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*** 473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 20:46:18.91 llEwSjXy0
「で、これ駅前のタカハシ衣料さんに置いてきて。大体は伝えてあるから。」
「りょーかい。」
「あとはしたない真似はしないように。」
母、江里の再三の注意を適当に聞き流し、準備を整えると背後の連れに声を掛けた。
「行くぞ。そして撫でるな。」
振り向くと胸があった、ので上を向いて睨みつつ言った。さっきから俺の頭を撫でていた美奈都だ。すっかり高くなってしまった声では威嚇にもならない。
女体化する際、骨格レベルで身体が変化するとは聞いていたが。
「10cm以上縮むって・・・」
「よしよし。」
170cm無いぐらいだった俺、160cmちょっとの美奈都。今では見上げる形である。
「じゃ、お借りしていきます。」
「程々にね。期待してるけど。」
「・・・・行くぞ。」
*** 474 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 20:48:34.07 llEwSjXy0
あれから二日、完全に女体化した俺はこれからの準備を始める事になった。
戸籍の変更に始まる役所での申請、服も買い直さなくてはならない。
「具合はもういいの?」
美奈都は『ほら、女の子のことだし』の一言でついてきた、休みだしいっか。しかしいちいち上を向くのはめんどくさいな。
「大丈夫、みなが来た後からが一番酷かった。でも。」
げへっと咳き込む。
「声がなんだかおかしい。」
「聞いてておかしくは感じないね。いや、前とは変わってるけど。」
「そうか。で、何でみなは俺の頭に手を置いているんだ?」
「ん?ほら・・・ね?じゃぁ手繋ごうか?」
ぎゅっ!
「だが断る。ぎゅっ!じゃない。」
そんな事を話していると最寄りの駅前に着いた。
10年前、当時の市長の『あらゆる商店を一挙に集め郊外の大型スーパーや量販店に打ち勝とう』という方針の基整備された商店街は、今やローカル宅配システムをも兼ね備えそれなりに賑わっていた。
ここで一通りの買い物を済ませてしまおうという計画だ。
*** 475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 20:51:08.58 llEwSjXy0
父親の代からお世話になっている衣料店に着くと、先程母から渡された袋を差し出した。
「これお願いします。」
中身は学生服と運動着、今まで通学に来ていた物である。仕立て直してこれからも着てしまおうという魂胆だ。
幸い通学先の高校は制服に関して「女体化した者に限り、男子制服を着用することを許可する。」となっていたので好都合だ。
「お預かりしますね。にしてもまた可愛らしくなっちゃって・・・女子制服も着てみない?」
「誰が着るか。」
口をへの字にした呉服屋の店員さんを更ににらみつけると、何故か表情が微笑みに変わったが気にしないことにした。
「相変わらず頑固ね。じゃ、採寸するから奥に来て。」
「あ、僕も僕も。」
「すっこんでろ。」
がっかりした美奈都を置いて奥のカーテンで仕切られた小部屋に入った。上着とジーンズを脱ぎ、壮絶なJOJO立ちで迎え撃つ。
「はいはい、さらしなんてよくあったわね。」
俺の胸にはさらしが巻かれていた、母が何処かから出してきた物だ。曰く「小振りなあなたのに合うブラなんてうちにはない」。
「いい彼女じゃないの?大事にしなさい。」
小声で呟いた店員さんの言葉にびくっとする。
(そうか、彼女か・・・彼女・・・だよなぁ、告白めいた物もしたし。一応アレも・・・)
と、自分はもう女であることに気付く。
(それってレズとか・・・そんな・・・・)
*** 476 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 20:56:22.59 llEwSjXy0
そんな事を考えて赤くなってるうちにキリキリと採寸は行われ、店員さんが親指を立て終了の意を伝えてきた。
(さて、またこれを着るのか)
手すりからジーンズを引っ張る、元々着ていた物だが縮んでしまった体型に合うわけがなかった。
と言うことで突貫で裾だけ詰めた物である、ベルトでしわくちゃになった胴回りが何故か哀愁を誘う。
そして袖だけ詰めたロングTシャツ、これで胴回りを隠せるというスンポーだ。
「はぁ・・・・」
なんか泣けてきた。
部屋を出ると美奈都がムスッとしていた。
厚手のブラウスになんというのかは知らないが長めのスカート、自分とは対照的にキッチリ感漂う風体である。
「待たせたな。」
「だいじょーぶだいじょーぶ。」
「で、次は普段着だ。」
「僕の出番だね!」
「・・・・ま、似合ってるか似合ってないかぐらいは判断してくれ。」
*** 479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 21:02:03.63 llEwSjXy0
たどり着いたのはカジュアルショップ、シンプルな服装が好きなのだ。
「ここでいいの?もっとかわいらしー服の方が・・・」
「ん?叩きのめすぞ?」
・ ・ ・ ・ ・
結果、選んだのはロングTシャツにジーンズ、これからの時期に合わせてパーカーも何着か。
すぐにタグを外して着てやった。服装がしっかりしているだけで安心できるのが不思議だ。
「変わり映え無いねぇ。」
「いや、俺だし。ん?その包みは・・」
「そんなことだろうと思って借りてきた。」
ニタニタと笑いながら美奈都が後ろに目線を向ける。
そこにはいわゆる女の子向けショップ。そしてニタニタと笑う店員が二組、今いる店の店員までニタニタしているからである。
そしてゆっくりとした動きで美奈都が出口と俺の間に入る。
目つきが変わり、両手を下ろした構えを取る。やれやれ、そういうことか。
「反抗は予測済みか・・・・相手になってやる。そこは意地でも突破するがなッ!」
「さぁ、さっさと頂いてしまいましょうか。」
*** 480 名前:何を使ってるかは想像に任せる 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 21:05:10.90 llEwSjXy0
先手を切られたら敵いそうにないので突っ込む、とりあえずぶっ飛ばせば諦めるだろう。
今の身体でどのくらいの火力が出せるかはわからんので、とりあえず全力で殴りに行く。
が、美奈都もまた前進、間合いを詰められる。仕方無しに拳撃を2発、これは掌で受け止められる。
だがフェイク、要は突破すればいいのだ。2発目が弾かれると同時に美奈都の左に身体をねじ込み・・・・しかし手刀が迫る。
2発目の拳を受けると共にバックステップで間合いを調整されていた。慌てて減速、右を狙うが美奈都が手刀の勢いを殺さず、上半身をひねり拳を繰り出す。
完全に勢いを殺された俺は一旦止まるしかなかった・・・回避、そこに狙いを済ました中段蹴りが襲う。
しかし一度止まればそこからの動きは自由だ。落ち着き、身を引いて回避。そこからタックル。
美奈都も合わせてタックル、お互い弾かれてまたも対峙する形となった。
「ふふん、火力は問題なし。安心した?僕は安心した。」
「そうか、なら手加減しててめーをぶちのめせる。覚悟しろ。」
*** 482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 21:07:22.39 llEwSjXy0
小細工は不要だ、
「だぁららららららららららららららららららららららららら!!!」
容赦はしない、本気の拳の嵐を美奈都にぶつける。そうでもしないとここは突破できない。
押す、剣幕で、火力で、押す。これが俺の戦い方。
直打は無かったが確実に美奈都をドアの方まで押していた。後は、締めだけ。
「でぇええええええりゃぁああああああ!!!!」
渾身の回し蹴りを繰り出す。火力で、外まで押し切って、終いだ。
「でも弱点を見つけた。」
美奈都が少し間を詰め、
「リーチ・・・」
足を掴む。
「ウェイト・・・」
あれ?踏ん張りが・・・効かない・・・
「ほら、力って速度と重さだよね。京、いくら筋肉が絞り出す力が強くても、身長や体重の利が無ければ。」
そんな・・・
「勝てない。」
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,|
*** 483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/03(火) 21:08:57.13 llEwSjXy0
「ナァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
気が付いたらアルゼンチンバックブリーカーを決められていた。
そのまま広めの試着室にぶち込まれる。
「どーせ下着も男物のままなんでしょ?調達済みなんだから。」
蛍光灯の明かりを背に笑う美奈都を見て、恐怖という物を質量を伴った形で知った気がした。
***510 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/03(火) 22:25:25.87 ID:llEwSjXy0
じゃ、>>483から、また改行が変なのは仕様なんだぜ?
────────────────────
「とりゃ」
軽く足で上半身を絞められると、下から攻められた。
「や・・めれ。」
「むだむだぁ。」
急に下半身が肌寒くなる。ぴったりめのサイズだったが、さっくり脱がされた。そしてがっちり両足を抱え込まれる。
「うお、つるっつる。」
「さ、触るな。ひっ。な、今何した。変な事したよな?なあ!」
「ん?確認。あ、これは・・・」
「確認って何だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
そして下腹・・・よりも更に下、一言で言えばギリギリのあたりを円を描くように撫でられる。
「ぁあっ!ひぃぃぃあっ!」
「ん~いい感じ。じゃ、こっちはこんなもんかな?」
下半身に妙な密着感が生まれると今度は足を絞められた。
「ハァハァ、京の足が絡んで・・・ハァハァ」
「ハァハァするんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・ひぃっ」
と、突如美奈都が顔を近づけ、目で威嚇された。動けなくなるってどういう事だ。
「やめれ、頼むからやめれぇ。」
「問答無用。それに京は僕の物だって事忘れたの?」
そしてこれまたさっくりと上着を脱がされ、さらしに手を掛けるとするすると外された。固結びにしてもらえば良かった。
「見るなぁ・・・」
「ふふ~ん、小振りってのがいいねぇ。味見味見。」
『ぐにっ』っと揉まれる。何だか、なんだこれ。
(あ・・・これ悪くは・・・ない?)
そして美奈都の手はついにその頂点に迫り・・・
「ひゃうッ!」
***512 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/03(火) 22:28:23.69 ID:llEwSjXy0
>>510
「よし、もう動いても良いよ。」
「な・・なにをす・・・る・・・だぁ・・・・・」
朦朧とする意識の中で美奈都に掴みかかる、気絶するとは我ながら情けない。
「こっちじゃない、あっち。」
「嫌だぁ・・・」
バキッ!という効果音と共に俺の首がひねられる。目の前にはパステルカラーのキャミソールにデニムのミニスカートの・・・少女。
そいつはこちらを見て「ひぃっ!」と短い悲鳴を上げたかと思うと背後の女性の胸にうずくまった。その短めの栗色、クセッ毛が気になる髪は正しく・・・
「こ・・これ・・俺・・・?」
「京以外に誰かいたら凄くない?」
「あんまりだぁ・・・こんな・・こんなもうちょっと、ましな・・・・」
鏡に映ったのは、どう見ても高校生と言うには幼げな、そして確実に美少女とかそういう部類の顔立ちだった。
しかも、色々とちっちゃい。なんというか、ちっちゃい。
そして、今やお姉さん格の美奈都にしがみついて泣きじゃくって・・・え?これって最高にやばくないか?男目にも、女目にも。
と、美奈都と目があった、慌てて離れようとしたが遅かった。何やら陶酔した笑みを浮かべながら抱きしめられる。
「愛してる。」
押し倒され、美奈都の顔が迫り・・・
「これからが本番なんだから。」
潤んだ唇から漏れた熱い吐息が俺の顔を優しく包みk
「げふんげふん。」
そこで、店員さん(女)の横槍が入った。助かった。
「続きはしかるべき場所でやりなさい、ね?ホテルとか、自分の部屋とか。それに・・・」
店の外のベンチで店員さん(男)が煙草を吹かしていた、どうやら自分から出ていったらしい。向かいの店の店員は相変わらずニタニタこちらを見ていたが。
とにかく、多彩な意味でやらしい雰囲気を作っていたらしい。俺のせいじゃないけど。
***513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 22:30:55.96 ID:llEwSjXy0
落ち着いたのは近くの喫茶店だった。
「こんななってるとは夢にも思わなかった。」
「僕はいいと思うな。」
「何故?」
聞き返すと外を、正確には空間を遮るガラスをしゃくった。そこにはムスッとした表情のさっきの少女、つまり俺。
身長そのものはそれなりにある(女性としては・・・多分)が、なんか幼く見えるのはどんな不具合だろうか?
ちなみに服装はプロデュースドby美奈都verである。買い込んだ服はみんな送ってしまったらしい。
よってここまで泣きっ面で歩いてきたわけであるが、色々恥ずかしいので忘れることにした。
「チョコレートパフェのお客様~」
俺の注文だ、普通に嬉しかったので思わず顔が綻んでしまった。店員の『あらあら』的な微笑みを見てまたがっくりとする。
今朝からの美奈都の態度、本気でガン垂れたのに微笑む店員さん。合点がいった。
単純に可愛かったからである。
***515 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/03(火) 22:35:16.35 ID:llEwSjXy0
>>513
「ずっと見ないようにしてたんだ。」
「うん。」
色々悪い結果を予想して、そもそも踏ん切りが上手くできずに自分を映す鏡やガラスを見ないようにしてきたのだ。
結果、先程のがNEO俺との初対面だったわけである。そりゃぁびびるぜ。
予想の遙か斜め上を行ってくれたわけだが・・・
そんな俺を見て美奈都は、
「この僕の彼女、将来的にはお嫁さんなんだから可愛くないと困る。それで京なんだから一粒で2度美味しいよね!」
と言って運ばれてきたフルーツパフェにがっつき始めた。
(はは・・・こいつ喜んでいやがる・・・あんなに俺が女になるのを嫌がってたくせに。)
とんでもない発想の切り替え方である、おそらくジョースター家の末裔なんだろう。
しかし、美奈都のこれまでの反応を見る限り、この身体で特に問題が出ることはなさそうだ。いや、問題あったけど。
考えれば別に何だって良いわけだ、俺だし。
「ま、これはこれで、いっか。」
「でしょ?この間言ったじゃん。」
俺もパフェにがっつき始める。おそらくガキがガキっぽくしている光景が展開されているであろうが、もう気にはならなかった。
「ありがとな、あらためて。下着類も調達してくれたんだろ?にしてもこいつは意外と緩い物なんだな。」
自分の胸元を身ながら呟く。ぺたらーっとしているがしっかり存在をアピールしている。
それなりのの大きさを誇る美奈都の物と見比べると、何とも言えない感情が芽生えて来たがスルーしておいた。
「ん~下着は今京が着けてるのだけ。緩めなんでしょ?これ食べたら見に行こう!」
結局最悪の一日になりそうである。
*** 918 名前: ◆GU/ptbK4fw 投稿日:2006/10/07(土) 16:34:33.89 xLTphVf/0
とりあえず酉付けておきますね
────────────
真新しいスニーカーを履くと振り返りつつ言い放った。仕立て直されたガクランはなかなかの着心地だ。
「忘れ物は無い。」
きょとんとした母・江里の顔、言ってやったぜ。
心配なのは解っているが何しろ質問しすぎである。
今朝鞄を閉めてから『忘れ物は無いか?』これが5回。ちなみに朝起きてから『体は悪くないか?』が7回。
曰く「何か知らないけど心配なのよねぇ。中身はあれだと解ってても、やっぱり見た目?」
元々世話焼きだったのが触発されているらしい。
「危なっかしいのはあの人譲り、それで死んでないんだから多分大丈夫。」
ガレージの人影を指さしながら諭す、愛車ECR33を整備中の父・京介だ。
「それで会社に間に合うの?」
「ヨユーヨユー、プラグだけだ。今日は歩きか、ついでに送っていくか?」
「やめとく。─────だから具合はすこぶる良い、生憎ね。」
口を開きかけた母に言霊をぶつけると「じゃ、行ってきます。」と家を出た。
*** 919 名前: ◆GU/ptbK4fw 投稿日:2006/10/07(土) 16:36:48.32 xLTphVf/0
>>918
「おっはー・・げふっ。」
家の前で律儀に抱きついてきた、というかダイブしてきた美奈都を垂直ジャンプで軽くかわし、ローリングで立ち上がったところに朝のご挨拶。
「おはよう。いやなに、パワーそのまま地味に軽くなっててな、こんな事も可能だ。」
「モフモフしたっていいじゃん、モフモフ~」
制服の前を払いながら近づいてくると、俺の勝手に髪をいじり始める。くせっ毛なので触りがいがあるらしい。
背後に美奈都をくっつけたまま歩き始める。
「今日から復帰かぁ。プリントはやった?」
「ん?持ってきてくれたヤツ?数学は確率だったからスルー。物理は・・・」
今日から学校である。
医師の診断に寄るものと国の定める社会的な物とで、一週間弱の準備期間という休みがあった。
もちろん遊んでいた。実質的に準備らしい準備をしたのは先日の買い出しぐらいである。
聞けば、この間に性格まで変化して学校に復帰する頃には別人になってしまう人もいるようだが、幸いそれは訪れなかった。
「そういえば知ってる?京のクラスにもう一人女体化した人がいるって。」
急に頭の上から声を掛けられる。
「そーなの?」
「うん、昨日から来てたみたいだけど?」
「へ~、俺がいない間にって事は短期間で復帰できたんだ。」
「さぁ?寝てて聞いてなかったんじゃないの?」
「む・・・。まぁホームルームの話なんか聞いちゃいないな。」
寝たい年頃なのである、故に、寝る。それが俺のポリシー。
「まぁ今日もさんざん寝てやるさ。いつも通りだ。」
遠くに見えてきた校舎に宣言してみた。
*** 755 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 01:08:31.56 1WUBngkS0
ttp://ex16.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1159914606/919
こっからの続き
で、あっという間に到着。大した距離ではなかった。
閑散とした廊下を歩き、
「じゃー後でね。お~い、すみれ~・・・・」
「うぇーっす。」
美奈都の教室の前で別れ、2-Eと書かれた隣の教室に入った。俺の教室は一番奥、遠くてはずれを引いた気にさせてくれる位置である。
教室には既に何人か生徒がいたが、当然の如くこっちを凝視してきやがる。そして席に着くと『あの廣瀬か』的な事を話しているのが丸聞こえだった。
あまり人当たりのいい方ではないので話しかけてくるヤツはいなかったが、ちょっと嫌な感じではある。
(なんだかねー)
ここで明るい人間なら『どーだかわいいだろざまーみやがれ』的な事を宣い騒ぎ始める物であったが、俺には無理だった。
(ねみ・・・)
でもどうでもいいことなので寝ることにした。人間、寝ることが大事である。
突っ伏して、腕を枕に。起きたら一時間目の最後の方とかじゃぁありませんように・・・・・・
*** 756 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 01:09:52.25 1WUBngkS0
と、うつらうつらしていると。
「あの・・・すみません・・・」
つつかれていた、寝ている人間を起こすとは・・・
「なんだ貴様はぁ。」
見上げるとメガネの女子生徒、更に二つに束ねた髪がおとなしそうなイメージを作っていた。とりあえず知らない顔である。
「あの、廣瀬・・・さんですよね・・?」
「だけど?」
「あ・・え・・やっぱりいいです・・・」
しょげて帰っていった。
来る物は拒まず去る者は追わず、だが一応席に座るまでは目で追っておいた。
(あの席は・・・・)
と、自分が席順なんか覚えていなくて、仮に覚えていてもその人物について何の情報も得られないことに気付いた。
しかし気にはなる。
(ん~っと)
近くの男子と『なんかあったのか?』的なアイコンタクトを取ろうとしたが無駄だった、目を合わすとすぐに顔を背けられた。
(やはり頭が回らん・・・寝よう)
また突っ伏すと、今度は男子一群の「やっべぇ、かわいい。」的な会話にいらいらしつつ寝入ることができた。授業寝過ごしませんように・・・
*** 757 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 01:12:16.75 1WUBngkS0
結局授業が始まって20分ぐらい経ったところで起きた、地理だった。一応はじめの願掛けは叶ったか・・・
やたらすっきりとした意識で黒板の内容を写し、教科書の該当ページを適当に読み流し補填する。
(ヨハネスブルグってやっぱり危険なのかな・・?)
地理というだけでやたら突発的な脳内妄想を開始、それだけで時は加速し・・・・
授業終了、こうなってしまうから困る。
次の授業も教室、さて寝るか・・・と思ったら隣から声を掛けられた。
「おっす・・・廣瀬だよな?」
「いかにも。」
長身にやや茶色く染められた髪の、いわゆる今時の若い人。隣人高原孝一、暇があれば話すような間柄である。
「どうなんだ?その、感じは?」
興味津々といった具合で聞いてくる。そういえば以前嬉々として『彼女にヤらせてもらった。俺は男だ。』とか話してたな、うらやましい限りで。
「別に変わらねーよ。」
「変化はしてると思うんだが・・・」
「そりゃそうだがな。」
とか話していると少し人が集まってきた、今朝の一群である。
今朝の警戒感は何処へやら。
結局するのは『ほんとに変わったよなー』『あの破壊帝王廣瀬がなー』とかの他愛のない雑談だ。
そんな事に適当に相槌を打つ、あっちから話題を振ってくれるから楽である。
「ちゅーことで、今まで通りの無愛想な俺だよ。」
くたーっと机に伸びながら答える、不特定多数の人と話のは苦手なのだ。
*** 758 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 01:13:53.94 1WUBngkS0
「にしても意外と可愛い系の格好もするんだな、格好って程じゃぁないんだろうけど。」
「ん?ただのガクランだが?」
と答えると高原が自分の頭をつつく。釣られて俺もつつく。ん?固い。
「決まってるじゃねぇか。」
「あんじゃこりゃ。」
「自分で着けたんじゃねーの?」
と、脇に立って喋っていたヤツが女子から手鏡を調達する。
「ほれ。」
「む、ありがと。あ?」
緑と赤のヘアピンが刺さっていた、微妙に入ったラメがアクセントになっている。いつの間に・・・って隙だらけだったな、今朝。
「・・・・外れない。」
ちょっとやそっとでは外れないようになっているらしい。無理に引っ張っても痛いだけである。
「どうしよう。」
回りの野郎を見渡すが、これと言って解決策は見あたらないらしい。視線を泳がせる。
「外せるけど、似合ってていいと思な。あ、これモフモフ・・・」
手鏡の持ち主が寄ってきてつつき始める。いや、外して欲しいんだけど。
「え?私は・・・着けてて欲しいかな?もう廣瀬さんは女の子なんだからね。」
「何を言う。俺は今後も男としてだな」
「いや、女の子でしょ?」
「ぬ・・・。はぁ~、後でみなに外してもらうか。」
結局諦めることにした。ま、似合ってるのか、じゃぁ我慢するか。
「ひうっ!」
「ん?どした?」
急に感じたのは・・・尿意だ。この身体になってからやけに急に訪れるようになった。
「トイレ行ってくる。」
そう言って教室を後にした。
*** 759 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 01:19:40.68 1WUBngkS0
(さっさと済ますべ・・・)
と、入ろうとしたところで。
「ぎゃふ。」
襟を捕まれた。振り向くと教室で鏡を貸してくれた女子、名前は・・・覚えていない。
確か男子ともよく喋る、かつ女子陣営の中心役みたいな感じだったはずだ。
「なにすんだ、こっちは切羽詰まってるんだ。」
「あのね・・・」
ため息混じりに上の方を指さされる、その先には
『男子トイレ』
の文字。
「で?」
「いや、それは・・・」
「───────あッ!」
そうだった、俺はもう女だったんだ。つまり、しかるべき場所を使えと。
しかし、
「えっと・・・・でも・・俺・・やっぱり男の・・・」
そういうの弱点だったりする。もう女装したりなんだりしてるのにね。
思いっきり動揺してるのを『やれやれ』と、そのまま女子トイレに連れ込まれた。
各学年ごとに一カ所ずつしか配備されてない関係上、広めなのでまだ完全に中というわけではない。
「ここで待っててあげるから、ちゃんとしてきなさい。」
「そ・・・そんなぁ・・・」
しかし背に腹は代えられない、先客のギョッとした表情を無視してそそくさと個室に入った。
流石にガクランで女子トイレはおかしいな、通りで女体化生徒のガクラン率が低いわけだ。
*** 762 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/10(火) 01:23:58.37 1WUBngkS0
そんな事を考えながら用を済ます。
女としての排泄行為はまだ慣れてはいなかった。が、自分なりには上手くできていると思う、きっと。
なるたけ秘所を見ないようにズボンを履き直すと、聞き耳を立てる。
幸い外にもう人の気配がないようだった、ゆっくり洗面台で手を洗う。
しかしこうして使っている分には、結局トイレはトイレなので問題はない。
それに俺はもう女であり男子トイレに入ろうとしている時点でおかしかったのだ。
( じ ゃ ぁ な ん で 俺 は 恥 ず か し が っ て た ん だ ? )
なんだか哲学的な臭いがしてきたのでそこからは逃げることにした。
(にしても女子トイレはきれいでいいな)
と、ふと鏡に映った自分をまじまじと見てみる。
要所要所男だった時の面影があるが、完全に女の子。ヘアピンで若干抑えられてはいるが、跳ねた毛が目を引く。
(ガクラン・・・似合ってないな・・・。女子制服着たら、似合いそうだk俺は何を考えてるんだ一体!)
一瞬脳裏によぎった危ない思考を、適当な壁を破壊して吹っ飛ばした。
「こんな場所にいるからいかんのだこんな場所にぃっ!」
外に走り出すと例の女子生徒が待ちかまえていた。
「よくできました。なんか爆音がしたけど、先生には言わないから。先に行ってるね。」
「う・・うん、宜しく頼む。」
先に歩いていったのは多分気を使ってだろう。
このくらいみなも気が利けばな・・・とか思いつつ、俺も教室へと急いだ。
今日一日先は長い、慣れていかなければ・・・
*** 272 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/13(金) 01:01:29.43 hQHxwCXF0
昼休み、隣のクラスに拉致られた。美奈都の手による犯行である。
「お昼一緒に食べよう。」
その一言で小脇に抱えられ連れ去られた。前から昼飯を一緒に食べることはあったが、このように拉致られるのは初めてだ。
「あのな、いくらなんでも拉致はないだろ、拉致は。」
箸を突きつけてぼやく。
「だから京は僕の物だって何度も言ってるでしょ?確保して何が悪いの?」
びしっと、箸を突き返されて黙ってしまう。
「あの晩のことを忘れたとは・・・」
「・・・・ったく。」
もの凄く苦々しい笑顔で返す、最近使いすぎな気がしてきた表情である。
まぁ、お互い告白済みである。俺も美奈都の彼(女)としての自覚はある。占有しておきたい気持ちは分からなくもないか・・・
「よしよし。はい、ご褒美。あーん。」
「あーモグォッ!」
聞き返そうとしたところで神速で口に何か突っ込まれる。これは・・・つくねか、結構旨いな。
*** 273 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/13(金) 01:03:34.98 hQHxwCXF0
「あ、あとこれを何とかして欲しいんだが。」
ふと思い出し頭のヘアピンをつつきながら問う。違和感無かったのでど忘れしていた。
「あれ、気に入らなかった?結構悩んだんだけど。」
「俺にこういう趣味はない。」
「でも似合うから。」
「外してくれ・・・」
「ちぇ、じゃぁ外し方だけ。」
言われたように引っ張ると。
「おお!外れた。じゃ、こっちも。」
「あ~あぁ・・・」
すごく悲しそうな目つきでこちらを見られた。更に手を伸ばすと。
「着けてるの見て嬉しかったんだけどなぁ・・・」
その目で見るか、その悲しそうな目で・・・。
「外しちゃうんだぁ・・・」
「わかったよ、着けてりゃぁいいんだろ着けてりゃぁ。」
「へへ、ありがとう。」
外した方も元に戻された、流石に好きな相手に悲しげな目で見られるのは辛い物があるので放っておいた。
「じゃ、つくねもう一個。あ~ん。」
「あのな、こrグヴォ」
また承諾もなく突っ込まれる。
・・・何かおかしくないか?そんな疑問のランチタイムだった。
*** 655 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 15:47:32.77 rzm8tEr90
>>273
の続き
「おーい、廣瀬はいるか~?」
この声はうちのクラスの担任、阿部だ。なんだろう?とそっちを見上げる。
「ここって聞いたんだがな・・?いないのかー?」
「すみません、俺です。」
そういえば、朝のHRでは突っ伏して寝ていたので俺の顔はまだ見ていないことになる。一応女体化の連絡は入れていたが、流石に初見で見破ることはできないか。
「おお、変わったもんだな。調子はどうだ?」
「え~っと、それなりです。」
「そいつはよかった。でだ、それ食ったら職員室に来てくれ。連絡がある。」
「はーい。」
それだけ言って去っていった。
「なんだろうね?」
「さあ、なんだろう?とりあえず行ってみるか。」
残りの弁当を片づけると教室を後にした。
背後に美奈都が付いてきたが、
「僕の愛する京のk(ry」
「わかった。もういい。」
そう言って、周囲の視線を気にすることなくはぐして来た。もういいや、放っておこう。
好奇の目線を全身に浴びつつ職員室に着くと、阿部が律儀に入り口付近で待っていた。
*** 656 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 15:50:27.95 rzm8tEr90
「お、待ってたぞ。梶原も・・w。そうだな、一緒に来てくれ。」
背後の美奈都を見て何やら思い付いたようだ、なんなんだ?
通されたのは隣の小会議室、椅子に座らせられると書類の入った封筒を渡された。
「こいつを見てくれ。どう思う?」
「とても・・・えっと、誰でしたっけ?」
中身は簡単なプロフィール。うちの学校で作っている物で、確か俺も作った記憶がある。
そしてその上部に貼られた写真に見覚えはなかった。
「廣瀬・・、もうちょっと人の顔ぐらい覚えろ・・・。」
「あ、うちのクラスの奴だったんですね。」
「酷・・・・」
その写真の隣にはでかでかと『2-E』と書かれていた。盲点である。
名前は吉野一成。うん、知らない。
「悪かったな、これでもいっぱいいっぱいなんだよ。」
美奈都に文句を垂れると写真に目を戻す。なんか暗そうな表情、メガネ。地味な奴だな、どおりで顔を知らないわけだ。
「で、こいつだ。」
写真を渡される。またも暗そうな、今度は女子だ。長髪にメガネ、何処かで見たような。
「今の吉野だ。廣瀬が休みに入った直後に女体化してな。変化がすぐに終わって復帰したはいいんだが・・・」
一拍置いて。
「その日に吐いてな。」
「ストレスって事ですか。」
なるほど。封筒の中には『持ち出し厳禁』と書かれた書類、個人の性格や学校内での態度など詳細にまとめた記録簿のコピーも入っていた。
見た目通りの暗い奴だったようだ。口べたな俺が人のことは言えないが。
*** 657 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 15:52:30.92 rzm8tEr90
「そうだ、不安に耐えられないとかでな・・・」
なるほどね、思い当たる節は俺にもあった。そしてふと脇を見る。
美奈都がいなければ俺もどうにかなっていたかも知れない。
「そこで、だ。その後吉野と話したんだ、同じ女体化同士廣瀬にでも相談したらどうかってな。」
「あ、こいつ。」
思い出した、今朝のメガネ女子だ。髪型が違うので気付かなかった。
「どうかしたのか?」
「今朝話しかけられたんですけど・・その・・・睨んだら・・・逃げられ・・・」
阿部がため息を付く、『どいつもこいつもしょうもねぇな』的なオーラがよく伝わってきた。
「予想はしていたんだけどな。そんな所だろ。でだ、廣瀬から話しかけてやってほしい。」
「はぁ・・・」
「生徒にこんな事頼むのもなんだが。やはりな、こればっかしは。頼まれてくれないか?」
「任せてください。」
答えたのは美奈都だった。待て、俺が聞かれてるんだぞ?
「そうか、受けてくれるか。先生嬉しいぞ。」
「この僕と京の手に掛かってしまえば、ね?京?」
「ん・・・あ。」
まぁなんとかなる・・・かな?それに今朝の事もあるし、一応謝る必要もあるか。
「じゃ、なんとかしてみます。」
「よし。お前等二人ならなんとかなると思う。あ、その書類は預けるが、必要なくなったらしっかり破棄してくれ。あと後でお前も顔写真提出しておくように。」
「はい、りょーかいです。」
そう言って会議室を後にした。
*** 659 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/14(土) 15:56:34.32 rzm8tEr90
「さて、とりあえず捕縛してみるか。」
教室に戻ってくるとすぐに今朝の机を確認するが・・・・いない。
「高原、ちょっといいか?」
「お?我が校最狂のレズカッp・・・死ぬ・・・やめ・・・」
何か事件があったらしい、高原が青い顔で倒れていた。多分どうでもいいことなので隣で飯を食っていた男子に聞き直す。
「吉野一成って何処いるか知らね?」
「あ、あ~あのアレか。そう言えば見ないな・・・」
「そうか。」
「にしてもすげーのな。何からなにまで変わらないなんて。」
「ん?」
「中身の話だよ中身。見て見れ。」
やや離れた女子の一団を指す。輪になってお昼ご飯中である。そういえば女体化したので云々~と言っていた顔もちらほらと見る。
「お前もああなるのかと思ってた。」
「なるほど。ま、そのときはそのときだな。俺もよくわからんし。」
結局、昼休み中吉野は現れなかった。そして高原は保健室へと運ばれた、原因不明の窒息だったそうだ。
────────────
今回ここまでです
もっさりとしたペースで書こうと思います
*** 840 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 10:13:58.67 QtqOZ3xc0
>>659から続き、途中から無茶を始めるが気にしないで
授業時間調整のため、午後からの授業は一時限のみだった。
「で、結局HRにも現れなかったんだ。」
吉野は最後授業にも出なかった。真面目なタイプと書かれていたが嘘か?
「うん。なんなんだろうな?阿部Tは色々慌ててたけど。」
階段前の広場で定点観測。HRに出なかった以上、通ることは無いだろうがしないよりましである。
帰路に着く生徒の群を見ていると、その中からこちらに歩いてくる人影を見つけた。
「いたいた。」
「お、え~っと。」
「熊本雪菜、あんたのクラスの委員長でしょ。人の名前ぐらいは覚えた方がいいよ・・・」
今朝の女子だ、委員長だったのか。一応覚えておこう。
「吉野さん探してるんだって?」
「うん、いない。」
「B棟で見た人がいたんだけど?」
「ホント?B棟は・・・」
「あっちだな。」
教室がある建物がA棟、実験室や家庭科の実習室があるのがB棟。直方体の建物が平行に並んだ形の学校なのである。
「あれかな?」
美奈都が窓に近寄り、一拍の後にぺきぽきと首を鳴らす。
俺も近寄り・・・手を組んで背筋を伸ばす。
「最短ルートは?」
「そこの階段から一階の渡り廊下」
申し合わせたように振り向き、一瞬で身体をトップスピードに持っていく。
「ちょっと待ちなさ・・・」
はるか彼方からの熊本の声が俺達に伝わることはなかった。
「何なのよ全く・・・」
何処へか消えていった京也と美奈都を見送ると、熊本も窓へと寄っていった。
見上げると・・・女子生徒が柵を乗り越えようとしているところだった。
*** 841 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 10:16:14.64 QtqOZ3xc0
迫り来る障害物(人間)の間を縫うように駆け抜け、一階渡り廊下へ。途中なんか沢山巻き込んだ気がしないでもないが気にしてはられない。
地理関係は頭に叩き込んである、記憶が指し示す方角へ一瞬だけ首を向ける。
よかった、まだ柵にまたがった状態であった。あの様子ならまだ時間は稼げる、急げ、間に合え。
閑散としたB棟へと突入。文化部の部員とおぼしき人影もちらりほらりといたが、障害にはならない。
廊下を爆走し、階段を上り・・・屋上への扉が迫る。見るからに重そうだ。
一歩早かった美奈都が施錠を確認、首を横に振る。
「いくぞ!」
美奈都が一歩下がり、間を開け、そこに俺が滑り込む。
気合い、充填。
目標、捕捉。
右腕を引き絞り必殺の構え!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
目標は扉本体ではなくヒンジ。爆音と共にヒンジがはじけ飛び、扉全体が軽くずれる。こうなれば・・・
「たりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ただの鉄板である。背後から飛翔してきた美奈都が蹴り飛ばす。
そのまま美奈都を追い抜くように屋上を駆け抜ける。
正に疾走、周りの全ての時が止まるような錯覚に陥る。
「止まらねーと死なすぞぉぉぉぉぉ!!」
爆音に反応したのか、吉野がこちらを振り返っていた。もう靴を脱いでいる。やばい、間に合え。
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「く・・・来るなぁ!」
が、意を決したのか。そのまま重心を前に・・・間に合わない!
「このクソガァァァァァァァァァ」
*** 842 名前: ◆GU/ptbK4fw 本日のレス 投稿日:2006/10/15(日) 10:20:43.33 QtqOZ3xc0
「ふう。」
『ひょおおおおおおおおお』となんだかそれらしい風音が耳に入ってくる。
なるほど、建物の間だから風が抜けていくんだな。
「お~い。そこ高い?高い?」
「屋上よりは低いと思う~」
屋上から美奈都がのんびりと声を掛けてきた。安心したのだろう。
眼下では数人の生徒がこちらを見上げていた。
そらそうだ。
落下する人間を空中でキャッチして、そのまま壁にしがみついたのだから。
「怪我があっても気にするな。お前の責任だ、吉野。」
「う・・・あ・・・あぁあぁぁぁ。」
脇に抱えた吉野が返事のような物をする。
完全に放心状態だ、お陰で体勢は安定しているが、なにしろ片腕だ。ややきつい。
「さて、このままでもいられねーな。歯食いしばってろ。」
「ひゃ・・・ひゃい?」
ぱっと手を離して、着地。吉野の脇腹に腕が食い込んだ感があったが、元男なら耐えるだろ。
見上げると美奈都が親指を立てた拳をこちらに向けている。
同様に親指を立て、腕を伸ばし。
『ミイィィィィィィッション!コンプリート!』
それに応えた。
───────
我ながら無茶苦茶だなぁ・・・
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