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「気付いちゃくれない」(2009/03/01 (日) 12:48:26) の最新版変更点

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<p class="cmnt">カイル→牧場主。親切で温厚、人の頼みは断れないタイプ。鈍感。<br />
俺（バレット）→町長の息子。町の中では嫌われ者に近い。クーデレ。<br /><br />
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　妙に日差しが暑い、初夏の昼前。今日もあいつは俺のところへやってくる。今日は一つ、いつもと違うあるものを持って。<br />
「こんにちは、バレットさん。本、見つかりましたよ」<br />
　カイルはそう言うと、一冊のやや大きめな本を差し出した。若草色の表紙がやけに青々しい、俺がよく持ち歩く本。<br />
「ああ、これだ。……ありがとな」<br />
「いえ、僕もお礼を貰う身ですから。こちらこそありがとうございます」<br />
　本と引き換えに、僅かばかりの金をカイルへと渡す。<br />
　昨日の夕方ごろ、俺が掲示板に依頼を書き込むと、こいつはすぐにやってきた。暇なのか、それともタイミングがよかっただけなのか。落としてしまったらしい本を探して欲しいと言う依頼だったが、俺は、もう遅いから明日でいいと言った。それなのに、昨日の今日でもうみつけるとは。まだ起きてからそんなにたってないんじゃないのか？<br /><br />
　ふと見れば、カイルは何気に得意そうな、そして嬉しそうな顔をしている。その顔に思わず俺も笑みがこぼれて、そしてつい、いつの間にか、言葉を口にしていた。<br />
「お前、告白って、されたことあるか？」<br />
「え？」<br />
　さっきまで嬉しそうにしていた顔は何処へやら、カイルはポカンとした表情で俺を見る。俺はハッとして口を押さえたが、しばしポカンとしていた後、カイルは笑ってこう言った。<br />
「されたことはありませんね。でも、もし告白されたら僕は断ると思います」<br />
「は？」<br />
　今度は俺がポカンとした。カイルは苦笑気味に話し始める。</p>
<p class="cmnt">
「僕はまだ、恋とかそういう色めきたったものはできません。牧場もまだ少し不安定ですし、そもそも、僕は一生一人で生きていこうかと思うこともありますから」<br />
「…………」<br />
　沈黙。なぜ俺がこんな質問を口にしてしまったのか、その理由は明白だ。だからこそ口にはしたくない。それは人間にとってはあまり好まれないことだからだ。<br />
　でも、だからこそ、俺は聞いたのかもしれない。そして、その返事で多少の絶望を味わったように思う。俺はお前に一言言いたいのだと、そうも思う。<br /><br />
　俺は、お前のことが好きなのだと。<br /><br />
　そう言ったら、こいつはどんな顔をするだろう。哀れみか、同情か、もしくは。<br />
　そもそも、こいつはどこか鈍そうなのだ。何をしても、俺が正直に口にしない限り、俺の気持ちには気付きなんかしないだろう。<br />
「……鈍感だな。お前には、俺の気持ちなんてわからないんだろうな」<br />
　また知らぬ間にそんな言葉が口をついて、俺はまたハッとする。<br />
「じゃあな」<br />
　意味がよく分からないらしく、首を傾げているのをいい事に、俺は平静を装ってその場を去った。<br /><br />
　何だ、何なんだ。自分でもヤバイのがわかる。気持ちが、抑えきれなくなっているのだ。<br />
　途方に暮れて走る俺の頬は、朱に染まって。そして、俺の心の中は──</p>
<p class="cmnt"> </p>
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