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「唯と稜 AYA ◆zh2yobq4zs」(2006/10/22 (日) 11:14:50) の最新版変更点
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*** 138 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 本日のレス 投稿日:2006/10/04(水) 22:16:53.58 nAr7heNH0
「ねぇ…あっちゃん…どうしよう…」
今日は駅前近くのファーストフード店内で。目の前の唯は、ストローを
動かしながら、上目遣いで俺を見る。
「どうしようって言われてもさぁ」
店の奥、ソファーのある場所を陣取ったので、浅く座り、背もたれに思いきり
寄りかかってる、俺。
「だって…。明日、僕の17歳の誕生日…」
「知ってる」
ここ毎日、いろんな場所でこんな感じだ。小学生の頃からの付き合いだから、
うじうじする性格には、慣れたと言うか、いらいらするのを辞めたって言うか。
何言っても同じだし。で、結局こいつは、俺の意見に従うわけじゃないし。
「でも、女の子になるなんて…」
「いいんじゃね?その方が向いてるよ」
思わずあくびが出た。唯は、そんな…と、寂しそうにストローを加える。
それにしても、180cmもあるひょろい男と、160cm程のいかにも柄の悪い俺の
組み合わせは、他の人からどう見られてるんだろな。
夕方の、割合人の出入りが激しい時間だから、この2人を気にしてる人は
いないだろうけど。
「でもさ。あっちゃんも、同じ、でしょ?」
冷めたポテトを食べてると、言葉を濁しながら、そう話しかけてきた。
「確かに童貞だけど。…その時は、その時じゃないか?」
そうなのかなぁ…。呟くと、唯もポテトを口に運んだ。
その時は、その時。
なぁ。なんで俺は、こんな事、考え付いたんだろう。
いつから、こんな風に、思うようになったんだろうな。
*** 140 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 本日のレス 投稿日:2006/10/04(水) 22:20:55.16 nAr7heNH0
唯は、下校途中にいじめられてるのを助けた時が出会いだった。
すでに俺よりでかかったのに、誰から見てもひ弱でいじめやすくみえる為か、
以前からみんなに、からかい半分にいじめられていた。
その日も、ランドセル持てだとか、ジュース奢れとか言われてた気がする。
その頃から喧嘩っ早かった俺。ちょくちょくそんな現場を見てたのに、
ちょうど、むしゃくしゃしてた為に、止めに入ってしまい、そのまま殴り合い
してて。勝ったのはいいが、怪我もしてない唯が泣くのを止めない為、
仕方なく、家まで送り届けるはめになっていた。迎えてくれた唯のお母さんに
感謝されて、手当て受けたり、お菓子貰ったり…。
それからだ。一緒に居るようになったのは。
唯は、いつまで立っても弱いままで、運動神経も悪いまま。
俺も、相変わらず喧嘩っ早いまま。
その割には身長はお互い伸び、中学入っても俺は唯に追いつけなかった。
でこぼこした状態で、現在。腐れ縁のように一緒にいる。
違う。唯は、俺を頼る事から離れられなくなっているんだ。
じゃぁ。…俺は?
「…あっちゃん…」
翌朝。ぼーっとした脳に、唯のか細い声が携帯から伝わってきた。
それで内容が分かった俺は、
「分かった。今から行ってやるよ」
といい、電話を切ると、手近にある私服に着替えて、台所に向かった。
「お袋。今日、学校休むわ。
唯がさ、女体化して落ち込んでるから、唯の家に行く事になった」
用意されてた朝飯を、食べつつ話す。すでに親父は出勤後か。
*** 141 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 本日のレス 投稿日:2006/10/04(水) 22:22:18.19 nAr7heNH0
「稜(あつき)。学校休んで平気なの?」
「もうすぐ冬休みだから、授業もほとんど終わりっぽいし」
それを聞いたお袋は、ちょっと口ごもるように、
「そう。…まぁ、理由が理由だし…」
そう言うと、また洗い場の作業に戻っていった。
ってことは、休んでいいのか。そう解釈する俺。
特に成績に付いては言わないが、学校には毎日行けとは言う。
まぁ、テストは散々だったから、冬休みに補修受けに行く事になるかも
しれない。とりあえず、これはまだ言って無い。
食い終わって、ごちそうさんと告げると、適当に身支度して、外に出た。
冷たい空気が、暖まっていた体を一気に冷やす。今にも雪が降りそうな
厚い雲が、空一面を真っ白に覆っている。
そして。真っ白な息を吐く人達が、急ぎ足で駅に向かっている。
その人の波を逆行するように、俺は唯の家に向かう。
いつもと違う事をしてるからか、これからの事を考えているからか。心臓が
ばくばく言ってる。
俺は、それを抑えるように。ちょっと深呼吸した。
肺全体を、空気が冷やしていった。
*** 439 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/05(木) 23:54:52.32 o8epPMCm0
「ほんと。ごめんなさいね」
唯の家にたどり着くと、おばさんが迎えてくれた。寒かったでしょ、と
急ぐように俺を家に入れてくれた。
「唯、今は落ち着いて寝てるのよ」
リビングへと歩きながら、おばさんは俺に状況説明を始める。
おばさんは看護士だ。今日は午後出勤との事だが、女体化の諸手続きの為、
早く出なければならないとの事。いや、女体化を見越して、出勤時間を調整
したのかもしれない。
おじさんも忙しい人だから出勤済みだが、今日は夜8時頃帰ってくるので、
それまで居てもらえると嬉しい、と告げられた。
「一人っ子だから、甘やかしたのが原因だと思うけど…本当にごめんなさいね」
「いえ。今日休む事は、親に了承得ましたので、合法的に休めて嬉しいです」
「そう言ってくれると嬉しいわ」
出掛ける用意の手を止めないまま、おばさんは話を続ける。
その間に、俺にコーヒーとお菓子を用意してくれた。ありがたく頂く。
「何かあったら、この番号まで連絡貰えるかしら」
「分かりました」
「それじゃ、お願いね」
寒いからそのままでいいわよ、と言われ。俺はリビングのソファに腰掛け
ながらおばさんを見送る。
鍵の閉まる音が聞こえると、俺はソファに横になり、TVのリモコンに手を
伸ばした。
*** 442 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/05(木) 23:56:30.82 o8epPMCm0
携帯のバイブ機能に起こされた。いつの間にか寝ていたようだ。
俺に電話してきた主を確認して、軽くため息をつく。
「…どうした」
「…あっちゃん、どこ?」
「すぐ行くから。ちょっと待ってろ」
そう言うと、俺は即座に電話を切った。
起き上がるとソファに携帯を置き、冷め切ったコーヒーを飲み干す。
気づくと外は、牡丹雪が降り始めていた。
「積もるか…」
窓の前に立ち、俺は呟いた。雪の振る光景を見ていると、外界から孤立した
ような気持ちになるのは何故だろう。
「行くか」
そしてTVを消すと、リビングを出た。
廊下はだいぶ冷えていた。思わず身震いをする。外よりは寒くないはずだが。
2階の唯の部屋に行く前に、トイレに向かう。用を足して、手を洗うと水が
氷のように冷たかった。
今日は冷たい事ばかりだな。
世の中に、俺の考えを見透かされているのか、それとも、俺が招いたのか。
俺はゆっくりと2階に向かった。
*** 443 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/05(木) 23:59:05.72 o8epPMCm0
ドアを2回叩く。
「おい。唯、居るか?」
「あっちゃん!」
中から声がする。俺は無言でドアを開けた。
横なっていたようで、ベットから立ち上がったばかりの唯を目が合った。
掛け布団は無造作に捲り上げられている。
相変わらず片付いてる部屋が、そこにはあった。
「来てくれて、ありがとう…」
ちょっとふらつきながら俺に向かってくる唯を見つつ、俺はドアを閉め、
鍵をゆっくり掛けた。唯が気付かないぐらいに。
男物だし、冬だから厚手のパジャマだけど、胸のふくらみはしっかりと分
かる。結構大きそうだ。
ふらついてる理由は、パジャマをだぼつかせてるからと気付く。
でも、俺の目の前に立った唯は、相変わらず俺よりも身長が高かった。でも、
10cmぐらいは縮んだのだろうか。
「あっちゃん、身長近づいたね」
無防備に、ふふっと笑いながら言う。
「お前が、縮んだんだよ」
そう言いながら、俺は、完全に唯のしぐさや表情が女になってるのを見て、
気持ちが抑えられなくなっていた。
「えっ!」
唯は声を上げる。
俺は無言で、唯の胸を、半ば掴むように揉み出した。
「ちょっ…まっ…あっちゃん…」
混乱している唯の頬が、ほんのり赤く染まっている。
下着を着けて無いせいか、胸の柔らかさや体温が、手に伝わってくる。
*** 446 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/06(金) 00:06:29.19 POkRQQKT0
「ダ、ダメ!離して!」
やっと、どうしたらいいのか頭の中で整頓付いた唯は、俺の手首を掴んで
きた。でも、力で負けるわけもなく。円を描くように揉み始めると、それに
合わせて、唯の腕も動いている。
俺は一歩前に踏み出す。同時に胸にも押す力が加わったせいか、唯が一歩
後ろに下がる。それをきっかけに、俺はまた一歩と進むと、唯はまた一歩と
後退する事になっていた。
「きゃっ!」
パジャマの裾に足が引っかかり、後ろに倒れこむ唯。
とっさに俺は支えに入るが、運良くベットに上体が収まったのを見て、手を
離す。変わりに両足を持って、ベットに上げた。
仰向けの唯を抑えるように、またいで座る。
「やだぁ…」
半分泣き声になりながら、唯は両腕で、力なく俺を押している。
腕、邪魔だな…。
隙を見て両腕を持ると、頭上に押さえつける。
ベットは等間隔に刺さったパイプで支えるような構造になっている。以前
俺が、まるで病院のベットみたいだなと、言ったら、僕のは黒だから違うと、
ふくれてたのを思い出す。
俺はその、一つの隙間から一つの手といった形に外に出し、両手首を近くに
あったタオルで縛った。
その間、唯の両腕を挟むように足で押さえていたので、少しはぐらつくものの、
大きな抵抗は受けず作業は終えた。
「どうして?」
手をベットにぶつけて、外そうとしながら唯は俺の目を見ている。
*** 656 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/06(金) 19:56:28.58 y8Wy5rwN0
俺は、無言のまま上着を捲り上げた。その勢いを受けて、軽く揺れる二つの塊。
その、てっぺんにある突起の片方に、思わずむしゃぶりついた。
「んくぅ」
軽く仰け反る唯を抑えるように、俺はもう片方の胸を揉み始めた。しばらく
すると動作を交代する。手を止めると、唯の胸は赤くなっていた。
「はぁ…はぁ…」
息の荒い唯。初めての割には、随分感度がいいな…とか、自分を棚に上げて
思ってみる。
もちろん、自分は初めてだから、上手いのか下手なのかは分からない。でも
知識が間違っていなければ、感じてるようにしかみえない。
なんとなく、乳首に口を付けて、数回甘噛みしてみた。
「あんっ」
最初の抵抗していた気持ちはもう薄くなっているのか。受けた刺激にそのまま
反応してるようにみえる。
思い切って、両乳首を軽く力を加え、摘まんで引っ張ってみた。
「んはぁん!」
と、仰け反りながら声を荒げる。
唯って、もしかしてマゾ?
意外な情報を得た俺は、それじゃと、どんどん攻める事にする。
パジャマのズボンに手をかける。と、ちらっとトランクスが見えて、これはな…
と思ったから、一緒にひざまでずり下げた。
「やだぁ!」
今気づいたように大声を上げる唯。足をばたつかせるが、パジャマが足枷に
なってる上、力が入りにくいようで、当たっても痛くない。
両手で、ぐっと、両足を唯の体側に押し付ける。秘所が無防備に現れる。
「や…」
抵抗の声を上げさせる間も与えず、俺は秘所上部の突起を爪で引っかくように
弄る。
*** 657 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/06(金) 19:58:05.12 y8Wy5rwN0
「あはっ…ん…ん…」
それに合わせるように声を上げ始めた。気づくと、下の方が濡れてきていた。
俺はと言うと。冷静のように見せかけて、心臓はバクバク言ってるし、とっくに
ズボンが苦しい。
「んくぅ!」
ひときわ高い声に、はっとなる。ぼーっとしていて、加減を忘れていた。
一旦ベットから離れて、俺は慌てながらズボンとトランクスを一緒に脱いだ。
途中で引っかかったとか、上だけ着てる微妙な格好とか、そんなのはもうどうでも
よかった。
唯は、足は下ろしているが、途中に、まだパジャマを絡ませたままの姿で、息を
荒くして横たわっている。
昨日まで男だった奴に対して、こんなに興奮している俺。いや、もしかしたら、
この機を思いついた時から、唯への見方が変わっていたのか…。
答えは分からないが。もう一度、足を持ち上げた時に目に入った突起は、
すっかり真っ赤になっていて、なんだかかわいそうに見え、思わず口付けていた。
「はぁんっ!」
ちろちろと舐めると、絶え間なく声を上げ始めた。顔を股に埋めているから、
唯がどうなっているか見えないが、音からして、手をベットのパイプにぶつける位に
もだえているようだった。可愛くなって、思わず吸ってやる。
「ダメぇぇぇ!」
そう叫ぶと、唯の足が俺にガツンとぶつかってきた。
痛みに、顔を持ち上げる、と、垂れるほど濡れているのが目に入ってきた。
唯の全身はぐったりしていた。これはいわゆる、イった状態なのか?
実際に目の辺りにすると、その身体から発する艶めかさは、理性を吹っ飛ばさず
には居られなかった。
勢い良く、俺は唯の足に絡んでいる衣服を、一気に抜き取る。
そして、両足を外側に押し広げ、その間に自分の身体を挟んだ。
*** 659 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/06(金) 19:59:47.51 y8Wy5rwN0
一度、唾を飲み込む。
「なぁ、唯」
部屋に入ってから、久し振りに発した俺の声は、それでもだいぶ掠れていた。
全身で呼吸をしている唯は、視線だけ俺に向けてきた。
「お前は。
俺が女になるのと、男の姿のままでお前を守ってやるのと、どっちがいい?」
怒っているわけでも無い、読み取りにくい視線に問いかける。
唯の唇がかすかに動くのが見えた。しかし、俺への返事ではなく、質問を再度
自分に言い聞かせているように見えた。
でも、こっちはもうそんな余裕はなくなってきている。
「お前は、俺が女になるのと、男のままなのと、どっちがいい?」
再度言うと、俺は両乳首をつねり上げた。
「あぅっ!」
刺激を与え続けると、唯がそれに合わせて声を上げ始めた。
「どっちが、いい?」
手は休めず、もう一度、問う。
「あっ、あっちゃん、はっ、あつ、きくんっ、が、いいっ」
刺激に合わせて、応える。
「分かった」
俺は手を離すと、準備をし。そして。
「じゃ。お前は俺の物、な」
そう言うと、腰をぐっと押し進めた。
「あ…くぅっ!」
同時に目をぎゅっと閉じ、身体を動かす唯。胸が軽く揺れている。
まだ半分位しか入ってないが、この締め付けは、想像以上に気持ちいい。
やばくなって、思わず唯と唇を合わせていた。
突然の事で対処出来なかったのか、舌の進入も許していた。
俺は、また違った気持ちよさに、口内を味わい続けた。ふと薄めを開けると、
ちょっとトロンとした唯の視線とぶつかった。
*** 660 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/06(金) 20:01:50.52 y8Wy5rwN0
口を離すと、間に糸が引いた。が、すぐに消えてしまった。
俺は上体を起こすと、上着も全部脱ぎ、放り投げる。
そうして。未だ繋がってる部分を2、3度出し入れすると、一気に奥まで押し
込んだ。
「はぅっ!」
衝撃に思わず仰け反っている。でも、俺はもう理性を止められなかった。
「ん……んっ……」
俺の腰の動きに合わせて、ちょっと辛そうに感情を声にする。
もっと唯を感じようと、両足を両脇に抱えるよう挟んだ。べとっとした感触が
あった。俺の汗なのか、唯の汗なのかはは分からない。
一旦、股が触れるぐらい奥まで押し込み、動き止める。
「唯…」
唯は俺と視線が合うと、ちょっと笑った、気がした。
勢い良く、その柔らかな唇にまた重ねると、その姿勢のまま俺は腰を動かし
始めた。閉じられた口の奥から、唯のくぐもった喘ぎ声が聞こえる。
口を離すと。さっきからので、もうギリギリな俺は、思いっきり唯に身体を
ぶつける。
あちらこちらから、激しい音が響く。
もう我慢の限界…と感じたその時。予想外に、唯がぎゅっと締め付けてきた。
まずい、と思った次の瞬間。俺は唯の中、奥にぶちまけていた。
そして。それがおさまるまで、唯を抱きしめ続けていた。
*** 661 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/06(金) 20:04:39.97 y8Wy5rwN0
出し切っても、まだ力が入らなかったのと、女の身体の柔らかさを直に
感じるのが気持ちよくて、しばらくその姿勢のままだった。
やっと、改めてまずい事が脳裏に浮かび、中から引き抜いた。その衝撃に、
唯は軽く声を上げ、抜いた後からは白い物と赤い物が出てきた。
ティッシュを数枚取り、それを隠すように、股を拭いてやる。
外に出すはずだったのに、大丈夫かな…。そんな事を考えていると、唯の
声が聞こえた。
「ん?」
「お風呂、入ってきたら?僕は、次に入る」
ちょっと息が上がりながらも、普通に話しかけてくる唯。
その様子になんとなく戸惑ったが、そうするしかなかった。
「そだな」
それだけ言うと、俺はベットから降りようとして…。
唯の手を縛りっぱなしだったのに気づいて、改めてベットに上がり、唯をまたぐ。
縛っていたタオルに手をかけると、案外簡単に外れたのだが、手首は赤くなっていた。
それを見ると、なんとも言えない気分になって、思わず唯と唇を重ねていた。
そして、唇を押し入り、舌を入れようとして。あれ?俺、なんでまた、唯と
キスしてるんだ?と言う事に気づき、口を離す。
また糸が引いたのが見え、気まずくなり、とっさに口を拭う。
慌てて、脱ぎ散らかした服を拾い上げると、部屋を出た。慌ててたせいで、
鍵を閉めてたのを忘れ、一度ドアが開かなかった。それを見た唯の、くすっと
笑う声に居たたまれなくなって、急いで鍵を開けると、廊下に飛び出した。
飛び出すと同時に、くしゃみが出た。廊下は寒かった事を、すっかり忘れていた。
フルチンで、1階の風呂場まで駆け足で直行する。
脱衣所に付いた俺は、手に唯の股を拭いたティッシュを、まだ持ってる事に
気づいた。トイレに、詰まりませんように…と、そう思いながら流した。
*** 245 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/08(日) 17:30:50.76 GelE+y0I0
さっぱりした俺は、リビングのソファに腰掛けながら、ぼーっと考えていた。
風呂…とはいえシャワーだけど、浴び終わって脱衣所に出たら、唯が居た。
さっきと同じパジャマを着ていた。
素っ裸の俺は気まずく感じて、浴室に戻ろうか、そう一瞬思ったが、
「あ。バスタオル、ここに置いとくね」
唯は普通にそう言うと、普通に脱衣所を出て行った。
まぁそうだな。ずっと一緒だから、俺の身体なんで、腐るほど見てるわけだ。
今更見ても、なんとも思わなかっただろうな。
逆に、さっき思い切り、女になった唯を見ていた俺の方が、服を着ていた唯に
慌ててたわけだ。
背が縮んだ為、ぶかぶかになったパジャマを着ていて、改めてみると、顔は
そんなに変わっていないのに、表情とかが、どこかが女っぽくなっていた。髪も
長くなっていたようで、後ろで一つにまとめていた。さっきは、それを確認する
余裕もなかったな…。
俺が女体化したら、どうなってたんだろう。
唯の事を考えていたら、なんだか違った気持ちが込み上げてきたので、慌てて
思考を変更する。俺の一部で、反応してた奴がいるけど無視する。
俺が女になった場合。後の生活が、どうしても考えられなかった。こう言っては
勝手だが、唯のおかげで女になるのが免れた。これからお互いが、どうなっていく
かは分からないが。
唯は、運動神経が鈍い。でも俺より、その他の科目は成績が良く、身長は俺より
高い。俺の勝てる部分がそれしかなかったんだ。
もしかしたら、唯を犯す事で、俺自身が、優位に立てる気になっていたん
じゃないのか?そうでなきゃ、こんな冷たい事は、考えつかないだろうし。
でも。なんでさっき。
唯の手からタオルを外した時、何故、思わずキスしてたんだろ…。
*** 246 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/08(日) 17:35:15.46 GelE+y0I0
「あっちゃん」
「うわぁっ」
声を掛けられて、本気で驚いた。
「な。なんだよ」
ほっとした表情をして、見た事のある部屋着に着替えて立っていた。でも、
これまでには無かった、胸のふくらみが目に付いてしまって、目のやり場に困る。
「って。お前、まだ髪の毛が濡れてるじゃないか」
縛る事をやめた髪の毛は、服にくっ付きながら、光に当たってしっとりとした
色をしている。
「だって。お風呂入ってる時に、あっちゃん帰っちゃうんじゃないかと思って…」
「いいから乾かして来い。
その間に、おばさんが作ってくれた俺達の飯、温めてるから」
「…うん!」
リビングを出て行く唯を追い終わってから、俺は立ち上がった。
相変わらず、俺に頼りっぱなしの唯だな。これまでと変わらないものに、何か
安堵感を覚えていた。
雪は、辺りを白く染めながらも、まだ降り続いていた。
カチャカチャと、食器がぶつかる音が二つ。
忙しい中、おばさんは唯が好きなオムライスを、俺の分まで作ってくれていた。
大きいのと、それのふた周り小さいのと。
レンジで暖めて終わった頃に、唯が戻ってきた。俺は小さい方を唯に渡し、
もう一つを自分の席に置いた。
そしてお互い、ほぼハモるように「いただきます」と言ってから。それから
無言だ。
半分以上食べた所で、ふと唯に視線を送る。今まで唯の家に遊びに来た時と
変わらない雰囲気が流れている。
唯は…度胸があるのか?女体化して、俺に犯されて。なのに普通に振舞って、
今までと同じく飯を食ってる。
*** 247 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/08(日) 17:41:23.27 GelE+y0I0
「大丈夫なのか?」
思わず問いかけてしまう。
食器のぶつかる音が止まり、辺りに静寂が訪れる。唯は口をもぐもぐとさせ
ながら俺を見ている。その動きが終わると、言葉が飛び出した。
「…ちょっとアソコがヒリヒリする」
「バカ!」
その返事を聞くなり。俺はまたオムライスに向かった。必死な勢いで、口に
運び続ける。
バカ。何で返答が、お前の股の心配ごとになるんだ。
最後の一口を運び終わると、コップの水をぐっと飲む。
改めて唯を見ると、まだ3分の2ぐらいの所を食べていた。頬をちょっと赤く
しながら。
なんだかその様子を見てると、こっちまで赤くなりそうな気がしてくる。
「あの…あっちゃん」
「なんだよ!」
不意に声を掛けられ、つい、ぶっきらぼうに答えてしまう。
「もうお腹一杯で…」
上目遣いで、スプーンを口に当てて、俺を見てきた。
「分かった。ほら、食べてやるよ」
なんだよ。女になったら更に食が細くなったのか?右手を出すと、唯は両手で
皿を渡してきた。
小さいオムライスの3分の2なんて、二口も無い。がさっと口に放り込んで
「ごちそうさん」と、俺は空の皿を重ねた。
「ありがと。ごちそうさまでした。じゃ、お皿洗うね」
「あぁ…ども」
さっと立ち上がって食器を片付ける唯を見て。おばさんに似てるのかもな…と、
なんとなく考えていた。
*** 248 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/08(日) 17:45:33.59 GelE+y0I0
その後、ソファでくつろいでいたが、唯は相変わらず俺の横に居た。
食事の後で数回あくびをしたから、寝ろ、と言ったのに、何故か頑として
ベットに戻らない。
それじゃ寝てもいいように、毛布でも持ってきておけよ、と言ったら、本当に
持ってきた。傍らに置いて、一緒にTVを観ている。
とは言え、平日のお昼過ぎだから、再放送のドラマしかなくて、お互い、
なんとなく観てるだけだ。
唯の家のソファは、座り心地いいよな…と改めて思っていると、唯が口を
開いた。
「一緒に居てくれて、ありがとう」
横を向くと、TVを観たままの唯の横顔があった。
「女の子になったら、あっちゃん、もう一緒に居てくれないんじゃないかと、
ずっと心配だった。ずっと…」
もしかして。それで女体化前、ぐずぐず俺に話していたのか?その時点では、
答えが出ない事を分かっていて。
「その時は、その時。だったね」
続けて、あの時に俺が放った一言を、口からこぼす。
違う。俺がそれを言った時は、唯を犯す事を決めていた時だ。俺自身に向かって
言った言葉だ。
「これでも、いいのか?」
過ぎ去った、いろんな事があった今日。それでも…。
返事の代わりか、唯は俺に寄りかかってきた。ふわっと当たってきた髪の毛に、
何故かドキドキする。
良く見ると、唯のまぶたは、もう半分落ちていた。ま、犯した相手に寄り
かかり眠くなるんだったら…。これまで通り、一緒に過ごせるって事でいいのか。
それで唯がいいなら、俺はそれでいいと思った。
*** 249 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/08(日) 17:49:01.33 GelE+y0I0
ふと気づくと辺りは真っ暗で、TV画面はニュース番組を放送していた。
やけにちかちかしてるな…と思ったら、クリスマスイルミネーションが…と
アナウンスしてる。道理で。でも、もうそんな時期なのか。
いつの間にか、俺まで寝てたようで、俺と唯にまたがって毛布がかかっていた。
身体が動かない、と思ったら、俺が唯の肩に頭を乗せて、その上に唯が頭を
乗せていた。
おいおい。なんか逆じゃねぇの?なんで女のが上なんだよ。
改めて身長差がある事にムカつく。
でも、急に頭をどかすのもな…そう思って、唯の身体を揺すろうと、毛布の
中をごそごそ動かす。
肩辺りを触ろうと思ったのに、肩の前に、弾力のある物に触れていた。そうだ、
こいつは女になったんだっけ。
でも。柔らかい物にもう一度、手のひらで包むようにそーっと触ってみる。
まだ起きないのをいい事に、更に揉んでみると、唯の口からふぅーっと息が
吐き出され、俺の髪に当たった。
ムラムラ感に襲われながら、その柔らかい物の天辺をぐっと押してみる。
「んはぁ……ん?あれ?…」
「ほ、ほら。寝てると風邪引くぞ」
やりすぎて起こしてしまい、慌ててその場を繕うが、唯は気づいていないようで。
うん…と言いながら、目をこすっている。
そのまま隣にいると、また唯の身体を触りそうな気がしたから、俺は慌てて
立ち上がった。
窓は、外気との気温差で真っ白になっていたから、少しこすってやったら、
真っ暗な外が現れた。すでに雪は止んでいて、真っ白な、新しい景色を作り
出していた。
*** 980 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/10(火) 22:28:47.18 3ZLz0vm/0
翌日。唯は、身体検査だので休むと言ってたから、休む理由の無い俺は、
待ち合わせ場所を通り過ぎて、真っ直ぐ学校へと向かった。
前から身体が弱く、1ヶ月に1度ぐらい休む事があったから、別に居なくても
何て事は無い。でも、昨日の今日なので、一緒じゃなくて、なんかほっと
してる俺も居る。
先生は、俺の欠席理由を詳しく説明してなかったらしい。
教室に入ると「よっ!サボリ!」と、声を掛けられた。
そのままなのも嫌だったから、
「隣のクラスの唯が女体化したから、付き添ってたんだ」
と、言ってやった。それを聞いた奴らは、お守り大変だな、と返してきた。
そして、お決まりの、
「どうだった?」
がきた。ちょっと顔を思い出してみたけど、
「そんなに変わってないんじゃね?元々女っぽかったし」
と言うと、あーなんとなく分かるわ、と言われ、それで終わり。当事者でも
無い俺は、いつも通りの生活を過ごした。
明けて次の日。待ち合わせ場所で、まだ雪の残る中、ちょっと足が冷えながら
唯を待っていた。
「ご、ごめん」
声のする方を見ると、女物のコートを着ていた。足もスカートのようだ。
でも、その姿が違和感なくて、昨日みんなが脳内で納得してたのを、改めて
思い出す。
「この靴、滑る…」
靴も真新しいローファーだった。
「そりゃ、こんな日に新しい靴なんか履くからだ」
所々溶けた水が、氷になっていて、もの凄く滑りやすくなっている。
滑るせいで来るのが遅くなったようだ。
*** 981 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/10(火) 22:29:55.59 3ZLz0vm/0
「ほら。行くぞ」
俺は、唯の足に合わせて、ゆっくりと歩き始めた。時々転びそうになるのが、
ハラハラして心臓に悪い。
と思ったら、横向いて歩いてたせいで、俺がこけそうになった。
「あっちゃん!気を付けて!」
「唯と違って、運動神経いいから大丈夫なんだよ!」
雲のはれた空から降り注ぐ朝日に当たって、きらきら輝いている雪道を、
俺達はゆっくりと進んでいった。
そして、駅に到着するが、学校の最寄駅まで電車で20分かかる。まだまだだ。
通勤ラッシュの波に紛れて、ホームで電車を待つ。
電車が来るのを見ると、唯はコートのボタンを外し始めた。冬の暖房で、
車中気持ち悪くなってしまうから、これは日課だった。
だから、いつもの風景を見てる気がしていた俺は、突如現れたセーラー服に
どきっとしてしまった。
「あっ…ちゃん?」
俺の異変に気づいたのか、唯の手が止まる。そして、あからさまに不安な色を
目に浮かべている。
「以外にいいんじゃないか?ほら、電車乗るぞ」
その言葉に、まだ眉を下げながらも、唯は笑顔を見せてきた。
予想外の衣装が出てきた事、それも唯に合っていた事、そしてあの胸だ。
それを見て、一昨日がふっと脳内によぎったから、声が出なかっただけだ。
*** 982 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/10(火) 22:32:05.70 3ZLz0vm/0
到着した電車に、周りの人と一緒に、押されながら俺達も乗り込む。
バカ!唯、どこに押されてるんだよ!
俺ははぐれそうになった唯へ、とっさに手を伸ばす。そこに背中をぐっと
押され、俺の手は唯の腰をかかえるように、そしてお互い正面で密着した形で。
電車は出発した。
車両の中程に詰められたから、多分、学校近くの駅までこのままだ。
しかし、なんて状態なんだろう。俺の片足は、唯の両足の間に、唯の片足も、
俺の両足の間に挟まっている。そんな姿勢な上、密着してるから、唯の胸全体を、
俺の体が押しつぶしている。
その格好を、お互い、口に言いたいけど出来ないでいた。俺は、隙を見て
身体をずらそうとしたけど、どうも無理だったので、諦めた。
無言になると、どうしても脳内で気を取られる事があれば、それから抜け出せ
なってしまうものだ。つまり。
「…あっ…」
唯の小声に、睨む様な視線だけで、黙っててくれ、と伝える。太ももに、
固い物が当たっているのに気づいたんだろう。俺だって、気を逸らしてどう
にかしたい。
なのに。足をどかせと伝わってしまったんだろうか。もぞもぞと足を動かし
始めた。待て。刺激与えるな!!
俺は手をずらして、唯の尻をぎゅっと掴んだ。
「ぅん」
微妙な声を漏らして、動きを止めた。良かったのもつかの間、状況は変わらず、
おまけに尻まで触っているおまけも付いてしまった。
唯の顔を見てみると、俺の方では無い、あさってを向いて、頬を赤く染めていた。
それはなんだか色っぽくて、また反応起こし始めた自分の身体の調整に、俺の
脳内は忙しく動き始めた。
*** 983 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/10(火) 22:33:31.41 3ZLz0vm/0
学校に無事着くと、俺は職員室に向かう唯と別れて、いつも通り教室に
向かった。
授業は進み、昼休みの時だった。唯はどうも、さっき教室に入ったようだ。
午前中は先生から、何か説明でもあったのだろう。
唯を観察しに行っていたクラスの奴が、興奮しながら戻ってきた。
「おい。唯、すげぇ胸でかいな。なんで昨日言わなかったんだよ!」
言ったからってどうなんだ、と思いながら、総称的に、女の格好はまったく
違和感無いといった話しを聞く事になった。
別に俺の事じゃない。でも、唯、苛められて無いかな…そんな考えが、
ちょっと浮かんでいた。
けれど、わざわざ、よそのクラスに行って、様子を見る事もおかしいかな…と、
不安を抱えながら、その後の授業を受け続けていた。
一日が、滞りなく終わり、もう学校に用の無い俺は、さっさと唯を呼んで
帰ろうと思っていた。
急に、隣のクラスが騒がしいな…と思ったその後、周囲の俺を見る視線が
おかしくなった事に気付いた。
複数の視線はさすがに居たたまれなくなり、半ば逃げるように教室を出る。
そこで、ちょうど廊下で会ったクラスの奴は、俺の肩を叩くと、
「そりゃ、あのおっぱいには負けるよな」
と言い、すれ違って行った。
何の事だ?今日の事を考えると…おっぱいとは唯?
嫌な予感を覚えながら、隣のクラスに向かう。
「おーい。唯…」
いつものように声を掛けると、飛び出すように唯が人の輪から出てきた。
「どうした?」
質問しても、唯はでかい身体を、カバンを抱きかかえて小さくなったままだ。
それに、今居る、隣のクラスの奴らの視線もおかしい。
「帰るぞ」
言うと唯は軽く頷いた。それを見ると、俺は歩き始めた。慌てて後を追って
くる唯。なんとなく。この場は、離れた方がいい。
*** 984 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/10/10(火) 22:34:32.20 3ZLz0vm/0
今日の日差しで、だいぶ雪は溶け、水溜りが出来始めていた。
それを避けるように歩く俺達。
そして、さっきの原因を話し始める唯。
「あ…あのね。みんな、最初は、制服合うね、とか、女の子っぽいねとか、
言ってくれてたんだけど。誰かが、僕の胸が大きいって言い始めて。
それで…授業終わったら、さわ、触らせろって…言うから…」
無言で聞いてた俺だったが、次の言葉を聞くと、思わず立ち止まった。
「僕はあっちゃんの物だから、ダメって断ったら、みんな騒ぎ始めちゃって…」
文字通り、声が出なかった。
「はぁっ?」
そして。やっとでたのが、これだ。
「だって、あっちゃん。この間の、あの時…そう言ってから…」
ちょっと赤くなりながら言う唯。
確かに唯の中に突っ込む前に、そんな事を言ったかもしれない。
でも。その時、俺は、唯の処女貰うぞって意味だったんだぜ?なんでそう
曲解するのか分からない。
「唯。自分が言った意味、分かってるのか?」
顔を赤くしながら、軽く頷く唯。
我ながら、答えの意味が掴みにくい質問してしまったと思ったが、改めて
質問するにも思いつかない。
…まぁ、こいつが苛められないならいいのかな。
二人、黙って歩き続けるうちに、俺はそんな風に考えるようになっていた。
*** 189 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 17:35:20.10 JuX3B4rN0
そうは言っても。翌日も続いている「僕はあっちゃんの物」発言の、この
周囲の視線は耐え切れるものじゃない。
運良く、クラスには調子のいい…と言うか、空気読めてないような奴がいる。
雑談中にそいつが、
「稜っ!あっつきくーん!唯の胸って、どうだったのよ?」
と言って来たから、ちょうどいいや、そう思って、
「どうもねぇよ。ただ今まで通り、唯にちょっかい出す奴はボコすだけだ」
そう、ちょっと大きめな声で言ってやった。周りの奴らも聞こえてただろう。
今までの俺を知ってれば、それで十分だ。多分、隣の唯のいるクラスの
奴にも広まっただろう。
だからその日も、帰りはいつも通り唯を迎えに出向いた。
女の子と話しをしていた唯は、楽しそうに「じゃ、また明日」と言って、
教室を出てきた。
「唯って、あんなに女と仲良かったっけ?」
「今まではそうでもなかったけど。女の子になってから、声かけてくれる
ようになったよ」
「そっか」
楽しそうに話す唯を見てると、やっぱり唯は、女になって良かったのかも
しれないと、改めて思う。男だった時にされていた、ちょっかいの数々を
思い出すと、自然にそう考えてしまう。
でも。今でもやっぱり、唯を一人にするのは不安なんだ。
なんでだろう。
*** 190 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 17:39:34.36 JuX3B4rN0
それからすぐに2学期も終わり、ひと時の休息の日々が訪れる。
はずだが、俺はやっぱり補習が必要で、翌日から五日も学校に行く事になった。
親に伝えたら「バカなお前に、わざわざ教えてくれるんだから、感謝しろ」と
言われた。
まぁその通りなので、いつも通り学校に向かって、人数の少ない教室で特別
プリントと向かう。いつもとは違った、学校の日々。唯が一緒じゃないのもそうだ。
そんな、ぐったりと帰ってきたある日の夜。とある着信音が響き始めた。唯だ。
「ん?どうした」
「あのね。あっちゃん、今度の日曜、時間ある?」
日曜はもちろん学校が無いので、ごろ寝の予定だった。
「内容によっては」
「その…映画のチケット、お父さんから貰って。一緒に行かない?」
映画か。久し振りに大きなスクリーンで見るのはいいかもな。タダだし。
「おk。午後3時頃、いつものトコで待ち合わせは?」
「ん…。じゃぁ、それで」
元気の無い切り方がやけに気になったけど、あえて折り返しはしなかった。
唯は、困っていたら、もっと泣きついてくるはずだから。
その、元気が無かった理由は、当日分かった。チケットは、今話題のホラー
映画だった。
ホラー映画が苦手なのに、何故…そう思いつつも、嫌いじゃない俺は、ちょっと
ワクワクしながら観始めた。しかし、観てる最中、唯は何かある度に、俺の腕に、
ぎゅっとしがみついてくる。おまけに胸当たってるし。
だから、折角の話題映画なのに、内容は半分位しか入ってきてなかった。
*** 191 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 本日のレス 投稿日:2006/10/11(水) 17:42:42.30 JuX3B4rN0
「…ごめん、ね…」
明るくなった映画館で。上目遣いでさっそく謝ってくる唯。
「お父さんが、あっちゃん好きだからって、持ってきちゃって」
「別に怒ってねぇよ」
ほんと?…って。
「ほんとだから。ほら。行くぞ」
人少なくなった館内を見て、慌てて退場する。
外に出ると、粉雪が降り始めていた。
「雪だぁ…」
唯の口から、言葉と共に白い息が吐き出される。
そんな嬉しそうな横顔を見ていたら、すっかり暗くなった時間だけど、まだ
帰るのには早い気がしてきた。
「どこか寄ってくか?」
「ん?」
唯がこっちを向く。俺は、ゆっくりと視線を外して、言葉を続ける。
「この間さ。唯の誕生日だったんだよな…すっかり、その、プレゼントとか
何も用意してなかった。ごめんな。
だから、ケーキでも食って帰らないか?」
あの日は、自分の事でいっぱいで、本当に考えてなかった。雪を見てると、
どうしてもあの日を思い出して。今は罪悪感も心に浮かぶ。
「うん!」
でも。そんな不安を吹き飛ばしてくれる、唯の嬉しそうな声が聞こえた。
「ホワイトクリスマスだな…」
「今日はクリスマス・イブだね…」
そして。イルミネーションのきらめく中、雪の中を二人、ゆっくりと歩き
始めた。
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