日常編63

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スーパーの帰り。 目の前を何かが横切る。 幼「あ、真っ白だよ!」 白猫だ。少し離れた所でこっちを見ている。 俺「別に普通だろ」 幼「あんな真っ白いのいないよ?」 猫に少し近付いてしゃがみ込んでしまった。こうなると長い、座ろう。 幸い、スーパーのある通りには無駄に多数のベンチが並んでいるのだ。 俺「俺座ってるぞ」 幼「なー。なー」 猫の鳴き声を真似しているのだろうか。あんなんで寄ってくるのかな? 幼「ソーセージ食べるかな」 俺「止めろよ。餌やるだけで放し飼いにする奴とか嫌いなんだ」 昔、実家のマンションのベランダで鳩に餌をやってる奴がいた。 鳩の糞がすごくて洗濯物が干せないのはもちろん、鳩が邪魔で洗濯が大変。 鳩をブロック出来る網ってのを仕掛けてみたが侵入してきて網戸までぶっこわすから窓を開けられなくて風を通せない。 さすがに毎日鳩の糞を洗うのに疲れてベランダを使わなくなったら、気付いたらベランダに巣を作っていてクルポッポクルポッポとめちゃくちゃうるさい。 それと、これは鳩がやったのか分からないが窓のガラスに両方ヒビが入ってしまった。 こんな思い出があるため、家の前で毎日野良猫たくさん集めてミルクやったりしてる奴を見ると腹が立つ。餌をやるなら飼えと思ってしまうのだ。 飼わないなら餌付け禁止っていう条例を荒川区が出したが、これは実に素晴らしいと思う。この条例は全国的に広めるべきだ。 その動物が本当にかわいいなら、しつけや糞尿の始末など、嫌な部分も自分が面倒を見るべきだと思う。餌をやるだけというのは卑怯に感じる。 幼「あ、そうだよね。迷惑か」 俺「ちょっとしたことでも、ここに居座るようになるかもしれんからよくないよ」 幼「やめとこ」 俺「まあエサには困ってないだろ。これってガリガリとかじゃないんだろ?」 幼「うん」 俺「ソーセージは俺が食べてやるよ」 幼「ソーセージあげたくないだけかよ!」 俺「違う違う」 幼「ふふふっ」  ◇ 幼「ごろんてしたー、かーわいー」 もう二分くらい猫に構っている。 俺「……」 幼「ねえ、かわいくない?」 俺「離れてればな」 幼「近いとこわい?」 俺「こわいってか、ひっかくんだもん」 幼「なんでひっかかれたんだっけ」 俺「なんかウチのドアの前にいて、鍵を出してドア開けようとしたら鍵に飛びかかってきて腕ひっかかれた。   あと、子供の頃にも親の荷物持ちにいっしょにコンビニ行って、袋の中の魚を見た猫が横から飛びかかってきた」 幼「痛かった?」 俺「いや、そんなガリガリやられたわけじゃないからな。   蜂の方が痛い」 幼「蜂ってそんなに痛いんだ」 俺「蜂がでかかったからかもしれないけどな」 幼「大きい蜂ってこわいよね」 俺「大きい猫だってこわいだろ」 幼「ライオンとかね」 俺「その猫もでかいじゃん」 幼「えー、ちっちゃいじゃん?」 俺「それ大人じゃないの?」 幼「大人だけどさ」 俺「檻に入れておかないと危ないレベル」 幼「大丈夫だよ」 俺「猫型ロボットの方が絶対安全」 幼「あのロボ物騒な兵器持ってるじゃん」  ◇ 幼「あ……」 猫が急に動いて、俺のベンチの下の隙間に潜り込んだ。 俺「なんだなんだ!?」 幼「あ、いいなー和くん」 みおが俺の方に来る。 俺「ひい、足にもぞもぞしてる」 幼「和くん好きだって」 俺「頭がかゆいんだろ」 幼「えー?」 俺「なんで人がいる方に来るんだよこいつ。おかしいだろ」 幼「ベンチの下が好きなのかな」 俺「他のベンチ空いてるじゃねーかちくしょう」 幼「あはは」 俺「もう帰ろうぜ」 幼「うん」 俺「……立つから手」 みおの方に手を伸ばす。 幼「立てないのかよ」 俺「立てるよ」 幼「じゃあ立てよ」 俺「……手ー」 幼「ほらっ」 俺「よいしょ」 幼「しっぽ踏まないようにね」 俺「しっぽうねうねしてるよー」 幼「かわいいじゃん」 俺「ガラス越しならかわいいんだけどな」 幼「どんだけ嫌いなのよ」 俺「俺は犬も猫も好きだぞ。ただ、寄ってきたり急にワンワン言うのがね。   逆に言うと牛とかも牧場に入れられてて口を開けなければ一メートル以内にいても平気だ」 幼「普通に言うと全部ダメなんじゃねーか」  ◇ 俺「カメ平気だぞ、水槽に入ってれば」 幼「閉じ込められてるの抜きでさ」 俺「サボテン平気だぞ」 幼「動かないじゃん」 俺「サボテンがこわい人って結構いるんだぞ」 幼「ほんとかよ」 俺「あのな、前に試しにサボテンをこう軽くにぎにぎしてみてさ。   なんだ、全然痛くないなって思って手を開いたら……手にビッシリとトゲが刺さってたんだよ」 幼「こわいこわいこわい!」 俺「そのトゲを一つ一つ取っていくんだけど、なんか抜きにくくてさ。近くのトゲを触って奥に入れちゃったりして……」 幼「やだやだ、やめてもう」 怯えるみお。 俺「最初はムズムズかゆい感じで笑いながらトゲを取ってるんだけど、刺さってる方の手も地味にピクピク動いちゃうせいかなんだかしびれたような感覚になってきて。   痛いなと思うと急にズキズキしてきてだんだん焦ってくるのよ」 幼「やめろ!   死ね!」 俺「サボテンこわくないんだろ?」 幼「サボテンどうこうよりお前の行動がこわいんだよ!」  ◇ 幼「なんでまたサボテン触ったりしたんだよ。   指先で触ってみるとかならともかく、普通は握らないぞサボテン」 俺「だってトゲトゲがひっつくなんて思わないし。触ると結構簡単に取れるんだよね」 幼「あのトゲトゲで自分を守ってるんだから」 俺「ウニもそうだよね」 幼「ウニのがもぞもぞして痛そう」 俺「そういや子供の頃に海でウニ見付けて、ビニールで捕まえて陸にあげたらビニールがすぐ穴だらけになって中の海水が漏れちゃってあっという間にやつれて死んだわ」 幼「ウニかわいそう」 俺「ウニかわいかったからつい」 幼「お前はかわいかったら拉致すんのかよ」 俺「だってウニとかマリモが漂ってるの好きなんだよ」 幼「じゃあ漂わせとけよ!   なんで連れてったんよ」 俺「その時のウニの死がトラウマで、未だにウニが食べられない」 幼「それは最初からだろ」 ※ウニは後でスタッフが美味しくいただきました。

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