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黒幕」(2009/02/16 (月) 00:52:06) の最新版変更点

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「ティーさんはあんなにすごい技も持っていたんですね!」 「あはは。お世辞はいいよ、アブソー」 「いいえ! お世辞ではないです! これは事実です!!」 など、女子組で話に花を咲かせている隣で、チェインとクルーは、自分も頑張ったのに、と心の中でぼやいていた。 テディベアも含めた5人は、マグマたちをひととおり倒した後、チェインやクルーが負った傷の手当てをし、アブソーから、ティーとマニ、クルー、チェインの順番で円になり座っていた。 [ところで、もうここに長居する理由はある?] ティーの腕に抱っこされたマニは、砂で他の四人にそう伝えた。 「ふむ、確かにマグマは全滅させましたし、もう向日葵達が困ることはないでしょう」 「なら、アルファさんも心配要らないですね」 アブソーはそう言うと、上を見上げた。 大きなシルエットが目に映った。 「ただ納得がいかないのは、そのマグマの行動だ」 チェインは腕を組んで、 「マグマが動いているのは・・・ここは時空だから、に収まっても」 [問題は、そのマグマの行動の訳や動機] 「そこなんだよなぁ」 珍しく難しい顔をして言った。 「珍しく頭を使いましたね」 「・・・・」 金髪の青年は、クルー無言で睨んだ。 「それは私も気になってた」 ティーは口を開くと立ち上がって、何度も見た向日葵を見下ろした。 「この向日葵達は強い魔力を持ってる。  けど、それは向日葵を食べても破壊しても手に入らない」 その後をアブソーが続ける。 「たとえ破壊したとしても、もう魔力を手に入れるのは無理だと分かって、  もう向日葵達に危害は加えないはずです」 「よくできました」と言って、クルーはアブソーの頭をなでた。 チェインのクルーに対する怒りゲージが、少し上がる。 [なら、その問いに対する答えはどうなるんです?] マニが至極当然の疑問を浮かべた。 「・・・手詰まりですね」 クルーが残念そうに呟いた。 そこで四人は再び頭を抱えた。 そして、それに対する突破口が突然現れた。 懐かしい声と共に。 「答えはもうとっくの昔に解いたよ」 その声は何故か向日葵から聞こえた。 そして、その事実はある一人の人物を真っ直ぐに示した。 ティーは声に驚き、向日葵達のほうをむいて、何か分かったように、 「・・・へぇ、そうかい。色々聞きたいことはあるけど、それは後にしよう」 そして、優しい笑みを浮かべて、 「とにかく、久しぶりだねドゥワーフ・タイニー」 「タイニーさん! タイニーさんなんですね?!」 アブソーは立ち上がると、向日葵のほうへ走っていった。 「お、おい! ・・・行っちまった」 手のかかる娘ですね、と言って、クルーは立ち上がると、 「さて、私達も行きましょうか、ティー」 ティーに手を差し伸べ、 「うん、そうだね」 ティーがその上に手を重ね、 [答え、というのも気になります] マニがそう言って、三人はアブソーの後を追い始め、 「待て! 俺を置いていくな!」 最後に、チェインが叫んだ。 +++ 「タイニーさん、聞こえますか?」 一足先にたどり着いたアブソーが、花に問いかけた。 「お、その声はアブソーかい?」 「はい! そうです」 元気なアブソーの声とは対称的に、タイニーの声はどこか重くなっていく。 「そうかい。・・・あのさ」 「はい、何ですか?」 「『ディーバ』っていう言葉、聞いたことあるかい?」 アブソーはしばらく考えた後、 「・・・・すみません、聞いたことはありません。」 「いや、知ってないならいいんだ。気にしないでよ」 タイニーの声の調子は、元に戻っていた。 「やっほー、覚えてる?」 アブソーの後ろから、声が飛んだ。 「・・・この声は、ハートピア・ティーかい?」 ティーは嬉しそうに、 「ビンゴだよ! わが友よ!」 と言って、向日葵に抱きついた。 「ティー、ソレはタイニーではありませんよ」 「コレは、クルー・アポト二ティー」 その声に、クルーは少し呆れて、 「・・・フルネームでなくてもいいでしょうに」 「別にいいじゃん。クルーの名前は忘れやすいし」 「言ってくれますね」 そんなやりとりに、アブソー達の顔には笑みが自然と浮かび――そして。 「タイニー、元気か?」 追いついたチェインが声をかける。 「アルター・チェイン、もちろん元気さ」 チェインは笑って、 「そっか、・・・良かった」 「僕も、君が元気そうでなによりさ」 短いやりとりの間で、タイニーの声はさらに明るくなっていた。 +++ 「タイニー、元気か?」 ドクンと、心臓が跳ねた。 「アルター・チェイン、もちろん元気さ」 声、震えて無かったかな? 「そっか、・・・良かった」 タイニーは、城の外に生えた花を見ながら、 「僕も、君が元気そうでなによりさ」 笑って、言った。 「本題に行こうか」 そして、タイニーは自分しかいない空間の中で、真剣な顔をして、 「マグマは動かされていたんだ。本当の黒幕に、ね」 「……黒幕とは、どういうことですか?」 クルーがずいと、向日葵に近付く。 「そのまんまの意味さ。マグマの背後【バック】に真犯人がいるんだよ」 クルーはふむ、と頷き。 「なるほど。マグマはマリオネットにすぎなかった、というわけですか」 「だったら、どうだってんだよ」 「その事実によって、何か分かるのですか?」 その二人の問いに、ティーはほんの少し面倒臭そうに、そして律儀に答える。 「二人とも見たでしょ? あの半端ない数のマグマを。しかも、あれを個々に正確に且つ攻撃的にそして 俊敏に操るぐらいの魔力を持つ妖精なんて、そうそういないよ」 [けど、僕達はそれだけのことをやってのける妖精を、一人だけ知っているんです。チェインも耳にしたことがあるはずです。] チェインはそのマニの言葉にぶるっと身震いした。 それは恐怖や悪寒や武者震いからなのかは分からない。 そこで、アブソーが分かったのはたった一つの事実。 それはとてもやっかいで、だけどとても簡単なもの。 ――その『黒幕』は、凶悪にして強大な妖精。 「まさか、その黒幕って・・・・」 「そのまさかさ、チェイン」 「私も信じたくは無かったんですけどね」 「けど、マグマの一件がその人物を真っ直ぐに示しているのさ」 [面倒なことになりそうです] 各々が心に思ったことを言っている間、アブソーは少しも話の内容が見えてなかったので、 「あの、皆さんが話している人って、誰なんですか」 皆の視線が小さな少女に集まり、クルーが口を開き、そして、そして―― 「『絶望的に強大な魔力の主』。私達はその妖精を『ファント』と呼んでいます」 そして少女は気付いた。 その絶望的という言葉には、希望や平和の文字など含まれていないことに。 その絶望的という言葉には、悪意や破壊の文字が含まれていることに。 アブソーは不安そうな目を浮かべ、 「もしかして、八妖精達を時空に飛ばしたのも・・・」 「多分、いや今思えばそんなことができるのもただ一人に絞れてしまう、か」 「つまり、こういうことだろ?」 そしてチェインは少し声を張り上げて、断言した。 「この一連の騒動は、全てファントの仕業だ」 この時、アブソーの心の中に今はまだ小さな恐怖の種が埋められた。 今は、まだ小さな――『ファント』という名の種を。

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