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堀崎睦月‘S STORY 2-1 

どんより曇った今日の午後。いや、正確には今日この頃だ。漱石風に言うと茶壷のふたを閉めたような色、といった所だ。これにより、俺たち生徒の心は決して明るい方向には向かなかった。だが、この季節には学生の関門があることをお察しだろうか?そのために俺達は暗い心を奮い立たせ、粉骨砕身して勉学に励まなくてはならなくなる。
そして、それに追い討ちをかけるように言い渡されたのは『全科目80%を上回らねば追試』の一言。終わった。

俺は今、自分の家で珍しくも勉強をしている。いや、既にやったことの場合は復習だな。無論、一人ではない。
「ねぇ睦月。ここってどうすればいいの?」
「そこか?…国語の文章題の説明は…、俺にはちょっと…。」
「睦月はどうやって解いたの?」
「俺か?俺はだな、読んだだけだ。」
こんな感じで俺は七恵と二人で復習をしている。皆、テスト勉強じゃない。テスト復習だ。
まあ、俺は元々頭の出来はいい方だったからな。一日1~2時間で90%は狙える。神様、ありがとう。
で、七恵のほうは…悪くないんだけどな。でもこのままじゃ一日4時間はやることになりそうだ。俺も一緒に。
今これを読んでいる奴は覚えているだろうか?俺の家は1Kの部屋だ。もちろんそこが広いわけじゃない為、
俺と七恵は小さいテーブルで遠慮しながら(俺だけ)頑張っている。(これは主に七恵)
でも、平和でいいなぁ…。こんな風に過ごせるなら90%以上でも頑張れるね。
「なにそれ。嫌味?」
いや、そんなつもりは全然…ってその右手に持ってるの何?それ参考書だよね?人殺せるんじゃ―
俺は鈍い音が響くことを予想して目を瞑る。いや、怖いじゃん。絶対これ人殺せるって。
「やっぱやめた。こんなことしても意味ないよね。と、いうわけで今度の休日、どっかいこっ?全額奢りでねっ。」
…誰が奢るんだ?
「え?わからないの?なら今度こそ一発入れておかなくちゃ―」
「わかった!俺が奢るから!」
おい、俺が臆病者だって思った奴。こっち来い。代わってやるから。
かくして、俺達はテスト一週間前に遊びに行くことになった。こいつ…テスト大丈夫なのか?

そんなこんなで日曜日。
なんで日曜日かって?土曜日に補修があったからだ。忌々しいことだ。
人間は時間の感覚が曖昧だと思う。楽しいことは早く過ぎ、苦しいことは長く感じる。
が、苦しいことが後にあるとわかってる場合は時間が早く感じるようだ。実際、俺には時間が早く感じられた。
「え?そうなの?私は遅く感じたけど?」
嬉しいことを言ってくれるな。でも俺は自惚れることすら許されない。なぜならそれが奢りのおかげだと脳が教えるからだ。ああ、奢りさえなけりゃなぁ…。普通にデートだって浮かれられるんだけどな…。人生、甘くないな。

さて、ここで起こったデートのことは割愛させていただく。今度番外編として書くかもしれないけどな。
ホントに大変だったけどな。

さあ、テストもあと数日に迫ったある日の放課後。俺と七恵は久しぶりに部室に行った。今まではテストに追われてたからな。今は息抜きだ。
コンコンコン
軽快な音が廊下に響く。俺はここ最近聞いてない楓ボイスが聞こえないかどうか淡い期待を抱いていたら、
「どうぞ。お入り下さい。」
ああ…。癒される…。ここ最近は七恵につきっきりだったからな。流石は楓ボイス。癒されるな。
七恵が俺に構わずに部室に入る。少しは気遣ってくれよ。お前の出来る範囲で良いからさ。無論、口にはしない。
したら俺が土の下に行きそうだ。マントル通り越して閻魔様に顔合わせするかもしれん。
「やあ、お久しぶりですね。」
あれ?音咲?もしかしてお前らテスト復習やってたのか?
「テスト復習ですか?…まあ、意味的にはそうですが…。メジャーな方を使った方が良いんじゃないですか?」
それは使用だ。俺に言うな。執筆者に言え。
「ここに来たところを見ると、お二人も勉強をしに?」
「ううん、違うよ。ちょっと息抜きに来たの。」
「そうですか。ならば名案があるのですが。」
おい待て。なんで俺達が息抜きに来たら名案を出すんだ。いったい何をする気だ?
「いえ、普通に二人ずつに分かれてどちらの合計点が上かを競おうかと。」
「ならなぜ二人ずつになる。」
そういうと音咲は徐に立ち上がり、俺の耳に囁くように
「あなたは既に織口さんと勉強をしてますよね?」
わかった。とりあえず俺に教師を頑張れってことか。ってなんでお前が知ってるんだ?
「そんなこと僕の家の―いえ、なんでもありません。ただの推理です。」
…お前の家は何やってんだ。とりあえず、顔が近い息を掛けるな気持ち悪い。
それから、チームを決めた後俺達は街へ向かった。俺たちはテストが迫っているんだが…。
因みに、俺達が通ってる高校は都内トップクラスのはずなんだが…。ま、なんとかなるだろ。
それからの日々は地獄だった。七恵が『絶対勝つよ!』とかぬかしやがったおかげで俺も一緒に6時間ぶっ続けで毎日復習をさせられた。なぜ俺も一緒かというと、七恵がことあるごとに
「ここどうやってやればいいの?」
「ねぇねぇ睦月。教えてよ~。」
と聞いてきて、俺の安眠を妨げるからだ。もちろん、意地になったりはしない。そんなことしたら…な?

で、テスト当日。
俺は今、テストに疑問がある。何故だろう?なんでSNNを使えなくしないんだろう?使ったらダメなのだろうか?ダメだろうな。でもさ、使えるまんまだとさ…あ、池谷が席立った。コイツ使ってるよ。ゼッテー使ってる。俺のとこ来た。

悪いな睦月。俺には追試にならないという使命があるんだ。だから…お前のテストを…。
「池谷、見苦しいぞ。今こうなったのは他ならぬお前のせいだ。諦めて席に着け。」
ぬぁぁぁにぃぃぃ!!!!!!!?この俺がミスったぁぁぁ!!!!!?そんな馬鹿なぁぁぁ!!!!!!
………

どうやら池谷は自席に着いたようだ。俺だって苦労して復習したんだ。その苦労を味わってないお前にカンニングは許されない。どっちにしても、多分池谷は追試だな。この試験会場(教室)、SNN使うと多分ばれるからな。
開始25分。俺、テスト終了。(答案は空欄なし、90%の自信あり)俺、七恵の観察開始。
テスト中の七恵はとにかく見てて飽きなかった。何故なら、あいつの顔が百面相のようにころころ変わるからだ。
俺はテスト終了まで七恵の顔を視界ギリギリに見えるようにして過ごした。テストが楽しいとは俺は知らなかった。
吹き出さなかった俺はけっこう偉いと思う。それだけ面白かったってことだ。
そんな感じで4教科やった後、俺は七恵に手応えを聞きに行った。
俺は学校内をしばらく散策する。七恵はどこにいるんだろうか。教室にも部室にもいなかったが…。悪かったのか?
「「あ。」」
ハモった。誰かって?俺の家に居候と化している我侭女だ。因みに中庭の自動販売機のところだ。
「テストどうだった?80%行ったか?」
実を言うと今回のテスト(初めてだが)は80%という枷のおかげで少し簡単になっていた。ほんの少しだが。
でも…まあ、テスト終わってすぐ俺に言わなかったところを見ると…悪かったのか。
「多分ね。でも…あっちの二人、両方とも頭よさそうだよ?」
…知るか。とりあえず、単純な勉強量では俺達が上だ。とりあえず、信じよう。自分を。
「で、とりあえず、もう放課後だ。さっさと帰って明日に備えるぞ。」
「どこに?」
「俺の家だが?」
「私も?」
……ぬかったぁぁぁ!!!!!!
「それって私が睦月の家にいてもいいってことだよね?」
いや…それは…ちょっと…。
「いいんだよね!?」
…いや…だから…はい…わかったから。いてもいいから…。はぁ…。ああ…憂鬱だぁ…。
健全なる男子高校生なら普通に喜べるんだけどな…。俺…もう健全なプロフィールがないしな…。俺…普通人じゃなくなっちまったしな…。ああ…憂鬱だ…。

一週間後~テスト返却後
・俺   国200/200 英197/200 数200/200 社190/200 理189/200
七恵  国179/200 英198/200 数159/200 社175/200 理180/200
音咲  国178/200 英200/200 数196/200 社200/200 理193/200
楓さん 国200/200 英189/200 数179/200 社180/200 理188/200
俺・七恵チーム 867点
音咲・楓さんチーム 903点
…負けたよ。この二人凄過ぎだろ…。充分俺もすごい方だが。それでもすごいな。
「どうやら僕達の勝ちのようですね。」
「ここでも、七恵ルールは適用されますよね?」
はい、もちろんです。楓さんの命令ならなんでも…。
「ということは、2回命令できるんですよね?」
え?楓さんキャラ違いませんか?俺の中の楓さんは、そんなキラキラ光った目でなんか迫ってきませんよ?
ってこの流れからして…。多分2回とも俺に命令するだろうな…。
「もちろん、七恵にも命令しますよね?」
「それはお楽しみです♪」
…全部俺だ…。絶対俺だ…。杞憂だといいんだが…無理だろうな…。
そう言って二人はどこかへ行ってしまった…。あれ?七恵はどこに行ったんだ?
俺が辺りを見回すとそこには一つの段ボール。
「…何やってる。」
「…。」
こりゃ見事に凹んでるな…。数学追試だしな…。さて、どうやって持ち帰ろうか。このまま段ボールのまま持ち帰ろうか。うん、それがいい。多分、開けたらパンドラの箱みたいになってるだろうからな。
俺は段ボールを背負って学校を出る。もう既に放課後になっており、既に普通の生徒は帰った後の時間帯だ。
おかげで俺はそこまで目立たなくてすんだようだ。俺は不審者扱いを受けたくないからな。
「お~い七恵。出て来いよ。」
所変わって俺の家である。俺は学校を出た後も必死こいて段ボールを担いで家に帰ってきたのである。
「七恵~。出て来いよ~。」
俺は懸命に説得に当たる。が、こんなセリフでのこのこ出てくる奴が警察史上にいただろうか?いないな。
そこで俺は別の手段に取り掛かる。段ボールを観察しよう。そうすれば糸口がつかめるかもしれない。
…生物のシールが貼ってある。ついでに割れ物も…。無駄な部分だけは凝ってるな…。
あ!これ段ボールじゃん!水攻めに―
「ぅぅ…。ひっぅ…。ぅぇぇ…。」
…泣いてんのか…?この状況じゃありえるな。
なあ、七恵。お前は今回頑張ったって。今回負けたのはお前のせいじゃない。あれは不可抗力だ。
「…でも…ヒック…。」
お前とずっと一緒にいた俺が言ってるんだ。それだけは間違いない。それに、悔しいなら次頑張ればいい。
「……………わかったよ………。」
よし。なら出て来いよ。
「睦月は私が泣いてたことわかってんでしょ!」
えーと、それはつまり、泣き顔を見られたくないってことだな?
こいつにもちゃんと女の子らしい面があったとは驚きだ。
「睦月…。明日会えるといいね…。」
…そうだな。…頑張ってみるよ…。俺だってまだ死にたくないからな…。