「アースストーリー ~恐竜の進化とヒトの未来~」 ナレーション忌野清志郎さんを偲んで


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スタジオには、まるで、生真面目な転校生のような態度で現れた。ほぼ時間通りに気恥ずかしそうな笑みをたたえて現れ、控え目に名乗り、すぐに録音用のブースに入った。

科学館の映像である。しかも、国立の科学館だ。作り手たちの思いはともかくとして、忙しい仕事の合間に「この仕事を受けるか?」と聞かれて、いかにも昔の文部省選定、のような、そんなものを思い浮かべられても仕方がない。オファーを出して、それが受け容れられたと聞いて一同で喜んだが、スタジオで待つ面々は、本当に来るのかなぁ、とどこかで思っていた。反原発を歌い、君が代を、リメイクした彼なのだ。

「アースストーリー ~恐竜の進化とヒトの未来~」は、地球が生みだした多様な生命の進化が恐竜の多様性とヒトの知恵を生み、そして地球温暖化も生みだした、という物語だ。最後に問いかけるのは、僕らは何ができるか、だ。

物議の醸し方から、忌野清志郎さんは、反体制、というレッテルを貼られがちだけど、実際のところどうなんだろうか。「人気のない海で泳いでいたら、原子力発電所が建っていた」とは歌ったが、原子力やめてしまえ、と歌ったわけではない。違う君が代を歌ったのであって、君が代反対の旗を振ったのではない。
大きな権力や、流れや、タブーの前で、「黙る」ことへの抗いがあるのであって、特定の思想や政治的な立場を表明したのではない。反体制、という枠に収まってしまうことをむしろ、拒否している。

教育コンテンツのような仕事だったけれど、彼は受けた。僕ら作り手のメッセージが、一人ひとりの選択による、地球の未来、だったからだ、と僕は信じたい。
ナレーションの収録そのものは、どう見ても、事前に練習してきたようには見えなかったけれど。

僕らが彼にお願いしようと思ったのは、”永遠の少年”というキーワードを、監督と演出の二人が持ち出してきたからだ。正確に言うと、二人は、キーワードと、清志郎さんという候補者をセットで、打ち合わせの場に持ってきた。ひどいやり方だ。そのキーワードで、ほかに誰を推薦しろ、というのだろう。日程をつめたわけでないのに、決め打ち。なんとか、同じキーワードでほかの候補を出そうとする。受けてくれなかったらどうするんだよ、と。長い沈黙の後、「甲本ヒロト」と僕が言った。その後、エンディングテーマ曲となるRemember Youでツインボーカルを務めているなど、その時は知る由もない。

”永遠の少年”って、何だったのだろう。純粋で、可能性にあふれ、未来を自分の力で選択しようとし続ける。無垢なだけに、既成の概念にはまらない、長いものにまかれない、ということにもなるのだろうか。清志郎さんが、そうだったのは、無垢だったからじゃない。考え抜いて、何ものからも独立した。少年のようではあるけれど、彼は少年なんかじゃない。「大人になる」を拒否している本物の大人なんだ。成熟という名前で、既成のものに寄りかかることを拒否している。

Remember Youは、アルバム「GOD」の中から、どれかを選んでいいと言われて監督が選んだ。去ってしまった恋人を歌うラブソングなんだろうけれど、絶滅した恐竜を思う歌のようにも聞いてくれるだろうし、歌詞にはとても重複した解釈をこめられそうだ、と思った。映画の隠れたキーワードの、進化による共生にも、きっとつながる。

公私混同だから、と、ほとんどほかにはしたことがないけれど、この収録のときだけは、アルバム「Memphis」にサインをもらった。はにかむような態度のままで、猫の漫画も添えてくれた。

結局、映画は見てくれたことはないのだろう。
彼の中では、2時間を割いたに過ぎない小さな仕事で忘れてしまったかも知れない。

けれど、僕は、

Remember You

あなたを忘れられそうにはない

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