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夕方」(2009/03/08 (日) 18:33:21) の最新版変更点

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【希望の姫と勇敢なる騎士の純愛の行方とこれから】 日が傾き、月が地平線の端から曲線を出す頃。 空が淡い虹色へと彩られ、世界が最も美しく見える時のことだった。 ある丘の上に、ふたつの人影。 ひとつは少女。 夜に行われる宴のためか、シンプルな白いドレスを着て、黒髪の中に赤いカチューシャを覗かしている。 ひとつは青年。 こちらも宴のためだろうか、いつもの彼とは打って変わって、黒いタキシードを着こなしている。そして、金髪の上にはシルクハットを。 と。 先にしばらく続いた沈黙を破ったのは、少女だった。 「・・・・あの、チェインさん」 「何だ?」 「此処に呼び出した理由のことなんですけど。私に話したいお話って、何ですか?」 「・・・・ああ、まあ・・・・は、話っていっても、直ぐに、終わる・・・・はず」 そしてチェインはアブソーの方へ向き直ると、一度大きく深呼吸をして、 「コアの中でも、言おうとしたことなんだけどよ・・・・お、俺はお前の、こ、ことが――」 そこまで、チェインは言いかけて。 アブソーの顔が赤いことに気付いた。 最初は夕日のせいかと思ったが、確かにそれはアブソーの体温によるものだと気付いたので、チェインは慌てて、 「アブソー、お前もしかして、熱なのか!?」 早口で言いながら、アブソーの頭を掴んで、優しく己の額とアブソーの額をくっつける。 刹那。 「ちぇ、チェインさん、近いです!」 と、すぐ目の前から大きな声。 「・・・・・・・・あ」 アブソーの言葉にチェインも今の状況に気付き、顔をさらに赤らめながらアブソーから離れる。 お互いの間にしばし、気まずい雰囲気が流れ。 唐突にアブソーが口を開いた。 「私も実は、チェインさんにお話したいことがあるんです」 アブソーはそして、チェインの碧眼を真っ直ぐに見つめて、 「これから私は、クルー・G・アブソーと名乗ることにしました」 ちなみにGはガディスのGです、と。 アブソーは微笑みながら付け加えた。 「・・・・おい、アブソー・・・・それってどういう意味だ?」 「此処に――妖精界にずっと居たいという意味です。人間界にも友達がいます、別れてしまうのは悲しいです。だけど、それ以上に、此処にいたいという気持ちが在るんです―― ――チェインさん、私は貴方に伝えたい事があります」 そこで、クルーにMr.鈍感と言われていた彼は、やっと、気付いた。 彼女の顔が赤い、その理由に。 「あの、私、実はチェインさんのことが――」 「好きだ」 「・・・・え?」 「好き、だ」 「え、あの、チェインさん」 「お前のことが好きなんだ、アブソー」 俺は、アブソーという人を愛しいと思っているんだ。 いままでも、これからも。 ずっと、そう思ってる。 優しい風邪が、チェインの金髪を揺らす。 暖かい夕日が、アブソーの頬を照らす。 この時、誰の眼から見ても、世界は平和で満ちていると、そう思うだろう。 希望の女神が幸せそうに笑ったのだから。 「チェインさん、私も貴方が好きです」 +++ そして、並んだふたつの人影が一層長くなった時のこと。 「――――あ」 アブソーは、立ち止まり。 家の影に隠れている、黒猫をくいいるように見つめる。 黒猫の眼は、異様に赤かった。 「ん? どうしたアブソー? もうすぐで宴が始まっちまうぞ」 「・・・・いえ、何でもありません」 「何でもない、って・・・・アブソー、何で笑ってんだ?」 「ふふふ。ちゃんと希望があるんだと思って」 「・・・・?」 チェインは首を傾げながらも、アブソーと再び並んで歩き出した。 と。 アブソーは嬉しそうに、呟く。 「ノヴァ叔母さんはもういないけど、それでも、人生を楽しむ希望はありますよね――ビーさん」 二人の背後で黒猫は答えるように、にゃあと鳴いたのだった。                                                                            それはひとつの果実から 終 End....

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