手あなたの右手は...
イギリスの土地は寒い。まず○○が来て思ったのはそれだった。
○○のところは基本日本と同じような気候なため、わりと暖かい。
だが今目の前はまさかの銀世界。
地面を踏みしめれば雪のせいでシャリシャリという。
なぜ自分はここにいるのだろうか?そう思い、前を歩いているイギリスを見つめた。
たしかあれは数十分前---
「おい。外行くぞ。」
「へ?」
いきなりのイギリスの提案に○○はティーカップの動きを止めた。
久々に遊びにいったと思えばまさかのあの寒い中に出るとは…
「えぇーー・・・・・」
○○が不満げなセリフをいうとイギリスはバツ悪そうに○○を見据えた。
「なんだよ、俺と出かけたくないのかよ…」
「いやそういうワケでは…」
そんな顔しないでよ…と思いながら○○はとりあえずティーカップを置いた。
「じゃあ、さっさと出るぞ。ほら」
イギリスは○○にコートを着させ、ささくさと外へといった。
「ああ…あの眉毛が…」
そう呟き、○○はコートを羽織りイギリスが出て行った外へと向かう。
優しいからきっと、玄関の外で待っててくれているだろうなと思いながら、○○は小さく笑いながら溜息。
イギリスがせっかく淹れてくれたおいしい紅茶は、
もう冷めていたのが心残りではあったが。
……………
あれから数十分、まだ歩くのだろうか…
ただ前を歩くイギリスの後を追いかけるように○○はついていった。
「(本当は隣を歩きたいのにな…)」
歩幅が違うんだから考えてほしい。紳士の国なんだからさぁ…
「なんか、手が痛いような。」
そしたら○○は自分が手袋をしていないことに気づき、両手を見た。
「ありゃりゃ。真っ赤」
そういえばイギリスも手袋をしていない気がして、ふとイギリスの手を見た。
イギリスはポケットに手を突っ込んでいたため寒くはないだろう。
そう思い○○は少しだけ安心して自分の両手に息を吐いた。
「はぁー…」
息は白く、まるで雪が自分の口から出たような感じがした。
すると、
「おい。○○。」
いつの間にかイギリスは○○の目の前に立っていた。
○○は少し驚きながら手をこすっていた。
「どどうしたの?」
イギリスは黙って○○を見下ろし、そしていきなり○○の左手を掴んだ。
「え?」
イギリスは自分の指を○○の指に絡ませて手を繋いだ。
世に言う恋人つなぎだ。
イギリスの温かい右手が○○の左手に伝わっていった。
「冷たいな…お前の手…」
「イギリスは温かいね」
○○はイギリスの手の自分の頬へ押し当てた。
「ありがとう…イギリス」
そういって○○はやんわりと笑った。
イギリスはその顔を見てバッと赤くなった顔をプイッとそらした。
「べっ別にお前のために握ったわけじゃねーからな。ただ俺が握りたかっただけで、というか、
お前のためにずっとポケットに手を入れていたとかそんなんじゃねーぞ。」
「うん。わかってる。」
それでも○○はイギリスの気持ちが伝わったのか、ただ笑って歩き出した。
「それに、お前とこうやって手を繋いで隣で歩きたかったとかそんなこと別に思ってねーからな!!」
「うん。知ってる。」
わかってるよ。君の気持ち。
「べっ別に俺は今すっげー幸せとか思ってないからな!!」
「うん。大丈夫」
伝わってるよ。君の気持ち。
「ねえ、イギリス」
「ん?なっなんだよ?」
だから、私も伝えるね。
「大好き」
「っ!!」
そうしてまるでりんごのように顔を赤くしたあと、すぐに困ったような顔をして、
そしてそっと抱きしめてくれる君が大好きです。
やはり右手は相変わらず温かい…
~end~