2009年末編02

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12月31日、早朝。起きる。 俺「う……!?」 起き上がろうとして異変に気付いた。 幼「おはよう、何か食べる?」 みおは既に起きていて、バターロールをかじっている。 俺「つーか……」 幼「ん?」 俺「背中すごい痛い」 幼「は!?」 俺「背中が……」 幼「何!?   見せてみ」 みおに背中を見せる。ちなみにパジャマは寝ている間にみおにちゃんと着せられてる。 俺「ああう、痛い……」 幼「どこ?」 俺「こっ、ここ……」 背中を指で指すのも痛い。 幼「なんともないけど……」 俺「多分、寝相悪かっただけ……」 幼「前にもあるの?」 俺「ない」 幼「ねーのかよ」 俺「でも、変な格好で長時間ゲームした時と似てるから多分そう。   あお向けで背中にゴマちゃんのぬいぐるみ置いてブリッジの状態でゲームしたりするとこんな感じになる」 幼「何してんだよお前は」 俺「全裸で畳みにあお向けだと背中が痛いから背中に何か欲しいんだよ」 幼「まず服を着ろよ」 俺「それは出来ない相談だな」 幼「じゃあ死ね。   ……結局、背中は大丈夫なの?」 俺「ほっとけばなおるはず。   とりあえずトイレ行ってくる……いたた……」 幼「おじいさんみたい」  ◇ 俺「立って歩いてる分には平気だな。背中を動かすと痛い」 幼「どんな痛さなの?」 俺「足がつった時に似てる。背中つった感じ」 幼「結構痛いじゃん」 俺「背中を寝違えることってあるの?」 幼「聞いたことないね」 俺「変なポーズで寝たのかなあ」 幼「あのまま寝ちゃったもんね」 俺「覚えてるの?」 幼「覚えてるよ。だって起きた時に服着てないんだぞ」 俺「そういやお前なんで服着ちゃったの?」 幼「服着なきゃ風邪引くっつーの。で、ご飯はどうする?」 俺「何かあるの?」 幼「あれ食べる?   食べるならもうちょっと焼くけど」 バターロールを指差すみお。 俺「……ウインナーある?」 幼「あるけど」 俺「あれに――」 幼「あれにウインナー挟むのね?」 俺「よく分かったね」 幼「誰でも分かるわ」 俺「ははっ。……あいたたた」 幼「だめだこりゃ」  ◇ 俺「美味い」 幼「これがトーストだったら絶対要らないって言ってるくせに。バターロールは好きって変わってるよね」 俺「耳がないのが良いや」 幼「でもクロワッサンは嫌いじゃない」 俺「断面図が虫の巣穴みたいじゃんあれ」 幼「バカ!   クロワッサン食えなくなるだろうが!」 俺「バターロールは見た目もかわいいよ。清純派。クロワッサンはなんか淫乱ぽいもん。ピンクの巻き毛キャラって感じ」 幼「だから物を女の子にするなと」 俺「モグモグ……」 幼「ふふっ」 俺「?」 幼「やっぱ本来は左利きなんだね」 左でウインナーロールを掴んでいるのを見てそう思ったのだろう。 俺「別に右で食べてる時もあるんじゃないかな」 幼「うん。でも面白い」 俺「両方使えると携帯とか楽だぜ」 幼「私は絶対無理」 みおは極度の右利きとでも言うのか、たとえば食器荒いの時にスポンジ持つのは絶対右だ。 俺「ごちそうさま。洗っとく?」 幼「良いよ」 俺「いてて……」 立ち上がろうとしたら背中が痛む。 幼「ほら、私やるから寝てな」 俺「でも横になると痛いしな……」 幼「じゃあその辺にずっと突っ立ってろ」 ひどい扱いだ。  ◇ みおの皿洗いを見てると、やっぱりスポンジを右手に持っている。右利きなんだなあ。 しばらく皿洗いを斜め後ろで観察しつつ考えごとをしていたのだが、ふとある疑問に気付く。 俺「……あのさ」 幼「わあ!   もー、びっくりするでしょ」 俺「みおがパジャマ着せてくれたんだよね?」 幼「そうそう」 俺「着せ終わった時に俺の背中がぐにゃぐにゃなまま寝かせたりしてないよね?」 幼「あー……」 俺「あーってなんだよ」 幼「い、いや、そういう可能性もあるのかってこと。   でも私は普通に寝かせたはず!」 俺「そうだよね」 幼「何でまた急にそんなこと聞いたの?」 俺「寝てて背中を痛めるなんて初めてだったから、原因を考えてたんだよ」 幼「私じゃないからねっ!   ……多分」 俺「うん」 幼「……実は私なのかな?」 俺「さあ、分からん」 幼「もし私だったら怒ってた?」 俺「怒らないよ。聞いてみただけ」 幼「良かった」 俺「怒ったふりすりゃみおがあたふたして面白かったかな?」 幼「面白くねーよ」 俺「さっきのちょっと不安な感じのみおかわいかったから怒ってみて良い?」 幼「いやいや、何言ってんの?   あんた背中だけじゃなく頭も悪くした?」 俺「いつものみおに戻ってる……」  ◇ 続きまして夕方頃。みおが身支度をしている。 俺「どっか行くの?」 幼「おソバ買いに行くわ。和くん家にいるでしょ?」 俺「そうだな。服着替えるのとか地味に痛そうだし」 幼「うんうん、ゆっくりしてて。余計痛めるとまずいし」 俺「気をつけてね」 幼「何か食べたいものある?」 俺「えっ、ソバでしょ?」 幼「お菓子とかよ」 俺「うーん……」 幼「……」 俺「何にしようかな……」 幼「日が暮れそうだからもう行くわ」 俺「うあ、待って……。   うんとね、うんとね……なんか安いの買ってきて!」 幼「時間の無駄した」 俺「早く帰ってきてね」 幼「はいはい。鍵閉めてね」 バタン。 俺「……」 この時に俺は、いってらっしゃいを言わずに済んで良かったと思っていた。 一般人からすると「気をつけて」も「いってらっしゃい」も大して変わらないかもしれないが、「いってきます」→「いってらっしゃい」の流れの「いってらっしゃい」はハードルがかなり高い。 「おはよう」にも「おやすみ」にも「いってらっしゃい」にも「おかえりなさい」にも「いただきます」にも「ごちそうさま」にも「誕生日おめでとう」にも「あけましておめでとう」にも「うん……」で返事したいのだ、本当は。 「ごちそうさま」はなるべく「美味しかった」で回避したいし、「いただきます」はなるべく「先に食べてて良い?」で回避したい。 「おかえりなさい」はみおが帰ってくるまでにスライムのぬいぐるみを玄関に並べておいてスライムにおかえりなさいの布陣をさせてごまかすことが多いのだが、腰を落とすと痛いので今回はやれない。 これはピンチだ。  ◇ おかえりを言うのはやっぱりちょっと恥ずかしいので、少なくとも面と向かって言わなくて良いように何かしていたい。 なにしろ子供の頃から挨拶をごまかしていた俺。挨拶をごまかすことに関しては天下一品だ。 『集結の園へ』を流そうかとか、脅迫文みたいに文字を切り抜いておかえりなさいを作ろうかとか、自分の口にガムテープでも貼っておこうかとか、寝たふりをしようかとか、まさに湯水の如く天才的なアイデアが。 中でもこれは完璧だと思った作戦で対応することに決めた。神経を集中させてみおを待つ。 幼「ただいまー」 みおが帰ってきた。 俺「んっ、ごほごほ……」 名付けて、咳き込んでしまい挨拶出来ませんでした作戦だ! 幼「大丈夫?   ただいま」 なぜ二回言うのだ。 俺「おかえり」  ◇ 幼「ねえ聞いて聞いて!   あげたま無料だったからたくさんもらってきちゃった!」 俺「へえ、天ぷらたくさん作ったのかね」 「あげたま」とは普通は「あげだま」とか「てんかす」とか言う、黄色い丸いののことだ。 俺は幼少の頃からずっと「あげたま」と言ってきたのだが、それがみおにうつってしまった。 幼「ほいっ、ほいっ、ほいっ」 みおが買い物袋からあげたまの入った小袋を三つ取り出す。 俺「すげえすげえ!   しばらくたぬきそばで食えるじゃん」 幼「だからついでにそばももう一回分買った。うどんも買っておいた。」 俺「当分これで外に出なくて良いな」 幼「でも帰りに気付いたんだけど、そばばっかりじゃ和くん背中痛そうだよね」 俺「大丈夫だよ。あげたま好きだし」 幼「年越しそばにも入れる?」 俺「年越しそばに入れたら変かな?」 幼「分かんない」 俺「じゃあ入れちゃえ」 幼「入れるのね」 俺「縁起がどうとか関係ねーべ」 幼「ぶっちゃけりゃそうだけどバチあたりな言い方だな」 俺「俺がバチあたりなことしても、みおが良いことしてるんで相殺される。平気」 幼「勝手に共有システムにするな!」 俺「普通はパーティー全体の平均のカルマで決まるんだよ」 幼「それゲームのシステムじゃねーか!   ったく。あんた背中にバチがあたったんだわ、きっと」 俺「いや、現実でも適応されるんだぞ。   カルマが低い奴が一人で歩いてるとしょっちゅう職務質問されるし、おばあちゃんに道を教えても信用してもらえない。   でもカルマが高い奴といっしょに歩いてると、カップルに写真撮って下さいとかお願いされる」 幼「そりゃカルマじゃなくてあんたが一人で歩いてると挙動不審なのよ」  ◇ 年越しそばの出来上がり。 幼「はい、お待たせ」 俺「すごいな」 あげたま以外にエビ天とかまぼこが入っている。俺のおそばには生卵も入れてくれた。小皿に斜めに切ったちくわと醤油が。 幼「和くんの食べられる物しかないんだからちゃんと食べなさいよ。麺は残しても良いから」 俺「年越しそばって残しちゃダメなんじゃなかった?」 幼「あんたは縁起よりちくわとかまぼこ!」 俺が魚を食べたがらないせいか、ちくわやかまぼこでのごり押しが結構増えた。 魚でガンガンこられるよりもその方が助かるので俺には不満はないし、みおも元々ちくわとか好きみたいなのでさほど問題はなさそうだ。 俺「エビは目が付いてる正月向けのよりこういう普通のやつのが良いよね」 幼「あ、目がこわいんでしょ?」 俺「頭を外すのが面倒」 幼「そういう理由かよ」 俺「エビフライもファミレスとかで頭が付いてると取るのダルいし」 幼「自分で取るみたいに言って、頭取ってあげてるの私でしょ!」 俺「苦労してんだなお前」 幼「お前のせーだろ!」 俺「ふふ、みおがこんなに世話焼きだと思わなかったなあ」 幼「和くんが自分で何もしないから私がやるハメになるのっ!」 俺「ごめんね」 幼「ごめんじゃないわよ、まったく……」 俺「みおが文句言いながら世話焼いてくれるとこ、好きだし嬉しいからつい甘えちゃって。   やらされるのすごく嫌なことは怒ってね」 幼「な、何よ急に。怒ってないよ。   別に嫌じゃないし、じゃなくて、違くて……うー何言ってんだ私……」 俺「嫌じゃないの?」 幼「いっ、嫌に決まってんでしょバカ!! アホ!!」 俺「うわ、なんかしらんがすごい怒られた……」 幼「とにかくっ、ありがとってたまに言ってくれれば良いから。それで許す」 俺「うん。いつもありがと」 幼「そうそう。それで良いの。深く考えるな。   ふざけたこと言うようになったら遠慮せずに蹴るし」 俺「じゃあ来年も甘えて良い?」 幼「ダメって言っても甘えるくせに聞くなバカ」

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