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クルーがティーとデートもどきをしている頃。 レンシー一行は射的やヨーヨー釣りが並ぶ縁日コーナーに来ていた。 タイニーのために食べ物を買うためである。 そして、タイニーが右手に綿菓子、左手にリンゴ飴を持って、 屋台が所狭しと並ぶ道を意気揚々と歩いているときに――ある角でタイニーが突然歩みを止めた。 「あ・・・」 「ん? どうしたタイニー?」 「あの金魚がなにか訴えてるんだ」 少女が目を向けた先にいたのは、青い水槽の中で泳ぐ赤色の魚の群れだった。 「へぇ、興味深いな。あの金魚たちはなんて言ってる?」 レンシーの問いにタイニーはしばし考える動作をした後、 「元の場所に戻して、って言ってる。」 少しだけ、悲しそうに答えた。 「ほら、これしか捕れなかったけど・・・」 「いや、十分さ、チェイン」 チェインがタイニーに渡したのは、 二匹の金魚が入っている水入りのお粗末なビニール袋だった。 「ごめんな。僕のこんな我が儘に付き合ってくれてさ」 すると、レンシーはタイニー頭の上にポンと手を置いて、 「いやいや、あなたはレディーなんですから。我が儘は何でも聞きますよ?」 キザったらしく言った。 +++ 三人は学校から離れてしばらく歩いていると、道の脇に、落ち葉が浮いている小川が流れていた。 「ここに流しても大丈夫かな?」 「この小川は不衛生じゃないはずだが・・・」 「じゃあ、もしこの金魚が死んじゃったら、チェインのせいだね」 「何でだよ!」 タイニーはその言葉にケラケラと笑いながら、ビニール袋のふちをとめていた紐をとり――そっと、小川に金魚を放した。 「もとに場所には戻れないかもしれない、でもさ・・・」 「少なくとも、あの狭い水槽の中から脱出できたね」 金魚は流れに沿うようにスイスイと泳いでいく。 「僕さ、時々小人の力をどう使ったらいいかわからなくなるんだけどさ・・・」 タイニーは振り返り、チェインとレンシーを見ながら、 「こういうときに活用すればいいんだよね?」 +++ ありがとう。ありがとう。 僕達は今自然に浸ってるよ 仲間も一緒だよ ありがとう。ありがとう。 僕達は今自由だよ。 仲間も喜んでるよ。 『アリガトウ』。 この言葉しか、僕達は感謝の言葉を知らない。 +++ 妖精界立第一高等学校の文化祭も終盤を向かえ、 正門へ向かう人々が増えてきた頃。 クルーとティーは並んで歩いていた。 はたから見れば、お似合いのカップルだが、本人達のもちろんそうではなく。 しかも、レンシー達と別れた後二人でした事といえば、お化け屋敷でお約束の事、ではなく一緒に模擬店のアイスを食べた事、でもなく「どこに行きましょうか?」「んー。ブラブラ歩かない?」等の短い会話を交わしたくらいだった。 つまり、彼らはレンシーの気遣いもむなしく、何も進展していないのである。 二人は、ティーの提案で、屋上へ向かっていた。 もう夕方に近いこともあり、屋上に着くと目の前に広がっていたものは・・・ 「綺麗な夕日だね・・・」 「本当ですね。やはり空気が澄んでいるからでしょうか?」 二人の目と鼻の先には、触れてしまえそうなくらいの、赤赤赤。 「ねぇ、クルー。そういえば私さ、ちゃんとお礼できてないよね」 ティーはクルーと向き合った。 「まともなデートになってなかったし・・・」 「それは仕方ないですよ。先日のこともありますし・・・」 「ははは・・・そうだね・・・」 二人は再び赤いソレへと目線を戻す。 しばらく、無言の時間が過ぎた後。 クルーの手になにかが滑り込んだ。 白く、細い、ティーの手だった。 「え、ティー?」 「いいじゃん、今は『デート』中なんだからさ」 ティーはクルーの手を握りながら言った。 「・・・はい・・・そうですね」 クルーはしっかりと、ティーの手を握った。 「今だけは、貴女との二人の時間に酔いしらせてください」 そして、ティーがふと隣を見ると、クルーの顔には、赤赤赤。 ティーは、相変わらず、と呟いて、少し笑った。 +++ この日、彼らは、お互いに少しだけ、歩み寄ったのだった。 そして、それが最終的に、どんな結果になるかは―― ――まだ、誰も知らない。                           それはひとつの過去から 文化祭編 End...

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