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第1幕」(2009/03/01 (日) 18:45:49) の最新版変更点

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寂しい風が吹き荒れる夜道に、一人の黒髪の少年が歩いていた。 腰には錆付いた刀を携え、元は着物と思われる衣服は所々破れている。 恐らく、金も住む所もなく流浪しているのだろう。  「・・・街か・・・。」 よろよろと歩く少年が向かう先には、建物から漏れる光で輝く一つの街だった。 金も、住む所もない。しかし街に行けば大勢の人がいる。 強奪、窃盗。これらを実行するには十分すぎる街だった。 無論、少年だけではない。 侍と銃士が溢れ、争いを繰り返すこの世界には、既に無法地帯と化した街が多くある。 住む家がない人間が、自然と行き着き犯罪を繰り返す・・・。 次第には、自らの事しか考えなくなり、争いに身を投じていくのだ。 そして、育てきれなくなった子供を捨てていく大人も少なくなかった。 そう、その少年もまた、捨てられた子供の一人。  「・・・ん・・・。」 何かに気づいた様に、歩いていた少年がいきなり立ち止まった。 近くに、複数の人影が見えてきたのだ。 恐らく一人の子供を、複数の男が取り囲んでいるのだろう。  「やめて・・・!」 声からするに、まだ若い少女だろう。 抵抗する少女をよそに、男達は少女を担ぎ上げ、得意げに言った。  「へへ・・・さっさと売り払っちまおう・・・!」 これも、無法地帯故の所業か・・・。 人身売買も行われる街では、子供の誘拐が後を絶たない。  「・・・。」 よくある事だ。 あの少女を助ける義理もない。 面倒なのは御免だ。 そう自分に言い聞かせ、また歩き始める少年。 だが、男の一人が放った言葉によって、再度少年の足を止める事となった。  「・・・『親に見捨てられた』って所か・・・?こんな街の近くで・・・可愛そうに。」 笑いながら、少女の顔を覗き込む男。  「・・・くそ・・・!」 その光景を見た少年の体の中で、何かが疼き出した。 『親に捨てられた』という言葉を聞き、憎悪の感情が蘇る。 そして気づいた時にはもう、少年の体は動き出していた。  「・・・待て。」 街へと向かう男達に向かって一言。 見れば全員、刀や銃を持っている。 「・・・なんだ?」 不機嫌そうに振り返る男。 そして、少年もまた子供だと知ると、不機嫌そうな顔が嬉しそうな表情へと変わる。  「・・・へへ!こいつも売っちまおう!」 今にも飛び掛ってきそうな男達を見てか、少年は腰にある刀を抜こうとしている。  「・・・そんな錆びた刀でどうするつもり・・・。」 そう男が言い掛けた時、少年が刀を抜く。  「・・・なんだ・・・!?」 少年が抜いた刀を見て、男達は驚きの表情を見せる。 錆びていた刀が、大きな変貌と遂げたからだ。 そして、少年は刀を振り上げる。 ―――邪念に満ちた、黒い刀だった。
「ぐああ!なんだ・・・!?」 少年が刀を振ると、触れてもいないにもかかわらず男達が頭を抑え苦しみ始める。 まるで、何かに頭を締め付けられるように・・・。 それを見ていた少女もまた、表情を歪め怯えている。 「・・・疑心刀!」 何かを思い出したかのように、少女が目を見開く。 それと同時に、苦しみから逃れようと男達が少年の元から離れていく。 早く開放されたい。 逃げていく男達の背中がそう物語っていた。 「・・・。」 男達が逃げていく事を確認した少年は、黒く邪悪な刀を腰の鞘に戻した。 豹変した刀が、徐々に元の錆びれた刀に戻っていく。 そして、座り込む少女には何も言わず、何事もなかったようにまた歩き出した。 「待って!」 無言で立ち去ろうとする少年を見た少女が呼び止める。 「・・・助けてくれてありがとう。あの・・・。」 「急いでいる。」 少女の言葉を断ち切り、少年は足を止めない。 それでも尚、少女は少年の元へと早足で歩み寄っていく。 「・・・ねぇ!お礼がしたいの!お家・・・来ない?」 「・・・。」 「・・・服・・・破れてるし・・・何かごちそうさせて!」 少女のその言葉に、少年が足を止める。 食欲という人間の欲求が、「ごちそう」という言葉に反応してしまったのだ。 ここ最近まともな食事をしていなかった少年の腹は既に限界に達していた。 「・・・悪いが、先を急いで・・・。」 ぐぎゅるるぅ・・・。 「・・・。」 目的を早く果たす。そう強く決意した矢先の事だった。 みっともない音が、少年の腹部に鳴り響いた。 「・・・やっぱりお腹すいてるんでしょ・・・?」 くすくすと笑いながら、少女が言った。 少年が顔を歪める。 (どうする・・・?いや、今はこいつと馴れ合ってる場合じゃない。) そう決意すると、少年はまた歩きだした。 活気ある、無法地帯の街へ向けて・・・。

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