「静まりかえった室内で」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

静まりかえった室内で」(2009/02/12 (木) 20:41:11) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p>「オギャアァァ、オギャァァァ」<br /> 静まり返った室内に、自らの誕生を天地にしらしめるが如く、泣き声が響き渡る。<br /> またひとつ、新たな命がこの世に生を受けた。<br /> しかし、その誕生に盛大な拍手や歓声を送る者は誰1人としていない。<br /> 1組の男女が、自分たちの赤子の顔を覗き込む。<br /> しかし、その顔に愛情という感情など微塵も浮かんでおらず、ただただ嫌悪の念があらわれているだけだった。<br /> 自らの赤子の顔を見るのも早々に、男は1枚の紙をとりだし、なにかを記入し始めた。<br /> その紙には【クーリング・オフ】と書いてある。<br /> しばらくボールペンを走らせたあと、男は女の腕の中から赤子を取り上げ、さきほどまで記入していた紙と共に看護師に渡した。<br /> その動作には1点の迷いもなく、赤子への愛情のなさを、改めて、明確に表していた。<br /> 赤子は自らが捨てられたのを悟っているかのように、看護師の腕の中で、大声で泣きじゃくる。<br /> しかし、男女はその泣き声に未練をかんじるような様子はまったくなく、むしろ不快そうな表情を浮かべただけだった。<br /> にぶい音とともに、扉が開けられ、赤子は連れ出されていく。<br /> 狭まっていく扉の隙間から、赤子の声が尾を引くように、いつまでも室内へと流れていく。<br /> しかし、扉が閉まりきるとともに、その声も届くことはなくなり、再び室内に静寂がおとずれた・・・</p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
記事メニュー
目安箱バナー