白色のどろどろした物質をつくる。 手で握るとそれは硬くなるが、手を広げると不思議と溶け出してしまう。アツシは早速それを作ってみた。 アツシ「うぉ!なんだこれ!?SGEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!」 こうしてこの二人の物語は始まった。 *** 227 名前: ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/30(土) 23:31:45.86 3Zf/PY4C0 参考・第2スレ目より抜粋~~ ~~ 867 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/03(日) 14:48:08.11 ID:dmzgf0HW0~~ >>864 ~~ 次に粉と水を3:7の比で溶かします ~~ そしてそれをテーブルの上に垂らして ~~ ~~ ~~ それを指でこすると・・ ~~ 873 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/03(日) 14:52:26.08 ID:TooKD7kh0~~ >>867 ~~ その続きは>>874が小説化 ~~ 874 :風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE :2006/09/03(日) 14:52:53.37 ID:bEr1Xz9x0 ~~ >>867 ~~ いまこすってる。だんだんねちゃねちゃして固まってきた ~~ 878 :風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE :2006/09/03(日) 15:00:46.53 ID:bEr1Xz9x0 ~~ >>873 ~~ 俺かよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww ~~ 880 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/09/03(日) 15:06:48.17 ID:TooKD7kh0 ~~ >>878 ~~ 丁度いいんじゃない?いろんな意味でwwwwwwwww ~~ 895 :風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE :2006/09/03(日) 15:32:35.35 ID:bEr1Xz9x0 ~~ >>892 ~~ P90さんはすごいよなwwwwwwww ~~ ~~ 後、>>880の小説「俺と水と片栗粉」は近日公開予定wwwwww ~~ ~~ ~~                             ・・・これ覚えてる人いる?w ~~ *** 230 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/30(土) 23:37:04.75 3Zf/PY4C0 ユーナが女になってからもう1ヶ月が過ぎようとしていた。 初めはユーナも戸惑っていたけれど、毎日の事となると人間恐ろしいもので慣れるのにそこまで時間はかからなかった。 最近ではすっかり女の子らしく振舞うことを覚えたみたいで最初は何かと冷やかしていた男子もいなくなった。 しかし元がそこら辺の女子より可愛かったために今度は本気でユーナを好きになる奴まで現れたいて 今はそれを困っているようだった。俺はというと特に何をするわけでもなく部活に打ち込んでいた。 時々ユーナとユウカちゃんに連れられて買い物したり遊びに行ったくらいだ。 学校ではクラスが同じなので毎日会うが、最近はずっと周りの女子達としゃべっていた。 本当は前みたいに気軽に話しかけたかったけど、そんな状態なので最近はなんとなく俺との距離も離れていた。 親友を失ってしまったみたいで、そんな空虚感を忘れるためにますます今日も練習に打ち込んでいた。 外はもう真っ暗になっていた。一人になって自主練する俺に唐突に声がかけられた。 「おーい、桐原!まだ練習やってたのか?もう体育館閉める時間だぞ。早く着替えて来い!」 顧問の先生が注意しに来たようだ。 「えー、先生まだ8時じゃないですか。もうちょっといいでしょ?」 *** 231 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/30(土) 23:40:53.62 3Zf/PY4C0 「ばかもん!何を言っとる。本来なら日没30分前下校だが、お前が無理を言うから仕方なく開け取るんじゃろうが!  早くしないともうここは使わせんぞ!」 「ええ!?分かりました分かりましたって。もう・・・。ちょっと言ってみただけですよ。本当は心から感謝してます。」 「余計な事言っとらんと、はよ着替えんか。」 先生にまくし立てられて、俺は素早く着替えて体育館を後にした。 ――――あ~あ、もうちょっとやってきたかったな・・・。 俺は自主練する時のあの静けさが好きだった。自分の音しか聞こえてこなくて、 だからこそ自分の存在を確かに感じることが出来る。 そしていろんな考え事から逃れて、練習一点に気持ちを集中出来るのが気持ちよかった。 「う~ん、もしかすると俺ってけっこう変人か・・・?」 校門を出ながら俺は星が煌く夜空に向かって独り言を呟いた。 「いやぁ、アツシは間違いなく変人でしょ?」 *** 233 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/30(土) 23:46:37.49 3Zf/PY4C0 「うおぉぅ!ビックリした。誰?」 不意にかけられた言葉に驚きながらあたりを見回す。校門にもたれかかる様にしてユーナが悪戯っぽく笑っていた。 「あれ?なんでお前ここに?」 「今まで図書館で勉強してたの。帰り道で体育館に明かりついてたから  またアツシが自主練やってるんだと思って待ってた。」 ユーナは俺の反応を確かめるようにして顔を覗き込んだ。まともに目を合わすのは何故か恥ずかしかったので 俺は少し目線を逸らして短く答える。 「いや、でもなんでわざわざ?」 「だってほら、最近学校じゃ全然話せないし。だからたまには一緒に帰ってあげようかなって。」 えへへ、とユーナは笑っている。久々にちゃんと見たその顔は楽しそうで、女になったばかりのあの頃よりずっと可愛かった。 俺はやっぱりなんだか自分の気持ちが整理出来なくて、少しぶっきらぼうに答えてしまう。 「ふーん、そっか。そいや何で学校じゃ最近俺のこと避けてるんだ?  ついこの間までは普通に話してたのに。」 そう聞くとユーナは少し困ったような、でもどこか楽しそうな表情を浮かべた。 *** 234 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/30(土) 23:50:51.45 3Zf/PY4C0 俺はやっぱりなんだか自分の気持ちが整理出来なくて、少しぶっきらぼうに答えてしまう。 「ふーん、そっか。そいや何で学校じゃ最近俺のこと避けてるんだ?  ついこの間までは普通に話してたのに。」 そう聞くとユーナは少し困ったような、でもどこか楽しそうな表情を浮かべた。 「ん~、教えてもいいけど絶対私から聞いたって言わない?」 「ああ、約束する。」 「まぁ、別に隠すことでもないんだけどね。最近になってわかってきたんだけど、  アツシって女子から結構人気あるの気付いてる?」 「え・・あ、そうなの?ていうかそれがこの話題と何の関係があるんだ?」 「も~、にぶいなぁ。」 ユーナはやれやれという感じでため息つく。 *** 236 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/30(土) 23:54:39.29 3Zf/PY4C0 「だから、学校でアツシと仲良く話してると女の子の友人関係的にあんまり良くないわけよ。  特に私は女体化してから結構経って最近少し女の子っぽくしてるし。」 「そっか。よく分からんが面倒くさいのな女子の社会って。」 「まぁね、男だった時の方が気楽だったよ。」 そう言ってユーナは少し寂しそうに苦笑した。俺は何が寂しいのか分からなくてどう答えるべきか迷っていた。 「アツシ、もう時間遅いから歩きながら帰らない?」 「ああ、そうだな。」 先に歩きだすユーナを追うようにしておれは後に続いた。 「最近さ、ちょっと戸惑ってるんだよね。」 不意にユーナは声の調子を落として言った。 *** 237 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:00:22.66 9B/AOn0x0 「何が?」 「だってさ、前までそんなに親しくなかった男子に急にメアド聞かれたり、他の学校の男子にナンパされたりとかするんだよ。  この前なんか呼び出されて告白されたし・・・。  自分が女になったことはもうしょうがないって思って女らしく生きようとしてるけどさ、まだ男子と付き合ったりとか  そんなこと全然考えられなくてね・・・。」 「つまりお前自身は女の自覚はあるけど、今まで同姓だった男を異性として認知できないってこと?」 「うん、まぁそんな感じ。」 「それはなぁ・・・投げやりな回答に聞こえるかもしれんが慣れるしかないと思うぞ。」 「でも自分が良く分からなくなりそうでさ・・・夜にそういうこと考えちゃってちょっと怖いっていうか・・・  なんか落ち付かなくて。」 そう答えるユーナの横顔に出来た影が街の闇を照らす街頭の光のせいだけでないことは明らかで、そして 俺はそれ以上何を言ってもユーナを納得させれないことがわかっていた。 *** 238 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:04:45.45 9B/AOn0x0 だけど納得なんかしなくていいから、気休めでも良いから声をかけてやって、 それで少しでも良いからユーナの気持ちが軽くなれば良いと思った。 「落ち着かないんだったらまた俺の胸の中で泣くか?」 俺は冗談めかして問いかけた。 「ばっ、馬鹿!あれはちょっと女になったばっかで気が動転してただけで////」 「ははは、なに本気にしてるんだよ。冗談だって。」 慌てるユーナが面白くて、俺はつい笑ってしまう。 「まぁ、落ち込むのは分かるけど、そうしてたところで仕方ないだろ?  それに、ほら、やっぱ可愛い子は笑顔でいた方が良いじゃん。」 ――――うわ、さらっと言うつもりだったのになんか最後の方照れて変な言い方だったかも。 内心で俺は動揺したがユーナは素直に言ってくれたことを聞いていた。 「う~ん。」 しかし頭では分かっているがなんとなく納得できずに、どう返事をするべきかためらっている様に見えた。 俺は黙って返答を待つことにした。 *** 239 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:10:19.04 9B/AOn0x0 「・・・でもやっぱ女にはなりたくなかったな。」 ユーナは小声で呟く。 ――――やれやれ、そんなこと言っても意味ないって自分でわかってるくせに。 ユーナはもともと頭のいい奴だった。中学に入って2年間ずっと一緒に部活をしてきたから良く分かる。 「そっか。」 そうとわかっていても、俺はそう短く答えてあいまいにそのユーナの甘えを肯定した。 こういう事は時間が解決してくれるだろうと経験で学んでいたから。 「ねぇ、アツシ。」 隣を歩くユーナと目が合わないように前を見て歩いていた俺に、何故か自信なさそうに問いかける。 俺達は立ち止まった。話しながら歩いていた俺達はいつのまにか帰りの別れる道の場所まで着いていた。 「どした?」 俺が振り返ってユーナを見ようとした時、不意に体にもたれかかって来る感触。 わさっと夜の月光に煌く漆黒の髪が目の前で揺れて、わけが分からぬまま思わず抱き止める。 *** 240 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:16:36.01 9B/AOn0x0 「やっぱさ、ちょっと泣いてもいいかな?」 俺の胸の中でユーナがあの時と同じように呟いた。 「ダメだって。」 俺はちょっと慌ててユーナを引き離す。 ――――あぶねー。おもわずそのまま抱きしめる所だった。 冷静を装う俺に再び声がかけられる。 「も~いいじゃん。ちょっとくらい。」 ユーナは悪戯っぽく笑って俺の顔を覗き込んだ。 「あ、お前まさか・・・」 「あはは、さっきのお返しだよ。本気にした?」 「なんだよ~、人がせっかく心配してやってんのに。」 「ごめんごめん。  ・・・・でも今でもやっぱ少し後悔してる。」 *** 241 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:20:44.45 9B/AOn0x0 また顔を伏せるユーナに俺は 「大丈夫だよ。」 何の根拠もないけれど。 「お前ならちゃんといけるって。」 そんな悲しそうな顔をして欲しくなくて。 「俺お前のは親友なんだろ?そいつが言ってるんだ、間違いないさ。」 ただ自信を持って欲しくて。 ユーナの目は潤んでいたが必死に泣かない様にしている。 俺は頭に手をのせて軽くくしゃくしゃっと撫でた。 「ありがと、アツシ。なんか少し元気出てきた。  ごめんね、なんか私甘えてばっかで。」 「ばーか、気にすんな。」 「うん。これからはなるべく自分で考えて頑張るようにするから。」 「そうしろ。そんで本当に辛くなったら俺が助けてやるさ。」 その言葉を最後に俺達はその日は別れた。 *** 242 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:23:25.97 9B/AOn0x0 最後に見たユーナの顔はやっぱり可愛くて、高鳴った自分の心臓はわざと無視した。 まだこの感情に名前は付けられなかった。いや、付けたくなかっただけかもしれない。 本当に女になってしまったことの変化を恐れていたのは俺だったから。 私はアツシと別れて帰り道を急いだ。ただひとつの言葉だけが胸に突き刺さっていた。自分が望んだはずなのに・・・。 「俺はお前の親友だろ・・・か。」 アツシの言葉を闇夜の虚空に復唱する。 私は再び泣き出しそうになってしまった・・・・。 *** 243 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:25:47.52 9B/AOn0x0 まだ続き気になる人いる? *** 247 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:33:53.66 9B/AOn0x0 じゃあまた投下~           ※               ※ ―――――――2ヶ月後   今日は部活の大会の日だ。俺達は関東地区の大会で全国出場がかかった試合の最中にいた。 応援席には部活の後輩と一部の女子が来ていた。その中にはユーナの姿もあった。 流れはこちら側の劣勢。流れを取り戻そうとして無理した体力がやがて切れ始め、意識が朦朧とする。 やがて流れは変わらぬまま試合終了のホイッスルが鳴り響く。 試合中に聞こえてきた声援の中に混じったユーナの声がやけに耳に残っていた・・・。 「あ~くそ。もう俺達の夏は終わりかよ。」 帰りの電車の中チームメイトは口々に愚痴っている。試合終了直後は泣いてた奴もいたけどもう今は皆落ち着いたようだ。 「・・・、だからそこでそうすれば良かったのにな・・・。」 「あの時のプレイは惜しかったな。」 過去を悔やむ者や反省する者と、形は違うけれど全員が最後の試合を悔いていた。 *** 248 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:38:05.42 9B/AOn0x0 「アツシ先輩は何にもないんですか?」 後輩の一人が隅で黙って聞いていた俺に尋ねてきた。隣でユーナが俺達の話を聞いている 「まぁな。俺は高校になっても部活は続けるし。実は○○高校からスカウト来てるし。」 「ええ!!?○○からですか?確かに先輩ずば抜けてうまいですけど。」 「なに?アツシ、お前スカウトかかってんのか!?」 後輩が興奮して声を大きくしたせいで皆に聞こえてしまったようだ。注目が集まる俺は面倒くさそうに答える。 「実は春くらいから話はあったんだけどな。まぁでも一応勉強して受験もするけどな。」 それを聞くと他の奴らは「か~、才能がある奴はいいねぇ」とか言って再び愚痴りだした。 「アツシ先輩が二人いれば勝てたかもしれないっすね。」 さっきとは別の後輩がそんなこと言い出した。 *** 249 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 00:41:43.41 9B/AOn0x0 「それなら、男だった時のユーナがいた方が全然強えぇよ。」 「それもそうだな~。」 「確かにユーナが男だったら全国行けたかもしれないな。」 これは試合中誰もが考えていたことだった。 「そんなことないって。私がいたってそんなに変わらないよ。」 ユーナは引きつった笑顔で答えた。少なからず責任を感じている事は明白だった。 「またまた、謙遜しちゃって。」 「アツシとユーナのタッグはマジで強かったからな。」 ユーナは本当に申し訳なさそうにしていたが、誰も気付く奴なんていなかった。 「あ、あの・・・みんなごめんね。私のせいで・・・」 少し泣きそうなユーナの声に部員はようやく自分達が何をしていたのか気が付いた。 悪気のない言葉の刃が、無数にユーナを傷つけていた。 *** 258 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:03:23.86 9B/AOn0x0 「あ・・・悪い、そんなつもりじゃなかったんだ。」 「うん、わかってる・・・。」 重くなってしまった空気を無視して車内に次の俺達が降りる駅の放送が流れた。 「じゃあな。」 なるべく今までのことを意識しないようにいつも通り皆に別れを告げた。 「おう!またな~。」 俺の意図を察した奴らは同様に普通に挨拶を返して来た。 俺はさりげなくユーナを押して電車を降りようとする。 本来は次の駅で降りるユーナは一瞬戸惑ったがすぐに降りることを決めて歩き出した。 ちょうど俺達が降りたところで電車のドアは閉まりすぐに発進していった。 外はもうすぐ日が暮れてしまいそうで、夕日の横光が目を強く刺激する。 俺達は駅を出てしばらく黙ったまま歩いた。 *** 262 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:08:21.60 9B/AOn0x0 「ありがとね、連れ出してくれて。」 「ああ、気にすんな。それより少し遠くなっちまって悪かったな。」 「ううん、いいよ。  ・・・ねぇ、やっぱりアツシも私がいたら全国いけると思った?」 ――――全くなんでこいつはどう答えても自分が傷つく質問するかな。 そういうところは変わってないになと思いつつ俺は内心苦笑する。 「正直に言うとそう思ったな。」 「そっか・・・。ごめんね、私がしっかりしてれば・・・。」 「それこそ気にするなよ。後悔してもしょうがないさ。それよりも大事なのはこれからだろ?」 「あ・・・  うん、そうだね。」 一瞬固まったあと妙に明るくユーナは笑顔で俺を見た。俺はそれに強烈な違和感を覚える。 「おまえ―――」 「じゃあね、また明日。」 ――――このまま返したらいけない。 *** 266 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:14:33.49 9B/AOn0x0 直感的にそう思って俺の言葉を遮るように言って帰ろうとするユーナを慌てて追った。 その手をとって無理矢理こちらを振り向かせる。 今にも泣き出しそうな表情で俺を見つめる瞳はいっぱいに涙を溜め込んでいた。 「・・・どうしたよ?」 一体どうしたのか分からなくて俺の思考は混乱する。 「・・・これからが大事って言ったよね?」 震える声でかすかにそう告げる。 「ああ。いつも試合で負けた後にお前が言ってたことだ。」 「うん・・・覚えてる。だからさ・・・アツシに言われて気が付いちゃったんだ。  私は女になってから何にも目標とかなくて、だからこれからどうするかとか全然考えてなかったことに気が付いたの。  でもアツシはちゃんと将来の事も考えて、スカウトとかも来てて・・・・」 そこまで言ってユーナは泣いてしまって、うまくろれつが回らなくなっていったん言葉を切った。 「ユーナ・・・。」 目の前ですすり泣くユーナをどう扱っていいか分からなくて俺は路上で立ち尽くしてしまう。 *** 269 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:19:22.98 9B/AOn0x0 「私、女として生きていくこと疲れちゃった。  ・・・。  アツシごめん、今日はもう帰るね。このままいてもしょうがないし。」 そう泣きながら言って振り返ろうとするユーナを俺は気付いたら後ろから抱いて拘束していた。 「アツシ・・・?」 ユーナは驚いた声で俺を見返した。 腕の中にいるユーナは小さくて、当たり前だけど男の時とはもう違っていることを今更ながらに再認識させられる。 「離して・・・、もういいよ・・・。」 そういうユーナの顔は今まで一番悲愴でこっちまで悲しみに引きずられそうだった。 「ばーか、お前らしくないんだよ。」 それでも俺はあえてそういつもの俺らしく冗談めかして告げた。 「そりゃそうだよ・・・もうあの頃とは違うんだよ!?  私だってこうなりたくってなったわけじゃないんだよ。」 俺の態度のせいかさっきより必死に訴える。 *** 270 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:23:08.96 9B/AOn0x0 「落ち着けよ、。お前はお前だろ?」 「だって、もう・・・」 また何か言おうとするユーナの頭をゆっくりと撫でてやる。 それで少し落ち着いたみたいでユーナは黙って俺に寄り添う。 「姿が変わって、友達も変わって、身の回りの環境も変わっちまったかもしれないけどな、  そんなことでお前が自分自身を見失ってどうするよ?  女になってもそのことを受け入れてしっかり自分を見つめなおして生きてる奴はこの世にたくさんいるぞ。  逃げても甘えてもいいけど、それは次へ進むための休息だろう。」 「でも女として生きていく目標も理由も私には・・・。」 「そんなもん俺と一緒に見つければいいさ。それまでは俺が理由になってやる。」 「え・・・?」 「だから、お前が女として生きていく最初の理由は俺が好きになったからじゃダメか?」 なんだか自分でもとんでもないことを言っている気がするがそんなことを考えてる余裕は俺にはなかった。 ただ、今自分が抱きとめているユーナが愛しくて、それを守ることしか考えられなかった。 *** 271 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:25:57.91 9B/AOn0x0 「そうじゃなくて!  ・・・もう気が付いたら好きだった。今まではお前との親友って関係を壊したくなかったから  言うのが怖かったけど、本当は大分前から好きだったんだよ!!」 俺は恥ずかしさなんか忘れて思っていたことをそのまま口に出した。 「私もその・・・まえからアツシのこと好き・・・だったよ」 恥ずかしそうにそう告げるユーナがどうしようもなく可愛くて、俺はそっと唇を奪った。 「ん・・・」 吐息が絡まってお互いの顔を見つめる。 「アツシ、本当に私なんかでいいの?」 「ばーか。」 そういって俺は再び唇を重ねた。 「良いに決まってんだろ。」 腕に感じるこのぬくもりはもう二度と離しはしないと誓った。 *** 272 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:27:40.63 9B/AOn0x0 ―――――――数日後 「おーいユーナ。ちょっとこれ触ってみw」 俺はどろどろの白い物体を差し出した。 「握ってみw」 「わっ!硬くなった。」 「開いてみw」 「え?え??なにこれ!?やわらかくなった!」 「はっはっは。すごかろう!!片栗粉Xの煌きを見たか!!!  これで俺は新たなるSMの境地を開いてみせるwwwwwwwwwwww」                       ――――俺と水と片栗粉――――                            ~fin~ *** 275 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:31:03.25 9B/AOn0x0 あ~~~~~~~~~~~~~疲れたwごめんね無駄に長いことやっちゃってorz あと片栗粉Xあんまり絡まなくてごめんなさいw本当はもうただの単発ネタだったからw どうでしたでしょうか?今回は珍しく短編だったわけですが。 *** 277 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:37:34.43 9B/AOn0x0 >>276ありがとwそんなに真剣によんでもらってると目から汁がw ちなみにバスケ部ですよwさて以下本編への誘導。 ・・・だから俺達はただ当たり前の幸せを願った。 ――――もう2年か・・・。 篤志は目の前の墓石を見る。刻まれた名前の中には何度みても悠奈の名が見つかる。 ただ一緒にいて、笑ったり泣いたり、時には怒ったり。 そうして積み重ねた時間の愛しさを知ってしまったから。 誰が悪いなんてことはなくて悲しみだけが広がっていく。 夏の終わりは今でも篤志は笑えなかった。 ただ君がいない、その空しさが未だに俺をあの夢に縛り付けていた。 それを見てしまうのは単に俺の甘えで君がそんなこと望まないってわかっていても。 いつになったら俺は君を忘れていい・・・? *** 278 名前:俺と水と片栗粉X ◆IGfK3fyxFE 本日のレス 投稿日:2006/10/01(日) 01:39:10.25 9B/AOn0x0 吹き出した風は止みやがて遥かな凪が訪れる。静寂と哀しみと思い出だけ連れて。 ただそれは終わりの物語ではなくて、後に吹く風のための休息なのだ。 今は止まっていればいい。やがて知ることになるだろうから。 この世界には永遠なんてなくて、全てはうつろう風のように留まる事はない。 だけど忘れないで欲しい。案内人はいつもそばにいる。 準備が出来たら彼が道を教えてくれる。風見鶏は風の向く方しか向きはしないのだから。 彼はまた知っている。この凪にも意味があるということを。 人はいつでも前へは進めないから、ゆっくり止まって考えればいい時もある事を。 そしてまた手に入れるだろう。新たに前へ進む力を。 後は待てばいいさ。やがて風が吹き始めるその時を。                        ――――風見鶏本編に続く―――

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