風見鶏の向く方へ 第1章 ◆IGfK3fyxFE

    

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772 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 21:49:13.66 DhcI5Bfy0

んでは、他の作家さんのつなぎ程度に投下させてもらいますがな


第1章

窓から差し込む夕日が純白のシーツを橙色に染め上げていた。

ベッドに佇む小柄な少女の横顔は緋の太陽に照らされてその美しさをより際立たせる。

一見純粋そのものの少女の表情からどこか蟲惑的な艶妖さ見え隠れしていた。

見る者の心と視線を奪って放しはしないだろう。悩んでいるその表情が

よりいっそう情欲を駆り立てる。

「はぁ・・・」

少女はため息をついて顔を伏せる。サラサラの黒のショートヘアが揺れた。

沈んでいく夕日だけが唯一いつもと変わらぬ日常だった・・・。


782 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 21:56:28.17 DhcI5Bfy0

渡利達が帰った後、すぐに妹の由紀がやって来た。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「お兄ちゃん、入るよ?」

コンコンと小さな軽いノックの後、手荷物を抱えた由紀が入ってきた。

真っ直ぐに見つめて来た由紀と否応もなく視線が交錯する。

「遥凪(ハルナ)お兄・・・ちゃん・・?」

「・・・そうだよ。いや、正確にはお前の兄貴だった。」

「あはは、そっかもうお姉ちゃんか」

由紀はもう母さんから話を聞いていたせいか、妙にすんなり受け入れくれていた。

「いや~、でもビックリしたよ?いったいどれだけ変わったのか思って来てみてら

 いきなりすっごい美人が見つめてくるんだもん。私ちょっとドキドキしちゃったじゃん。」

「はは、何言ってんだよ」

なんだかいつも通りはしゃいでいる由紀をみたら自然と笑みがこぼれていた。


783 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:01:34.28 DhcI5Bfy0

「う~ん、でもやっぱ違和感あるなぁ」

「ん、何が?」

「話し方だよ、女の子なんだからお前とか、~ってんだよとかいっちゃダメだよ?」

「俺は女になってから1日もたってないのにそんなことも求めらているのか・・・」

途端に狼狽する。

「ほらまたぁ、俺、じゃないでしょ、私。はいリピートアフターミー」

なぜかエセ英語教師の真似ている由紀。

「わ、私・・・。うわっ、なんか恥ずかしい///」

「もー、何そんなことで恥ずかしがってるの(しかもちょっと可愛いし)

 言葉遣いしっかりしないとお父さんに叱られるよ?」


786 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:06:18.13 DhcI5Bfy0

そうだった。あの人存在を忘れていた、俺・・・私のお父さんは無駄に言葉遣いに厳しいのだ

「・・・でも流石にそんな女になったばっかのおr・・・私は大丈夫じゃない?」

「(チッ、もう恥じらいなく言いやがった)おに・・じゃない、

 お姉ちゃん、お父さんがそんな人だと本気で思っているの?」

「やっぱそうだよね、参ったな~どうしよう・・・」

やばい・・・これは早めに何とかした方が良さそうだな。

小さい頃から由紀はよく言葉遣いのことで怒られてたっけ。

由紀はまだ女だったから手加減されてたけど、私ならきっと今までのノリでぶたれる。

明日には家に帰るから時間もないし・・・。


791 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:14:19.00 DhcI5Bfy0

由紀は持っていた手荷物を机にのせると何かを思いついたように小悪魔的な笑顔を向けた。

「お姉ちゃん、私、いい事知ってるよ。お父さんに怒られない方法」

悪魔の囁きって言葉がよぎったがあえて無視しよう。

「どうするの?」

「んとね・・・」

由紀が私の隣座ってスッと体を傾けてきた。鼻腔をシャンプーの爽やかな香りと

女子特有の薄く甘い香りが刺激した。男の時にも嗅いだことはあるが

女になって嗅覚がよくなったのか、よりはっきり甘さを感じる。

「・・・由紀?」

私は由紀が何をしたいか分からなくて少し早まった鼓動のまま問いかけた。

「お父さん・・・ごめんなさい」

由紀がジッと上目遣いに見つめてきた。心なしか瞳もうるうるしていてまた鼓動が早くなった気がした。


795 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:18:46.53 DhcI5Bfy0

792いやこのスレでは良くあるw気にすんなw

続き


「・・・ってやるの。わかった?」

フッと顔を背けて後には、いつも由紀の明るい表情に戻っている。

「どう?これならお父さんも許してくれるよ、はい次はお姉ちゃんの番」

「ええ!!私もやるの!?」

やべぇ、女の言葉遣いがいつの間にか板に付いてきてる。

「だって練習してみないと。お父さんにビンタされたくないでしょ?」

「そりゃ、そうだけど・・・しょうがないなぁ」

しぶしぶ了承してやってみることにした。ちょっと面白そうだし。



801 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:25:12.19 DhcI5Bfy0

さっきの由紀みたいに由紀の体に身を預けてゆっくり顔を覗き込む。

顔の角度はこれくらいかな?

「お父さん、あの、ごめんなさい・・・」

「・・・っぷ」

――――あ、こいつ笑いやがった

「あはははは、お姉ちゃん馬鹿じゃない?私がお父さんにそんなことするわけないじゃん

 それなのに、あんなに真剣にっっ!!あは、あははははもうお姉ちゃん面白すぎ

 は~、ちょっと喉渇いたからジュース買ってくるね」

そう言い残すとスタスタと出て行ってしまった。

――――もうこれから真剣に由紀に頼るのはやめておこう・・・。

固く・・・誓った




805 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:30:59.77 DhcI5Bfy0

バタン

「・・・・////」

慌てて病室をでる。そのことをなるべく気取られないように。

――――いや、あれは危なかった・・・。

    この一ノ瀬由紀、危うく血の繋がった兄・・・いや今はもう姉か

    に不覚を取るところだったわ 

冗談半分でやってみた上目遣いをあーもうまくやってくれるとは・・・

しかもやってる本人は自分が可愛いっていう自覚がないのが余計に性質が悪い。

トクトクトク

今でも少し鼓動が早まっている。


808 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:34:34.62 DhcI5Bfy0

――――うまく笑ってごまかせて良かったわ。あれは男が女を抱きたくなるのも分かるわね

    思わず抱きしめたくもなるわ

「ふぅ・・・」

落ち着くまでしばらく時間がかかった。

その時間は自販機からジュースを買ってゆっくりと病室に向かうことで手に入れた。

――――さて、次は着替えの服も持ってきたことだし、体を拝見させてもらいますか。

    着替る時もブラジャーのつけ方教えるとか理由付けて居座れるし。

「ふふ、お姉ちゃんには悪いけどしばらく退屈しないですみそう」    



                              遥凪の受難は続く



810 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:37:34.32 DhcI5Bfy0 ~~
―――――本編とは関係ないけど今日はお着替え編に続かないために ~~
     設定された風見鶏3分間劇場  ~~
~~
~~
~~
缶ジュースを一口飲んで病室に入る前に一息つく。 ~~
~~
――――ダメだな、妙にさっきのことを意識しちゃうなあ・・・ ~~
~~
少しだけ自分の悪戯を後悔つつ扉を開ける。 ~~
~~
薄闇に染まってきた紅蓮の陽光が遥凪を包んでいて、吹けば崩れそうな儚げな美しさに ~~
~~
また視線を奪われそうになる。 ~~
~~
――――いっそ襲っちゃおうかしら。 ~~
~~
    今なら女体化したばっかであんまり抵抗しないだろうし・・・ ~~
~~
~~
~~
811 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/04(月) 22:38:47.25 DhcI5Bfy0 ~~
「あ、お帰り。私にも少しジュース頂戴」 ~~
~~
声をかけられて一瞬の妄想が霧散した。 ~~
~~
「ん、もうあんま入ってないけど」 ~~
~~
「ありがと」 ~~
~~
両手で受け取ったお姉ちゃんがそのままコクコクと飲み干す。 ~~
~~
――――ちょwwwwwwwこの女サラッとTちゃん飲みしやがったwwwwwwwwwww ~~
~~
内心の動揺を隠しつつ私は冷静に対応することにした。 ~~
~~
「お姉ちゃん、その飲み方はちょっとまずいと思うな」 ~~
~~
「え??なんで?」 ~~
~~
「このスレでは四天王には手は出しちゃダメなんだぜ?」 ~~
~~
「え???え?????」 ~~
~~
~~
       ごめん、Tちゃんネタ俺大好きなんだ ~~
           うん、反省はしてないw ~~


312 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/05(火) 23:50:07.48 xPar8roI0

308乙!!

そんじゃあ投下させていただきますか



飲み干した缶ジュースをゴミ箱に捨てて病室に入る前に一息つく。

――――ダメだな、妙にさっきのことを意識しちゃうなあ・・・。

少しだけ自分の悪戯を後悔つつ扉を開ける。

薄闇に染まってきた紅蓮の陽光が遥凪(ハルナ)を包んでいて、吹けば崩れそうな儚げな美しさに

自然と視線を奪われた。

「ん、由紀?どうかしたの?」

遥凪お姉ちゃんは不思議そうにこちらを見返した。その真っ直ぐな瞳がまた私の鼓動を加速する。

「え?あ・・・な、何でもないよ////

それよりお姉ちゃん着替え持ってから着替えたら?昨日から同じ服でしょ。」

内心の動揺を少し早口な口調で隠す。


315 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/05(火) 23:56:22.81 xPar8roI0

「ああそっか、その荷物がそうなの?」

「うん。私のでサイズがあえば良いんだけど。」

そう言って着替えのパジャマを渡す。

「ん、ありがと。あとで着替えておくね。」

「(それじゃ私がお姉ちゃんの裸を確認できないじゃないっ!)

 せ、せっかくだから今着替えちゃったら?」

「え~でもなんか人に見られてると恥ずかしいし・・・。」

――――やれやれ、心はもうすっかり乙女ね。

「いやでも、ほらブラジャーのつけ方とかわかんないだろうしさ。

 それに今着替えちゃえば脱いだ服も私が持って帰って洗濯できるし。」

 だいたい同性の姉妹なんだから恥かしがらなくてもいいじゃない。」

「う~ん・・・わかった・・・」

観念したのかプチプチとボタンをはずしていく。


316 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:01:43.86 3scIjqpl0

「あ・・・////」

なぜか突然顔を真っ赤にしてお姉ちゃんが硬直する。

「どうしたの?」

「いや、その今脱いで気付いたんだけど私今まで下着つけてなくて・・・

 それで渡利達と会ってたから・・・その・・・」

「ああ、多分気付かれてないと思うよ、私も全然気が付かなかったし。

(ふふ、そういえばあの害虫ももう二度と気付かないでしょうね、自主的に。)

 まぁ、お姉ちゃんがその時に乳首勃てたりするいやらしい子じゃなければの話だけど~」

「そんな事してないっっっ!//////」

再び赤面するお姉ちゃんが可笑しくて私はクスクス笑ってしまった。


318 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:05:45.55 3scIjqpl0

――――ずいぶんいじり甲斐のある姉になったわね

「あはは、冗談に決まってるじゃん。そんなことより早く着替えちゃってくれない?

 私そろそろ帰らなきゃいけないし」

布団に顔を押し付けて「う~」なんてうなっているお姉ちゃんをせかす。

「もういい・・・!由紀に話した私が馬鹿だったよ」

「あれ?怒っちゃった、ごめんね」

「フン・・・、次からは許さないからね。」

端整な顔立ちからは怒った雰囲気が本人の意図は離れて欠けてしまっていた。

――――怒った顔も可愛い・・・

ちょっと今ときめいちゃったし。

――――なんか今日私よくある男子の小説で書いてあることばっか実感してるわ

少しだけ男の子の気持ちが分かった気がした。


319 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:10:47.84 3scIjqpl0

――――しかしなんでお兄ちゃん女になっちゃったんだろ?

    私おにいちゃんが家でヤッてるとこ見た事あるし、沙夜さんとも

    話して確証はとったから絶対童貞ではないし・・・

ぼぅっとそんなこと考えてたらいつの間にかお姉ちゃんは着替えてブラジャーを着けていた。

「ねぇ、由紀、これで大丈夫?」

純粋な疑問をぶつけて来たお姉ちゃんの質問に私は答えずに、その姿に見とれてしまった

上半身は他に何もつけていなくて真っ白でキメの細かいきれいな肌で黄緑の下着が浮き上がったように見えた。

鎖骨やうなじの形がきれいで、色っぽくて女の私でも嫉妬してしまいそうになる。

それが覆い隠す少し小ぶりな胸が遥凪の腕でさっと隠される。

「由紀、そんなとこ見てないでブラジャーのつけ方これであってるかしっかり見てよ」

そんなこと言ったって見とれてしまったのだから仕方がない。

「ごめん、ごめん。

 ・・・うん、それでいいよ。さすがに何回も他の女の子脱がした事あるからわかるか。」

そう言うとお姉ちゃんは「あはは」と軽く笑ってすぐに服を着た。


326 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:17:07.60 3scIjqpl0

生チチは見れなかったけどとりあえず目的は果たした私はもう大分時間が経っていたので

すぐに帰宅の途についた。

帰り道に今日のお姉ちゃんの可愛いしぐさを思い出して少しニヤついていたかもしれない。

――――しかしお兄ちゃんがお姉ちゃんになるって聞いた時はどうなる事かと

    思ったけど、いざ現実に目の前にするとけっこう楽しいわね。

    お姉ちゃんももうちょっと凹んでるかと思ったけどそうでもないみたいだし。


家に着く前に見た空はほとんど沈んでしまっている太陽の紅にほんの一部しか染まっていなくて、

ちょうど夜の暗い紺碧とその赤染めに浮かぶ月が雲もないのに霞んで見えた。



           だけど私はまだ気付かなかった。お姉ちゃんのあの態度がみんなを心配させないためのものだと。

           今にして思えばお兄ちゃんの性格を考えれば私は力になってあげることが出来たかもしれないのに・・・

           ・・・そしたら・・・もしこの時に戻れたら・・・私が今過ごすこの日常は変わってたのかな?

           それとも・・・私のこの涙は未来の私の力になるのかな・・・?


328 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:23:50.47 3scIjqpl0

「・・・やっぱ今日行って良かったな。」

遥凪の病院からの帰り道、一疾先輩と別れ際道篤志先輩がいつとは違ってボソッとそんな事を呟いた。

一疾先輩は聞こえなかったみたいでそのまま行ってしまったが俺はなんとなく気になって聞いてみる事にした

「何がですか?」

「え・・・ああ。口に出してたか俺?

 まぁいい。だが、ふふふ君には分かるまいよ、渡利君。これは機密事項だからな」

「いやそこまで言ったんなら言ってくださいよ、気になるじゃないですか。」

「しょうがないな、今日の遥凪は実はなノーブラだった。つまり――――









 俺の緊縛プレイを御所望だったって事だなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」


329 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:30:00.88 3scIjqpl0

「あなたに聞いた俺が馬鹿でした」

そう思ったときだった、背中に氷よりも冷たい感触を感じて・・・・!!!



これから見舞いに行くのだろうか?遥凪の妹の由紀ちゃんが手荷物を持って立っていた、天使のような悪魔の笑顔で。

「その話、詳しく聞かせていただけませんか?」

「や、やぁ由紀ちゃん。いや、なんでもないよ、ただちょっと渡利が性についてのゆとり教育をd――――」

篤志先輩が顔面蒼白で言い訳しているところだった。一瞬のことで俺は何が起きたのか分からなかった。

ただ、今起きていることをありのままに話すなら

(省略されました・・全てを読むにはここを押してください)



332 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:36:00.31 3scIjqpl0

「渡利さん、あなたは何も見ませんでしたよね?」

由紀ちゃんが笑顔で話しかけて来た。その目の前にはぼろ雑巾のようになった篤志先輩が・・・。

「え、あ、はい。何も見ませんでした。」

すぐに由紀ちゃんの真意を読み取り素早く対応する。

「それでは。」

由紀ちゃんは笑顔のままスタスタと病院に行ってしまった。

姿が見えなくなってから、俺はまだ目の前に横たわる篤志先輩をつんつんしてみた。

        • 反応がない。ただのしかばねのようだ。

「さて、今日の冒険は終わりだな、帰るか。俺は何も見なかった。」


夕日が・・・まぶしかった。


335 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:41:39.17 3scIjqpl0

「ん・・・」

起きると一疾が見下ろしていた。

「てめ、気が付いてて途中で逃げやがったな」

「さてな、ネタに必死なお前を見たかっただけかもしれない。

 どっちにしろあのご令嬢には俺はもう関わりたくない。一度酷い目にあってるからな」

しれっと言ってのけやがる。

「なお悪いわ。ったく、すぐごまかしたり逃げたりやがって。」

「それはお前だろ?」

「あ?」

「今日遥凪のところにいって良かった本当の理由。」

「ああ、そんなことか・・・そりゃ気が付くだろうよあいつがかなりショックを受けてるこ事くらい。全然いつもと違うんだぜ

 ちょっと良く見てれば安心したくてもできねぇよ。」


336 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:48:32.52 3scIjqpl0

一疾は「そうか」と呟くとどこか遠くの方へ目をやった。俺はそのまま続ける。

「それにな、遥凪の性格上絶対無理するだろ?そこでへばってる時に渡利投入して新たな恋に発展させる作戦ですよ」

「なるほどな。・・・ところでお前はいいのか?」

いつもより声のトーンが低くまる。突然の質問。

「は?なんで俺?」

「いや、それだけしっかり見てる奴なら俺はお前が恋人になってもいいんじゃないかと思ってな。

 何も不満はないだろう?顔も好みの感じに近いよな、遥凪は性格だって悪くない。

 あいつだって支えが必要なんだろ?

「はは、何馬鹿なこといってy―――」

「またいなくなっちまうのが怖いのか?悠奈みたいに」


337 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/06(水) 00:50:15.53 3scIjqpl0

「・・・!!」

降りた沈黙を搾り出す声で破る。

「・・・そんなんじゃ・・・ねぇよ」

「そうか」

一疾は再び短く返事をして俺から顔を逸らした。

「とりあえず蘇生はすんだみたいだから俺は帰るぞ。まぁせいぜい悩め。」

そう最後の方は冗談っぽくごまかしながら去って行った。

「・・・。」

俺は何も言えずに奴を見送ることしか出来なかった。

「チッ、こんな時に嫌な事思い出させてくれるぜ。」

吐き捨てた言葉は夏の夕闇に解けて、心に残ったわだかまりは霧散しなかった・・・。



397 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:19:38.42 rGUcg8Yk0
今の所のメイン

一ノ瀬 遥凪(ハルナ)
高校1年バスケ部所属。部活中に非童貞でもあるにもかかわらず女体化してしまった主人公。

潮崎 渡利(渡利)
高校1年バスケ部所属。遥凪の中学からの親友。

桐原 篤志(アツシ)
高校2年バスケ部所属。遥凪たちの先輩でSMネタからシリアスまで様々担当。

永井 一疾(イチハヤ)
高校2年バスケ部所属。遥凪たちの先輩で頼りになる人。

一ノ瀬 由紀(ユキ)
中学3年。遥凪の妹。二面性あり。篤志&一疾が唯一恐れる危険人物。根は良い子。

以下微妙な人物達

霧島 幸谷(コーヤ)
高校1年バスケ部所属。序章にほんのり登場。今のところ用なし。

一ノ瀬 之子(ユキコ)
遥凪の母。序章での伏線に誰も気付いてくれなかった悲しい人物。

悠奈(ユウナ)
篤志の元恋人。現在どうなっているかは後々本編で語られるだろう。

沙夜(サヨ)
遥凪の元恋人+「初めての人」。由紀の話にほんのり登場。詳細不明。



401 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:26:43.76 rGUcg8Yk0

では本編。たぶん今日で1章完結。

――――再び水無総合病院・遥凪の個室

夜の帳が下りた窓の外には霞んで見える小さな星屑がポツリポツリとわびしく並んでいるだけだった。

ずーと自分が女になった事実だけが頭の思考を遮っていて、自分が自分でないような錯覚に襲われるそうになる。

――――これからどうしよう・・・。

遥凪を悩ます一番のことはやはりバスケだった。

――――もう皆と一緒には出来ないんだよな。

そのことがどうしようもなく悲しくて・・・。


403 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:29:19.21 rGUcg8Yk0

小学校4年生の頃から始めた部活でバスケをやってきた遥凪にとって、もはやバスケは日常の一部になっていた。

中二の時に引越しして新しいバスケ部で渡利と出会った。それ以来ずっと一緒につるんできて

そして新しく入る高校も関東屈指の強豪高で、学業にも力を入れている地元の有名校に二人そろって迷わずに決めた。

受験も明確な目標の定まる二人にはさほどの障害にはならなかった。

そうして入った高校でも夏に不運の負けを喫した3年の先輩達の引退後は二人ともレギュラーの地位を確立していた。

レギュラーになった夏からは遥凪と渡利の実力に気付いていた一疾によって、くたくたになるまで自主練習を積まされた。

その帰り道に篤志先輩や幸谷(コーヤ)とわいわい騒いで買い食いしたり、ボーリングやカラオケに行ったり・・・。

そんな当たり前のように過ごしてきた日常がもう戻りはしなくて・・・。

バッシュのキール音がだけでその場所がわかった渡利との連携プレイ。もう二度とあの頃のようにコートに立つことはできない。


405 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:33:12.17 rGUcg8Yk0

――――きっついな・・・。

胸が掴れたように痛む。別にバスケで食っていこうなんて考えたこともないけれど、やっぱりバスケは自分にとって大きな存在で。

      • まるで心の中心に風穴が開いてしまったような空虚感に囚われる。

「そんなこと考えたってしょうがないんだけどな・・・」

どうしようもないのに・・・、うっすらと眼に涙がにじんでいた。

そんな時だった。

「・・・った。・・・い?・・るなの・・やって」

扉の向こう側から聞き覚えのある声が聞こえてきたので慌てて眼に浮かんだ涙を拭いた。

――――誰だろ?もうすぐ面会時間が終了するのに。


406 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:36:32.57 rGUcg8Yk0

「失礼しまーす」

控えめな声とともに二人の女子が入ってきた。

同じクラスで女子バスケの遊び友達、よく一緒にカラオケに行ったりする千秋と立夏(リッカ)だ。

千秋は落ち着きのある性格でなんとなく和風な感じのする女の子で長い黒髪を後ろで縛っている。

身長は160cmを越えていて1年生でレギュラーを務めている。ちなみに一疾先輩と付き合ってるようだ。

立夏はおっとりとした子でレギュラーではないがいつも真面目に練習している。中2の時からの知り合いで

今年は千秋とともに同じクラス。物腰が柔らかくてクラス全体の好感度も高い愛されキャラだ。

二人とも、校内で可愛い子を挙げろとかの男子の話題では良く聞く名前である。

「え、っと遥凪君・・・だよね?」

千秋が少し不安そうに尋ねてくる。

「もう”君”じゃないけどね。」

私はさっきまでの気持ちを悟られないように出来るだけ明るく答えた。


407 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:39:17.75 rGUcg8Yk0

「あ~良かった。間違ってたらどうしようかと思ったよ~。」

立夏がホッと胸を撫で下ろす。

「っぷ」

「あ、非道~い、今笑ったでしょ。しょうがないじゃん、全然別人だもん」

「いや、ごめんね。だけど渡利が入ってきた時とほとんど同じ事言うからさ、なんか可笑しくって。」

ここは素直に笑ってしまった。意外と似たもの同士なのかもしれない。

「ん~それにしても綺麗になったね。”遥凪君”じゃ変だから、これからはなんて呼べばいいの?」

「じゃあ普通に呼び捨てにして。私も今まで通り千秋と立夏って呼ぶし。」

「「あ・・・。」」

なぜか千秋と立夏が二人して顔を見合わせている。

「ん?どうかした?」

「いやなんかさ、自然に”私”って言ってるから。普通男の子が女になった時って最初は言葉使いに

 違和感があるじゃん。さっきから話してても全然そういう違和感がないから驚いちゃって。」

千秋が不思議そうに説明する。


408 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:45:06.14 rGUcg8Yk0

「ああ、それはね・・・」

私はさっき由紀が来たことと父親のことを話した。

「あははは、なんか大変だね。まだ女の子になったばっかりなのに。」

「ホントにだよー。」

私は大げさにため息をついてみせた。

「でもこう言っちゃ悪いけど、うちは安心したよ。遥凪が突然女になったになったって男子が騒いでたから

 心配して来たんだけど思ったよりも元気みたいだし。」

――――こうやって色んなとこに気が使えるのも千秋の魅力だよな。

「ありがと、わざわざ来てくれて。」

「いえいえ、どういたしまして。ところで遥凪部活どうする?遥凪なら女子バスケは大歓迎なんだけど。

 本当はもう少し後になってからにした方がいいのかもしれないけど、逆に今まで通りバスケやってた方が気がまぎれるかも

 しれないよ。」

「そっか、女子バスケがあった!」

思わず私は叫んでいた。そういえば渡利達とのことばかり考えて女子バスケの事を忘れていた。

おかげで千秋を驚かせてしまった。



409 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:47:02.64 rGUcg8Yk0

「びっくりした。どうしたの急に?」

「いや、実はもう渡利達とはバスケ出来ないなって真剣に落ち込んでたの。良かったー今日千秋達が来てくれて。

 これからどうしようとか漠然とし過ぎてて不安だったんだ。」

「うん、そうだよね~。やっぱり女の子になるって現実に目の前にすると不安でしょうがないよね」

そういう千秋の顔はどこか懐かしむようだった。もしかしたら千秋は前にも不本意に女体化した友人がいたのかもしれない。

「じゃあ部活も同じになることだし改めてよろしくね、遥凪。」

「ん、こちらこそよろしく~。早くレギュラーになれるように頑張るよ。」

「ほら立夏も。」

「え?ああ、ごめん。何?」

なにやら考え込んでいたらしいく先ほどから会話に参加していなかった立夏は慌てて謝る。

「どうしたの立夏、ぼうっとしちゃって。」

「いや、あの・・・えっと何でもないって言うか・・・。ただちょっと遥凪君が女の子になっちゃったんだなぁって。

 あの・・・分かってたんだけどなんか実感なくて・・。あはは、何言ってんだろ私。自分でも良くわかんないや」

立夏はしゃべっている途中で混乱してしまって恥ずかしそうな表情をしていた。


410 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:49:51.07 rGUcg8Yk0

「立夏、私バスケ続けることにしたから。これからもよろしくね。」

「あ、うん。お互い頑張ろうね」

「よし。じゃあ遥凪の入部も決まったことだし、私達は帰るとしますか。行こう立夏。」

「うん。じゃあね遥凪。」

出ていく二人を見送りながら明日からの日常に胸が膨らむばかりだった。

      • 自分の体がどうなってしまったのかという自覚もなくて。どんなことが待っているのかも気付かずに。

そして立夏の気持ちも・・・。


412 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:53:05.35 rGUcg8Yk0

         ※         ※


――――しかし遥凪マジで可愛くなってたな。

渡利は今日の病院で見た遥凪のことを思い返していた。

もともと遥凪は顔は特に不細工でもなく、むしろ女子に好感をもたれる顔立ちだった。

女体化すると一般に顔が汚い方が、より美人になるって言われているけど、今まで見たトランスの中で

間違いなく遥凪は贔屓目に見なくても美形だった。

――――なんかあいつだから突然変異とかっぽくてやだな。そもそも遥凪は童貞じゃないし。

笑った顔も、起こった顔も、眉根を寄せて不思議そうにしてる顔も、

        • そして顔を背けた刹那に浮かぶ悲しそうな顔も。

――――自分が女になるなんて事を考えもせずになったもんだからな・・・。

だからこそ見えてくる自分の役目。支えてやらねばいけない、友達として・・・いや親友として。

そう決意した。はずなのに・・・


413 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 00:56:29.26 rGUcg8Yk0

家に帰ってからずっと遥凪の表情が頭から離れない。「あはは」と笑った表情が瞼に灼きついて

高鳴る鼓動が蘇る。

――――だけど実際あいつは何でもうまくこなせちゃう気もするんだよな。俺達が何にもしなくたって。

中2の時転校してきたあいつとバスケしてる時、天才っているんだなって思ったことが強く印象に残ってる。

初めて入ってきた時は他の2年の部員より少しうまい程度だった。当時3年を退けて唯一2年の

レギュラーだった渡利に比べ、遥凪は技術力には明らかに劣っていた。

入ってすぐ遥凪は渡利の所へ質問に行った。「効率のいい練習方法とお前が読んでるバスケの雑誌を貸してくれないか?」とだけ。

一応今の3年が卒業したら遥凪はレギュラー確定だろうから渡利は将来の事も考え練習で意識している事とコツ、

そして今まで読んで溜め込んでいた雑誌を貸してやった。


414 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 01:02:51.42 rGUcg8Yk0

普段の練習には必ずまじめに来る遥凪だったが決して渡利みたいに居残ってまで練習することはなかった。

だが渡利にその質問をしてからすぐに遥凪がうまくなっていることに気が付いた。

そして3ヶ月ほどが過ぎた時、ちょうど夏の全国大会に続く予選のレギュラーメンバーに遥凪は選ばれていた。

もはや遥凪の実力は誰が見ても3年の同ポジションの人を凌駕していた。

そして試合。今までは地区を突破できるか出来ないかのチームだった俺達は、一気に県のトップチーム3校に

敵いはせずとも追随するほどになった。

司令塔の遥凪の3ポイントシュートは全体で6割近くの成功率を誇り、的確で無駄の少ないパス回しとその戦略が

いっそう遥凪のカリスマ性を引き出していた。

それに連られて一斉に他の部員も練習するようになり、気が付けばみんなあいつに付いて行った。

翌年の夏の全国大会予選ではついに県で準優勝した。

いつでも自信に満ちている天才肌っていうのが遥凪のみんなの共通のイメージだった。


415 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 01:05:39.72 rGUcg8Yk0

だから、今度もすぐに順応してあいつはまた何事もなかったかのように現実を受け入れて楽しんでしまうような気がした。

別に俺らが心配なんかしなくたって。

だから逆に女の子としてあいつを見てやった方が良いんじゃないかなんて・・・。

だって、やっぱり遥凪は可愛いし、性格も長年付き合ってるがすごい良い奴だった。

それにトランスだからこそジェニューイン(ここでは元からの女性を指す)にはない男に対する共感もあるだろう。

遥凪だって一応女なんだし俺だって好きになってもおかしくはない。

――――だけどそれは俺のエゴか・・・?

俺はただ悩むばかりだった。


416 名前:風見鶏の向く方へ ◆IGfK3fyxFE 投稿日:2006/09/10(日) 01:07:17.55 rGUcg8Yk0

そうして相手のことを考えれば考える程、本人の気付かぬ内に想いは募る。望むとも望まずとも。

やがてそれは相手を美化してひとつの衝動を生み出す。

ただただ真っ直ぐに、愛しい、という衝動を。

相手と長くいればいるほど、想い出は共有されて熟成する。悲しくともうれしくとも。

それはやがて想いは重なり一陣の風を生み出す。

ただただ真っ直ぐに、想い人、へと吹く風を。


物語はまだ風は吹き始めたばかり。

今はただ進めば良い、風が吹くその方向へ。

風見鶏の向く方へ。

                         ――――第1章・完――――
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