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史無国 壱 時は西暦647年。 ヨーロッパでいえば、暗黒時代に相当するこの時代。 隠された歴史の裏に、動乱が渦巻いていた。 西ローマ帝国がオドケアルによって倒された数十年後、新たにゲルマン人によって国が建てられた。 国の名は『リムノール』。 後にこの国は、ヨーロッパ全土に跨るほどの、大帝国になる。 ゲルマン人はラテン人から引き継いだ技術や文化を昇華させ、新たな文明を築きあげて行った。 リムノール帝国もその御他聞に洩れず、めきめきとその力を伸ばした。 しかし、栄える物には衰えあり。 栄華を極めたリムノール帝国も、180年たてば血の淀みが現れてくる。 この淀みが顕著になったのは、名君と名高かったクランディール7世が崩御したときだった。 このクランディール7世には、正嫡が居なかったのである。 そのため、それぞれの妾や側室が、我が子を皇帝に、と考えた。 さらに達の悪いことに、権力に目がくらんだ者たちが、一人の皇太子を押さず、それぞれに分かれ争いだしたのである。 これにより、帝都サレム・ノティスでは、血で血を洗う陰謀、暗殺、流言が横行し、この争乱に巻き込まれた民を含めると、およそ27万人が死亡した。 人々はこれをパリス・ド・クリミエーネ(犯罪者の王宮事件)と呼んだ。 パリス・ド・クリミエーネの話は瞬く間にリムノール全土を駆け巡り、皇室の衰退を感じ取った各諸侯たちは、次なる覇権を獲るために活発に動き出した。 こうして、リムノール全土に暗雲が立ち込めて行く。 だが、これはまだ序章に過ぎなかったのだ…… そして、話はリムノール帝国辺境、クリアール地方、トリエスト。 ここから始まる。 青々と続く草原。 それが見渡せる小高い丘の上で、騎乗の若い男が一人。 「……風が、変わるかな」 そう呟いたのもつかの間、背後より蹄の音が二つした。 「ここにいたのか、エルムッド。探したぞ?」 「今日は公爵に挨拶の日だろうが、エル。遅れたらどうする?」 「ああ、もうそんな時間か……」 エルムッドという若者は馬首を返すと、丘を下って行った。 彼を呼びに来た二人もそれに続く。 三十分後。 三人は一際大きな屋敷の前についた。 と、門の前には三人の男が立っていた。 「遅い、エル。何時に来るのか、知っているか?」 「悪い、父さん。ちょっと丘の上で呆けてた……」 「……全く」 エルムッドは筋骨隆々とした、如何にも武人と言ったような男にいう。 どうやらこの男はエルムッドの父らしい。 後の二人も、やはり同じようなものだった。 「という事は、いつも通りテレシスとセリック君は、エルムッド君に振り回されたんだね?」 「そうだよ、父上。エルムッドの放浪癖、どうにかならないの、と思っているんだけどね」 「はっはっは、それはどうしようもないよ、テレシス。彼は私達の考えもつかないことをいつもしでかすからね」 「で、遅れたことに謝罪はあるんだろうな、セリック?」 「あぁ? 俺は悪くねぇよ。悪いのはエル……」 「この馬鹿ものが! お前はいつもエルムッドのせいにしてからに……」 眼鏡をかけた、テレシスという青年とその父。 やや粗雑な空気を匂わせるセリックという青年とその父。 彼らが繰り広げられる漫才の嵐に気づいて、衛兵が近づいてきた。 「あのう、皆さまはもしかして、公爵様の……?」 「そうだ。公爵に伝えてくれ。『ヴァンディールとフォンベルグ、エレナーデが子を連れて来た』とな」 エルムッドの父が、そういった。 [[史無国 弐]]へ

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