「5話」(2009/09/01 (火) 08:42:24) の最新版変更点
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例えば日常。
例えば今日。
例えば今この瞬間。
エアコンの冷房を常時付けた部屋は涼しいを通り越し、寒いと呼べる程だ。
エアコンのリモコンを見ると、設定が二十五℃とかなり低い設定で、風速も中になっていた。どおりで寒い訳である。
私はリモコンを弄り、二十八℃に上げ、風速を弱に落とす。この部屋はそれほど広くはないので、これで十分である。しかし自動的に切るタイマーは使わない。
外では蝉がそれほど五月蠅くない鳴き声を鳴らし、その蝉を捕まえようと童子達が駆け回る。いくら高級マンション周辺と言えど、こういう子達がいるのは何かと風流である。ところで最近の蝉は人間が近づいても全く逃げもしないそうだ。まあ捕まると分かって、無駄な力も使いたくないのだろうかも知れない。一週間近くの命だけど。
私はこの蝉捕りという事をした事がない。正確には虫を捕りに行くなんて事はした事がないので、多少憧れを持っている。私はあんなところに生まれたばっかりに、娯楽などはかなり制限されていた。その中でも虫捕りなんて物は、怪我でもしたら駄目という理由でさせて貰う事が出来なかった。学校も私学の良いとこで、そんな野蛮な真似なんて思われて、一緒にする相手もいなかったからだ。
とは言っても、この歳になってしまうと、流石にそうははしゃげない訳だ。みっともない訳でもあるし、体力的にも自信はない。まあこの話は置いておこう。
ともかく私がこの部屋の窓から外を見ても日々大差もなく、毎日が同じ日を過ごしているように感じられる。
そりゃ毎日株の値は変わるが、それでもやってるのは株の売買という単純な事だけだ。他にも買っている株などの情報も収集したりするが、それは毎日そこまで色々あるわけでもない。毎週でも大ヒット商品でも出れば別の話だが、そんな事もあり得る訳はない。
「とは言ってもなー」
「そうは言ってもねー」
「何かしたい事でもある?」
私に話しかける事しか出来ないはずの「それ」に問いかける。
「それは私がしたい事?」
「そうそう」
「うーん」
悩んだ「それ」の声だけが聞こえる。実際に悩んでいるのかは相変わらず確認は出来ない訳だが。
「寝たいかな」
「寝れないの?」
「ずっとね」
ふむ、どうやら寝る事は出来ない様だ。
「でも消える事なら出来るよ」
消えれるそうだ。これは訳が分からない。
「じゃあ代わりに私が寝るわ」
そう言って「それ」の代わりに寝ようとする。別に私が寝ても「それ」が睡眠出来ないのは説明は不必要だろう。
「ああっ、待ってよ」
ちょっと涙目の様な声で声を掛けてくる。
しかし私は好きな時間に寝るので、このまま本当に寝てしまう事にした。
例えば、何かも良く分からない「それ」に話しかけている自分を馬鹿だと思った時。
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