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あき AYA ◆zh2yobq4zs

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860 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 00:58:12.87 oXzMkwsG0

(*´・ω・`)ノ 突然ですが次のストーリーです。
テンション高めに行きたいと思っとります。

「親父。やっぱり俺、変わる事になりそう」
 晩酌中の親父に、俺は思い切って話しかけた。
 俺の16歳の誕生日が、1週間前に迫った今日。
「…分かった。大丈夫、お前の好きなようにしていいんだから」
 飲みかけてた焼酎グラスを一旦置いて、親父が返答する。
「じゃ…」
 俺はリビングを出る。途中でお袋が見てた気がしたけど、
そのまま部屋に戻った。

 俺の部屋は、典型的なオタク部屋。
 本棚には、商業誌と同人誌とエロゲがびっしり。
 パソコン周りはとうにあふれて、フィギュアが所狭しと並ぶ。
 2次元イラストの書かれたポスターは天上にも貼られ、
 エロ抱き枕がベットに横たわる。

 俺はドアを閉めると、パソコン画面と向き合い、とある
スレに向かった。

『【まっすぐ】童貞のまま誕生日を迎える奴・106【女体化】』

カチッ。

 そしてコメント入力欄に1行書き込んだ。
『あと1週間で、女体化する俺が通りますよ』

それに対して『仲間ktkr!』『スペックうp!』のレスが付く。


862 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 01:02:54.66 oXzMkwsG0

「秋則(あきのり)。ちょっと座れ」
親父が俺の名をフルネームで呼ぶことなんて珍しい。
俺は、親父の前に座った。
「母さんも、来てくれないか」
「うん…でも、ちょっと待ってぇ」
 しかし、ちょっと待ってもなかなか台所から出て来ないので、
いびれを切らした親父が、話しを始めた。
「お前、まだ童貞なのか?」
 待てw単刀直入すぎwwwお袋がその場に居なくて良かったww
 そう思いながら「うん…」と後味の悪い返事をする。
 そこにお袋が登場した。
「あなた、あきは何ですって?まだ童貞だった?」
 ちょwwwお袋空気嫁www
「まぁ、俺達夫婦は、あきが選ぶ道なら、男だろうが女だろうが
どちらでもいいと思ってる」
 昔から一般の人が引くような内容でも、すんなり容認していた
両親だけど、ちょっと心が広くないっすか?
「でも俺、長男だし、一人っ子だぜ。いいの?」
 念の為に確認する。
 そこに意外な一言が登場した。
「あのねあき。実は母さん、元男だったの」

それなんてエロゲ!? …いや、エロゲでもそんな展開いらねぇww


863 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 01:04:52.12 oXzMkwsG0

「で、でも、親父は…?」
 親父は知ってて結婚したの。そこまで言えなかったけど、
なんとなく言いたかった事を分かってくれたようだ。
「母さんの過去を知っていたが、このまま受け止める気持ちで
いっぱいだった」
「だってお父さん。プロポーズでは
 『元男だって構わない!俺と付き合ってくれ!結婚してくれ!』
 だったもの」
 ちょっと待て。お付き合いキャンセル結婚だったの!?
「あの時は若かったなぁ」
 そういう問題じゃないだろ、そう言いたくても声が出ない。
「だから、好きな方に進んでくれていいんだ」
 …なんだか腑に落ちないんだが、俺の好きなように決断して
いいことは分かった。
「あきは、可愛いお洋服とか好き?」
 唐突にお袋が聞いてくる。
「…嫌いじゃ、無いかな」
「やっぱり!お部屋に女の子の絵が一杯あると思ったのよ。
 それじゃぁ女の子になったら、可愛い服、新調しましょうね」
 待て。いっつもその天然振りには戸惑っていたが、それはねぇよ。
 と言うか、お袋。男の時は、どの位頼りなかったんだ?

 そして1週間、一応悩んだんだが、ここで童貞捨てても、
その語女性と出会う可能性が少ないと感じた。
 だから、俺は女になる事を受け入れることにした。


864 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 01:06:07.94 oXzMkwsG0

誕生日の朝。だるさを覚えながら、睡眠から醒める。
さて、俺の顔はどうなったかな。
デブが病弱と思われる程やせてるとは思ってない。
でも、可愛くなっていて欲しい。

 一昨日、お袋が「女の子なら、全身見れる鏡は必要!」と
購入してきた姿見に映った自分を見て、朝だと言うのに、
ものすごい声を上げそうになった。

 誰だお前!?
 贅肉はほとんど取れ、ほんのりぽっちゃりとした容姿。
元々長めだった髪の毛は腰ぐらいまでのストレートに。
色を染める…なんて事はしなかったので、純粋な黒髪だ。
瞳も大きくなっていて、ちょっとぽちゃっとした唇が、
女らしさを表現していた。

 すげぇ!コレが俺!?
 思わず顔を引っ張るが、鏡の中の少女も同じしぐさをしていた。
 間違いなかった。

 慌ててあのスレに書き込む。
『秋◆/c1cQbsgqU
 以前のブサメンです。てか、すげぇ美人になってた!』
 朝だと言うのにすぐレスが付く。
『mjd!容姿どんな感じ!?』
 そこで、今感じた事を書き連ねる。

『すげぇ!!うp!うp!』
『だから、うpは勘弁wwwww』
 スレから離れると、俺はリビングに向かった。

926 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 11:00:14.43 ZnQ/x4bq0

 今日は、女体化する事がほぼ確定だったので、事前に学校には
休む旨を連絡していた。
「…お早う…」
 女体化後、始めて発した声は、ちょっと高めの女の声だった。
 一応ドキドキしながら、お袋に声をかける。
「おは…あき!あきなの!?わぁ!あき、超可愛い!」
 杞憂だった。
「残念ね、お父さんはもう会社に行っちゃったもの…。
 そうだ!メールしよ!」
 身体全体がだるい俺は、いつも以上に高いお袋のテンションに
付いていけないまま、携帯で撮られて、その写真は、仕事中の
親父へと送信されたのだった。
「体調はどう?今日はお休みだから、ゆっくりしてていいのよ」
 女体化経験済みだからか、お袋は俺の身体を気遣ってくれる。
 ご飯もお粥で、どこか疲れていた身体に染み渡るようだった。

「じゃ、部屋に戻るわ」
「何かあったら呼んでね。あと、今日の晩ご飯は期待してて!
 大丈夫。朝は女体化で疲れてるけど、夜にはお腹が減るのよ」
 嫌な理解度だな…と思いつつ、分かった、と答え、部屋に戻った。


927 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 11:01:56.54 ZnQ/x4bq0

 ドアを閉める。
 女体化して、気に入らなくなったら、売ればいいんだ。
 そう思って、二次元系グッズはそのままだった。
 ちょっと疲れたので、ベットで横になる。傍にはエロ抱き枕。
数ヶ月前にはまったキャラで、衝動買いしたやつだ。
 以外に抱き心地が良かったので、そのまま置きっぱなしだった。

 やっぱ、可愛いわwwwww

 三つ子の魂、なんとやら。俺の性格は、女体化しても変わらない
ようだ。フィギィアも、それぞれ女の子が可愛いポーズを取って、
いつもと同じ方向を向いている。

 ポーズ…。

 姿見…。

 なんか、テンション上がってきた!これなんかいけそうじゃね?

 一つフィギュアを手にして、姿見の前に移動する。
 それを机に置き、見ながら、足を肩幅に開いて少し内股に、ちょっと
前かがみになり、左手は腰に、右手は人差し指を立てて顔の横に。
 そして。顔は姿見へ…。顔を移動した瞬間、髪の毛がふわりと、
動きに釣られて移動する。

 ちょwww3次元に萌えたwwwww

 ていうか、コレ俺wwwww俺バカスwwwww


928 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 11:03:31.46 ZnQ/x4bq0

 でも、可愛いと思ったのは事実。ただ、惜しむべきは服装だ。
 いつものダサいパジャマのままだ。

 服いらねぇなぁ…じゃ、脱いで…みた…り?

 い、いや。やましい事は無い。自分の身体なんだ!
 そうだよ、今までと違うんだから、ちゃんと、分かってなければ!!

 一つ一つ、パジャマの前ボタンを外す。なんか緊張するな…。
 ちらっと鏡を見たら、上目づかいの女の子が、ちょっと小さくなって
パジャマのボタンを外していた。
 やべ、また萌えた。とりあえず前ボタンを外し終わる。下には何も
着ていないから、服の間から、今まで直射日光を浴びる事の少なかった
白い肌が見えた。けれど、これまでと違う、きめ細かい感じがする。
 俺は、目をつぶって、勢い良く上を脱いだ。
 ゆっくり目を開く。
 そこには小ぶりな胸の、ちょっと顔を赤らめた少女がいた!!
 ってだから、少女は俺なんだってば!!!

 こ、これは混乱するな。男の時の思いがまだ残ってるのか?
 この様子は、確実におかずに出来ると、断言出来る。


929 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/08(金) 11:04:50.20 ZnQ/x4bq0

「あ、あははは…」
 思わず、乾いた笑い声が出てしまった。
 こうなったら!えぇい!…と、勢いで下も脱ぐ!
 勢いありすぎて、パンツまで脱いでた。足元に服が落ちる。
 うわー。無いんだー。
 見た感想はこれだった。これしか思えなかった、と言うのもある。

 この足元にパジャマがある状態、エロ画像なら萌えそうだが、
いかんせん、男のパンツまで見えるのが萎える。
 足をパジャマから抜き、足で端に追いやる。

 これで俺は、一糸まとわぬ状態になったわけだ。

 改めて見た鏡の前の少女は、完全に顔を赤らめていた。


176 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 02:48:28.48 6sRq8R830

 さて。全裸になった俺は、さっきと同じポーズをとる気は失せていた。
裸でやるにはバカらしい、という事に気付いたのだ。
 風邪引く前に、服を着よう。
 でも、まだ自分の身体だと言う認識が薄いからか、ダサいパジャマを
着させるのが…なんとなくかわいそうな気がしてきた。
 タンスを開け、数少ない中でも、まだ良さそう服を探す。
 ふと振り向くと、姿見に少女の白いお尻が映ってた。
 だから、それ俺(ry

 性別が変わっただけなのに、なんでこんなに見方が変わるのか。
 男の尻は見たくないし。そういう性癖のある人は違うと思うけどさ。
 服を決めた俺はタンスを閉め、ベットに上がるとそんな事を考えていた。
 ベットの上で、なんとなく女の子座りしてみる。…男だったらキモくて
殴り倒してるよな。可愛いは卑怯だな。
 俺の胸はそんなに大きくないけど、掴む事が出来るぐらいはあった。
 昨日までは男の贅肉で掴めたけど、さわり心地が違う。手に吸い付く、
そして弾力感が気持ちいい。
 乳首だって、可愛いよな…。
 思わずつまんでみる。始めはなんとも思ってなかったけど、触って
いるうちに、なんか、こう、むずむずするような気持ちになってきた。
 自分の身体で女性の身体体験するなんて変な話だけども、こう指を
動かしてると、だんだん身体が変化してくのが分かる。
 あ。エロゲとかの「乳首が立ってくる」ってこういう事か。
 …と言う事は…。


177 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 02:51:16.38 6sRq8R830

 興味しかもう頭にない。
 ゆっくりと、右手は胸を離れ、お腹の下へと向かわせる。それに合わせて
ゆっくりと、両足が外へと離れていく。
 右足と左足の付け根辺りまで動いて、手が止まる。
 …確か。この辺りに豆状のがあるはず…。
 そろそろと、指が降下する。不意に柔らかいものに触れ、一瞬びくっと
身体が動いた。それでも、そのまま押し進むと割れた部分に当たった。
 鼓動が早いのが分かる。未知の世界に入り込んだような気分がする。
 ふぅっと息を吐き出すと、俺はそのまま指を進めた。
 どこだろ…そう思った次の瞬間。
「ふあっ!」
 びっくりするほどの感覚が全身を襲った。何が起こったのか分からなかった。
ドキドキするのが止まらない。
 今のがクリトリスなんだ…。一度唾を飲み込むと、衝撃ではじかれるように
股を離れた俺の右手を、また元の位置へと向かわせた。

「ん…んんっ…」
 ちょんちょんと突付いただけなのに声が出てしまう。
 この緊張感と衝撃に、完全に酔っていた。
 …そうだ、確かすべりを良くすると気持ちいいんだっけ?
 すべてはエロゲの知識だけ。本当にいいのか分からないけど、迷わず
クリトリスの奥へと指を進める。
「あ…」
 思わず声が漏れた。俺、すごい濡れてる。
 ガマン汁が出てる感じと一緒なのかな。すごくぬるぬるしている。
 ちょっとだけ。すくうように指を動かして、さっきの位置まで戻り、
そして…。
「…んぁ…やっ」
 さっきとは違う、もっとじらすような感覚。でも、これはこれで、いいかも。


179 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 02:53:33.62 6sRq8R830

「…ふぐっ…ん…んっ…」
 どうしても声が出てしまうから、俺は左手で掛け布団を取ると、端を
口に半ば押し込むようにして咥えた。
 終わるとすぐ、右手の動きを再開させる。もうゆっくりなんてスピード
ではない。何回擦っただろう。その度に声を上げてる。
 左手は、敷布団をぎゅっと掴んでいたのだが、気が付くと胸を掴み直して
いた。しだいに左胸をまさぐるように動き始める。
 もうダメ、もうそろそろおかしくなりそう…感覚から逃げたいのか、
ちょっとのけぞったその瞬間、姿見の少女と目が合った。
 うわぁ、俺…俺、なんて顔して、なんて格好で、なんて動きを…。
 さっきまで恥らってた少女とは思えない、とろけた表情で、人には
見せられない格好をしている画を見て、さらに身体が熱を帯びた。
 こんな格好って、何かの画像で見た気が…と、熱を持った全身と、
止まらない手だけを感じている思考をよぎる。
「ん、んんーっ!!!」
 急に泣きそうな気分になった瞬間、全身をぐっと突き抜ける感覚が
襲った。
「はぁ…はぁ…」
 口から布団を放す。両手はまだ同じ位置にあるけど、もう動いていない。
 幾度か呼吸を繰り返すと、だんだん気分が落ち着いてきた。


180 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 02:56:25.10 6sRq8R830

 …汗かいてる。風呂入った方がいいかも…。
 全身、汗まみれな事に気付いた。右手には汗以外の分泌物も絡んでいる。
ぬちゃっとした液体を、ベット傍らのティッシュでふき取った。
 咥えていた布団の端は、元より濃い色に変わっている。
 とりあえず今朝まで着てたパジャマを着て、風呂場に行く事にしよう。

 ベットから立ち上がる。
 急に、ひやっとした感触を受けた。
 見ると、座っていた位置は、自分から出た液で、布団の一部を変色
させてしまっていた。

 なんだか急に、悪い事したような気分に襲われた。
 またティッシュを取ると、変色した部分をいくどか擦る。取れるわけ
じゃない、でも…。
 急にぶるっと震えが全身を襲った。まだ全裸のままだ。
 仕方がないので、その部分には数枚ティッシュを重ねると、急いで
端に投げたパジャマへと向かった。
 途中。姿見を通った時、横目で見ると、髪は乱れ、まだ軽く顔を上気
させている少女が過ぎ去るのが見えた。


25 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/11(月) 00:48:31.01 /nxv7vcq0

「き、着てみよぅ…」
 いそいそと試着を開始する。うるんはサブキャラな上、お助けキャラの
位置付けだけど、どじっ娘の設定。
 アニメ自体は始まる前、全体的にベタな設定に不評の嵐だったが、映像の
質が良かった事、それより内容が想像以上に面白く、はまる人が続出。
俺もその一人だった。
 衣装は、袖部分にフリルの付いてるエプロンだが、その中は股下ぐらいの
浴衣風。濃い紅色に梅の花が散っており、裾にはレースが付いている。
 そして黒ニーソに赤い鼻緒の下駄、おまけにネコ耳。ロングの黒髪。
 小道具は漆塗りのお盆。うるんちゃんはそこから召還する、召還系魔法
使いだ。届いたお盆は、明らかに合成漆だけど。
「おぉぉ…」
 なんとも女の子とは思えない声が出てしまったが、イラストもいいけど
立体の衣装もなかなか。
 自分も黒髪なので、イメージには遠くないと思うんだけど…。
「思い切って、行っちゃおうかな…」
 付けっぱなしのPC画面を見る。そこに記載されている日時は来週日曜日。
 小さめの、アニメコスプレイベントのお知らせサイト…。
 もし。もし衣装を着た自分の姿が悪くなかったら参加しようと、数日前から
チェックしていたサイトだった。

250 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 15:29:57.93 nK1uVWiC0

 あの後。やっぱり風邪引いた。
 寝汗かいた、と言って風呂に入ったが、どうにも調子がおかしい。晩
ご飯は食べられたが、翌日から熱が出てしまい、朦朧とした2、3日を
過ごすはめとなった。
 その為、学校は久し振りの登校となってしまった。
「…お袋。スカートって、すごく、その、スースーすると言うか…」
 朝食を取りながら、俺は思わずこぼす。とは言え、ズボンを穿けるわけ
では無いから、これを逃れる手はなく、俺が慣れるしかない。
「結構すぐに慣れるわよ。…あ、それじゃ、ストッキング穿いていく?」
 ちょwww難易度上がったwww
「い、いや。ソックスでいい。…それじゃ、行ってくる」
「気を付けてね~」
 足取りも重く、俺は学校に向かった。

 ネット上では突撃に加わったりする俺だけど、学校では話す相手も少なく、
日ごろ対応しない相手から声を掛けられると緊張して、おどおどした感じに
なってしまうほどだ。
 だから、始業ギリギリに登校して、放課後はすぐに帰る毎日だった。
 今日もいつも通りの時間に登校する。登校してる人もまばらなので、
その間の緊張感は軽いものだったが、教室が見えてくるに連れて心拍数は
上がる一方だった。


251 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 15:31:57.54 nK1uVWiC0

 これまで、虐められてた訳じゃないけど、あまり評判が良くなかったのは
事実だ。まして久し振りの登校だ。
 ガラ…ガラガラ…
 教室のドアを、ゆっくりを開ける。教室内ではほとんどが、友達同士の
おしゃべりで夢中になっていた。
 い、今のうちに席に…。
「あれ?あの子、誰?」
 全校の女の子チェックは欠かさない、と豪語している奴に見つかって
しまった。教室中が静まり、そいつの指差す方、つまり俺を凝視している。
「あ、あの…」
 どうしていいのか分からないでいると、先生が入ってきた。
「今日はやけに静かだな…ん?…あぁ、前原か。ほらみんな席に着け」
「えーっ!?あの前原!?」
「デブあき!?」
 先生の言葉に、教室中が騒然となる。噂で聞いてた、俺の裏でのあだ名まで、
平然と飛び出していた。
「いい加減にしろ!!」
 先生の一言で、一瞬静まり返る。そして皆、慌てて自分の席に移動したが、
席についた後でも、あちこちでひそひそ話しが聞こえる。
 皆の移動に、まぎれるようにして自分の席に着いたのだが、居心地は
これまで一番悪かった。何言われてるんだろ。もう帰りたい。
 授業中も身に入らず、とにかく黒板の文字を写し取りはしていたが、
書く事がなくなった時は下を向いていた。


252 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 15:33:45.43 nK1uVWiC0

 1時間目が終わってしまった。先生が教室を出て行く。
 唯一の頼りが無くなる事に気づき、クラスの皆から逃れる気持ちで一杯に
なった俺は、先生が出てくと同時に、席を立った。ら。
「前原~!超可愛いじゃん!!」
 何故かクラスの女の子に囲まれた。机に手を突いたままぽけっとなる。
「びっくりしたー!女の子に変わって良かったんじゃない?」
「さらさらストレート、うらやましい!!」
 いろいろ言われ、髪を触られ。勢いに押されて、俺は椅子に座り込んだ。
「親もびっくりしてたんじゃない?」
「これだけ可愛いと反則だよね」
 ねーっ…って。これは、いじめられてるのか?
 人に囲まれるなんて慣れてないので、そんな様子をもじもじしながら
見てるしか出来ない俺。
「さっきから話さないけど、声聞かせてよ!」
「あーっ!聞きたい!聞きたい!!」
 何を言えと!でも、この女パワー・勢いは、恐ろしいものを感じる。
「え、えと…」
 戸惑うしかなく。今まで学校でいたように、弱々しい、か細い声が
口からつく。
「うわっ!なんか可愛くない?」
「いつもおどおどしてキモかったけど、美少女になると可愛くなっちゃうん
だねー」
 口々に言われ、今までキモかった、にぐさりと気ながら、なんとなく
好感触を得てるのではないか?と思い始めていた。
 外見がいいと、やっぱり人付き合いにも関わってくるんだな…。
 次の授業始まりの合図に助けられた俺は、ノートを取りながら、そんな事を
考えていた。


253 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 15:35:23.61 nK1uVWiC0

 やっと1日が終わった。
 何故か、他のクラスの女の子もやってきたり、購買にパンを買いに行った時、
押されてよろけた…と思ったら、同じクラスの男に助けられたり。
つい手が出たみたいで「あ、大丈夫?」とだけ言うとすぐ離れたが、人から
自然に触られる事なんて無かったので、なんとも言えない気分に戸惑って
しまった。
 最後の授業が終わると、今まで通り、すぐ帰ろう…としたのだが、また
女の子に囲まれて、気が付くと1時間後の帰宅になっていた。こんなの初めてだ。
「ただいま…」
「遅かったじゃない!心配したのよ!何か問題あった!?」
 疲れ果てて帰宅すると、お袋が玄関に飛んできた。
 リビングの椅子に座ると、とりあえず今日あった事を伝えようとしたのだが、
女の子に囲まれた事しか思い出せなかった。
「そっか!じゃ、特に問題は無かったんだ」
 これが問題無い事なのか…。明日も同じかと思うとぐったりする。
「私は、女の子と仲良くできるのかが心配だったのよ~。
 じゃぁ、晩ご飯にしましょう」
 女の子と仲良く、なったのかなぁ…そんな事をぼーっと考えていた。

 部屋に戻るとベットに倒れこんだ。
 …そうだ。面倒な事に、制服に皺がついちゃうから、脱がないとまずいん
だっけ?
 のそっと起き上がり、着替える事にした。姿見には、疲れた顔の少女がいた。
 この顔…女の子は皆、可愛いって言ってくれてたよな。
 やっぱり、可愛い…んだよな、誰が見ても。


255 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/09(土) 15:38:28.88 nK1uVWiC0

 制服を脱ぎ終わり、部屋着を手に取る。振り向くと、姿見に振り返る
下着姿の少女の後姿が見えた。
 女物の下着は、お袋が俺の休み中に購入してくれ、そして、付け方等の
レクチャーをしてくれた。はっきり言えば、めんどくさいと思った。
 自分も着る物も周囲も、すっかり変わってしまった事を改めて感じ、
服を着ると再び布団に倒れ込んだ。
 また身体を弄繰り回すという気分は、あれから起こってない。思い出すと
ドキドキするけど、最後に感じた罪悪感が胸に引っかかっていた。
 せっかく可愛くなった自分。なんだか大切にしなければいけない、そんな
気持ちが込み上げてきていた。

 と言う事で。自分を生かして、可愛がる事にした。
 ピ~ンポ~ン
「キター!」
 俺しかいない、土曜の午後。チャイムが鳴った。注文していた品が届いた
知らせだ。
 大きめな段ボール箱を受け取る。部屋に戻ると、いそいそと箱を開け始める。
 包みから出てきたのは、欲しかったコスプレ衣装。
 今はまっているアニメ「おまかせ☆マジカル メ・イ・ド」のキャラクター、
うるんの衣装だ。
 フィギュアや等身大ポスターは持ってるのだが、衣装はさすがにまずいと
手が出なかった。だがしかし。今、自分は女なのだ。女が女の衣装を所持して
何が悪い!
 勢いで購入したのだが、冷静になると、届くまで気が気じゃなかったのは
言うまでも無い。
 でも、こうして現物を目の前にすると、そんな不安は吹き飛び
「買ってよかった…」
 と言う心境が、思わず口からこぼれていた。

26 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/11(月) 00:52:11.41 /nxv7vcq0

 女体化した後、しばらくしたら、男から告白されるようになった。主に、
他学年の男からだ。みんな、すれてない感じがいいと言う。すれてない…と
言うより、まだ女の子のテンションには付いていけないだけだ。
 始めは上手く返事が出来なかったけど、5回も続くと
「俺、元男だし…」
と、すらっと吐けるようになった。それを聞くとみんな去っていった。
 その内、”元男”が効かなくなってきた。本当に気に入ったのか、相手して
くれる女がいないからカモにされてるのか分からないけど。
 でもこちらはその気じゃないので、
「…だったら、昔の私の写真。見てみるといいよ」
との、言葉も付け足すようになってきた。
 その言葉を聞いた後、改めて告って来る奴はいなかった。
 今は落ち着いたが、1、2週間に1回ぐらいの間隔に。でもまだ男が寄ってくる
なんて、一体、どれだけ相手がいないんだよ。

 相変わらず女の子は集まってきているが、だいぶ減った。
 返答は余り上達していない。でもちょっとした意思表示は出来るように
なっていた。女の子の好きな雑貨なども、分かる様になってきた。
 そして、何が言いたいのかも分かってくるようになっていた。
 始めはどうも、俺に対して告白してくる奴が多いので、嫉妬や監視から
集まってきてたようだ。全部断ってるけど、図に乗ってるわけではなく、
おどおどしたままのが良かったのか、とげとげしさは薄くなってきている。
 今はほとんど、本当に雑談をしている感じだ。


27 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/11(月) 00:56:01.77 /nxv7vcq0

「ただいまー。母さん、晩飯…」
「ば ん ご は ん」
「…はい。晩ご飯、まだでしょうか」
 言葉遣いなんて、今まで注意された事は無かったのだが、ここの所、注意
される事が多くなった。一人称も『俺』から『私』に変えさせられた。
けれどもつい、雑な言葉は出てしまう。
「それにしても。本当に女の子が身に付いてきたわよね。スカートももう
慣れたでしょ?」
「慣れたと言うか…慣れたのかな」
 始めの頃のように、気恥ずかしさは薄まってきているけど、歩く時に布が
ふわふわする感覚はまだ気になる。
「そう。今週の日曜日、ちょっと出掛ける」
「何かゲームの発売日だっけ?…あ、日曜日だからイベント?」
 理解力ありすぎ。
「ま、まぁ遊び…」
「もう女の子なんだから、遅くなっちゃダメよ」
 コスプレイベントに行くにしても、声を掛ける相手なんて居ない。一人での
参加。状況に耐えられなくなったら、速攻帰ってこようと思っている。
 女の子達と少しずつ話せるようになった事、男に告られた経験。外見の
せいだろうけど、それらの経験は少しずつ気持ちを前向きにさせる影響を
与えている気がしていた。


28 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/11(月) 00:56:52.77 /nxv7vcq0

当日がやってきた。現地に着いたが、どうしていいのかよく分からない。
 にわかのカメラ小僧はした事あるけど、撮られる側は初めて。思わず衣装の
入ったバックを抱きしめる。
「コスプレ参加の方ですか?」
「は、はい」
「ではここに名前等書いて。はい、これが参加証ね」
「は、はい…」
 運良く出会えた係りの人に流されるまま手続きをして、更衣室に入れた。
みんな、思い々々の格好をし、綺麗に、可愛く見えるようにのチェックに
余念が無い。
 俺は隅に移動し、いそいそと着替えを始めたが、開始ギリギリに到着した
為か、どんどん女の子は開場へと移動していた。着替え終わった頃には、
数人しか残っていなかった。

 ドキドキする。なんでだろ、いつもと違う服だからか?
 いや違う。元々インドア、ネット中心の生活してたのに、大勢の中に紛れ
込もうとしているからだ。
「早く出てくれる?」
 簡易の更衣室なので、出入り口は狭い。
「は、はい。ごめんなさい」
 声に押されて、慌てて俺は外へと飛び出した。


29 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/11(月) 00:58:25.94 /nxv7vcq0

 すでに、あちこちで撮影が行われていた。あのアニメ、あのゲーム。
 見たことあるキャラに、元々のオタク魂が萌える、いや燃える。
「あれ?うるんちゃんだ!可愛いね!」
 昔の俺のようなカメラ小僧が近づいてきた。声を掛けられて、思わず
ドキっとして、お盆を抱きしめる。
「おっ!うるんちゃんのイメージそのまま!写真撮らせてよ!」
 違う奴も近づいてきた、のを皮切りに、どんどん集まってくる。
 欲望丸出しの迫力は、かなり怖い。
「ほら!決めポーズ取ってよ!」
「早く!早く!!」
 俺も同じ事言ってました。これまでのレイヤーさん、ごめんなさい。
 そんな事がよぎりながら、逃げようにも足がすくんでいると、声がした。
「あーっ!うるんちゃん、発見!!」
 女の子の声に振り向くと、「おまかせ☆マジカル メ・イ・ド」の主人公
キャラクター、マイと敵役の男・ウッドのレイヤーがいた。
 マイ役の女の子は、その短めメイド衣装が良く似合う人。
 小さいイベントなので、武器の剣も鞘から抜けないならOKだったから、
その小道具を腰両脇にぶら下げて、アニメのイメージ通りの姿だった。
ウッド役も青いタキシード風の衣装で身長もあってかっこいい。昔の俺を
思い出すとげんなりするほど似合っている。
「一緒にポーズ取ろ?」
 早速、側でポーズを取るその女の子。こうなれば、どうにでもなれ!
 調子に乗って、一応家で練習してきたポーズをその横で取る。
 …。非常に多くのカメラ小僧が集まっていた事に、改めて気が付いた。
 カメラのレンズを通して、ものすごいエネルギーを感じる気がする。


30 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/11(月) 01:00:23.45 /nxv7vcq0

「じゃぁ。今度は…こうだっ!」
 その子は大胆にも、俺に抱きついてきた。
「!」
 思わず固まってしまったけど、うるんちゃんは控えめキャラだからか、
それに特に苦情も無く、暫くしたら人はだんだんと居なくなっていった。
 終わってみると、以外に撮られる事が気持ちよかった。

「突然ごめんね!うるんちゃんイメージぴったりなんだもん!」
「あ、ありがとう…」
 屈託の無い笑顔で、楽しそうに話しかけてくるその子を見ていたら、だんだん
緊張も薄まってきていた。
「私は可憐、と言ってもコス用w でこっちが友達の紫苑、同じくコス用ね」
「宜しく」
「はい、宜しく…えと、私は今日が初めてで、コス用の名前とか…」
「あ、初体験だったんだ!これからもやるなら、時々会おうよ!
 これ私のメアド。良かったら連絡頂戴。それまでにコス用の名前決めて
もらっていいし。本名さらすのはちょっと怖いだろうからね」
「ちなみに、さっきの写真撮ってた中に知り合いがいるから、俺にも教えて
くれるなら、データ送るよ」
 自分も見たいけど、マイとウッドのも見たい!
「そ、それじゃ。帰ったらメールします」
「うん!待ってる!!」
 じゃぁ、またね!元気に手を振り去っていく可憐ちゃんに釣られて、
思わず小さく手を振る。もう振り返らないのを確認すると、急に疲れが出て
きたので、もう帰る事にした。


31 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/11(月) 01:01:14.62 /nxv7vcq0

 ぼーっと歩いていたと思う。
「おっ!うるんちゃんじゃん!写真、いい?」
「あ。あ、はい」
 3人の男が近寄ってきた。さっきの雰囲気を思い出し、ちょっとだけなら…と、
思わず了承していた。
「じゃあさ、こっち来ない?いい撮影スポットがあるからさ」
「えっ…」
 人の居る方とは逆…。でも手を引かれる力に負けて、3人に囲まれるように
連れて行かれる。
 不安が込み上げるが、どうしても逃げ出せる雰囲気じゃなかった。
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