「・・・ココは・・・?」
テスタロッサ大佐は目を開くとそこは簡素な医務室。
隣には、相良宗介軍曹と、メリッサ・マオ曹長や、クルツ・ウェーバー軍曹。
副長の中佐やカリーニン少佐などの姿は居ない。
特に痛みを感じるわけではないのでテスタロッサ大佐―――テッサは起き上がる。
「・・・何処なんでしょう・・・ココ・・・。」
急に眠たくなって、起きれば何処かの医務室。
メリダ島でもデ・ダナンの医務室でもなさそうだ。
気がつけば、トントンと、規則正しいノックが聞こえてくる。
「どうぞ。」
テッサはとりあえず、答える。
「・・・あ、目が覚めてた?」
サイドポニーの女性は笑いながらテッサに声をかける。
「あの、貴方は・・・?」
「私?高町なのはって言うんだ。宜しくね、えっと・・・。」
「テレサ・テスタロッサです。”ミスリル”作戦部西太平洋戦隊”トゥアハー・デ・ダナン”所属、大佐です。」
「・・・軍人さんって事は着てた服でなんとなく想像できたけど・・・大佐って、佐官だね、珍しいよ、この世界で、その年で大佐なんて。」
「私の世界でも珍しいです・・・は?この世界??」
テッサは顔を半分赤くしながら高町なのはに聞く。
「ココはミッドチルダって言う世界でね。―――。」
テッサはなのはから軽くミッドチルダや魔法について教えてもらった。
「ありがとうございます。」
「ううん、全然。詳しくは全員おきてから、会議室に呼び出して説明するね。」
「はい。」
「じゃあ私はこれから仕事あるから、また後でね、テレサちゃん。」
なのはは扉の前で笑いながら言う。
「えっと、テッサでいいです、テッサで。」
「え、分かった、テッサちゃん。」
そう言うとなのははその部屋から出て行った。
*
「んんん・・・。」
シンは目を開いた。
見慣れない天井。
「ここは・・・?」
隣を見ると、アスランと知らない人。
痛みは感じないので起き上がる。
「・・・?」
医療具も知らないものだ。
「・・・何処だ?ここ。」
「ミッドチルダだよ。」
いきなり女性の声が聞こえた。
「ふぇ?みっどちるだ?って、うぁ!」
「びっくりした?」
扉のところから歩いてくる女性。
「びっくりしました。」
「そう、ごめん。」
「別に謝られることじゃありませんよ。」
シンは反射的に、ぶっきら棒な言い方になっていた。
「そう。」
「で、貴方は誰ですか?」
「私、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンって言うんだ。君は?」
「・・・シン、シン・アスカ。」
「しん・・・あすか?女性みたいな名前だね。」
フェイトは笑いながら言う。
「お、おれは女性じゃありません!」
少し顔を赤らめるシン。
「ふふふ、分かってるよ。それで、君がいた世界、どんなところか教えてくれる?」
「はい。」
そしてシンは、自分の歩いてきた道を言った。
「そう、なんだ・・・悲しいよね、戦争って・・・。」
暗い雰囲気に変わっていた。
「ねぇ、ここはさっき、なんていう世界だって、私は教えた?」
フェイトはいきなり話を進める。
「ミッドチルダって、聞きましたけど?」
「そう、正解。それでこの世界には魔法が存在するの。」
「魔法?」
シンが知っている魔法とは、童話やアニメなどに出てくる黒ずくめの怪しいやつが使う謎の力の事だった。
(じゃあ、やって見せようか。)
「わわわっ!」
フェイトは声を出していないのに、フェイトの声が、入ってくる。
(落ち着いて、コレも魔法の1つだよ。)
「魔法の、1つ?」
(ほら、心で喋ってごらん。私にちゃんと届くから。)
そう言われてシンは、少しだけ意識を集中させる。
(・・・こう、ですか・・・?)
(そうだよ、シン君。コレ、念話って言うんだけど、これは基礎中の基礎の魔法。)
(ってことは・・・。)
(そう、シン君にも魔法の才能、”リンカー・コア”があるって事。)
疑問符を出すシン。
ココでは自分の常識が通用しないのを知った。
(ねぇ、空気の中には普通、どんなものが入ってる?)
(空気の中って・・・そりゃ、窒素や酸素、二酸化炭素とか・・・。)
(そう、それでこのミッドチルダには空気中に”魔力素”が含まれてるんだ。)
(魔力素?)
(そう、それでその魔力素を変換して、私達の魔力にするのが”リンカー・コア”の役目。この世界では結構有り触れてるけど、シン君の世界では珍しいみたいだね。)
そう言うとフェイトは微笑む。
開いた窓から入ってくる風が、フェイトの金髪を揺らす。
(・・・珍しいです。)
(やっぱりね。でもそれは特に関係しないし、次の説明、いいかな。)
(はい。)
(魔法はリンカー・コアから作られる魔力を使うんだけど、術者、つまり魔法使い1人じゃ制御は難しいんだ。だからみんな”デバイス”を使うんだよ。)
(デバイス?)
(そう、デバイスは術者のサポートなども行うんだ。ちなみに私のデバイスはこの子だよ。)
フェイトはそう言うと三角形の、黄色い宝石を出した。
(この子、バルディッシュって言うんだ。人によってデバイスの名前は変わるんだけどね。)
(へぇ。)
(ねぇ、そろそろ普通に喋ろうか。)
(あ、はい。)
気が付けば、2人は念話のまま喋っていた。
*
管理局内にあるとある会議室。
今回、そこで各世界の事や、魔法についての事、各人に割り振られるデバイスが渡される事等々、やる事が多い。
そして、全員が揃う。
「みんな、揃ったね。じゃあ、はじめようか。まずは自己紹介。私は高町なのはって言います。階級は一等空尉。みんなの訓練を担当するから宜しくね。」
なのはは言い終わるとかすかに笑う。
「えっと、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。執務官なので階級は無いですけど、宜しくお願いします。」
フェイトはそう言うと「宜しくね。」と、言って、笑った。
「八神はやてや、階級は二等陸佐、階級なんてきにせんでええから。ほな、よろしゅうな。そうや、新部隊機動六課の課長も勤めるんで、君らの上官・・・ちゅう事になるな。」
関西弁を使いこなす六課課長八神はやて。
「じゃあ、次は・・・テッサちゃんの方から行こうかな。」
なのははそう言うと「静かにね。」と、言う。
「えっと、ミスリル作戦部、西太平洋戦隊”トゥアハー・デ・ダナン”の艦長兼戦隊長で、階級は大佐です。」
「メリッサ・マオ曹長よ、西太平洋戦隊”トゥアハー・デ・ダナン”のSRT所属。宜しくね。」
「エバ・サントス、階級は中尉。コールサインゲーボ9。”トゥアハー・デ・ダナン”のヘリパイロットだった。」
「相良宗介軍曹であります、コールサインはウルズ7、西太平洋戦隊SRT所属です。」
「クルツ・ウェーバーっす。階級は同じくぐんそーで、コールサインはウルズ6。」
「ベルファンガン・クルーゾー中尉だ、―――」
「過度のアニメオタクでーーー。」
クルーゾー中尉が自己紹介を始めた途端、クルツが笑いながら言う。
「ウェーバー、後でどうなるか分かっているか?」
「いや、ぜんっぜん!」
クルツはにやけて言っている。
それが、余計にクルーゾーの機嫌を悪くする。
「軍曹!」
どす黒いオーラを漂わせながらクルーゾー中尉は言う。
「あの、止めていただけませんか、ココ、とりあえず公式の場なので。」
テッサは彼らを止める。
「いや、その、済みませんでした、大佐。この事は、その、中佐には内緒にしていただきたいのでありますが。」
「すまねぇな、テッサ。」
「あ、はぁ。」
テッサはそんな二人にある意味で嫉妬するのだった。
「あの、じゃあ、次。」
と、なのはは汗を流しながら言う。
「シンです。シン・アスカ。ザフト軍フェイス所属デスティニーのパイロットです。」
「アスラン・ザラだ。オーブ軍アークエンジェル所属。」
「キラ・ヤマトです、同じくオーブ軍アークエンジェル所属で、階級は、准将です。」
「!」
キラの発言にデ・ダナン組、管理局組は驚く。
「じゅ、准将って、将官じゃないですかっ!?」
テッサも驚きを隠せなかった。
自分みたいなウィスパードでもなさそうだし、エースパイロットって感じもしない。
どこにでもいるような、お兄ちゃんにしか見えなかった。
「まぁ・・・良く、言われます。あ、でも、准将の権限は殆ど使ってないです。」
キラも慌てながら言うが、空気は重いままだった。
「まぁ、じゃあ、これからデバイス渡すからね。」
そう言ってなのははフォロを入れるのだった。
*
「機動六課、ですか?」
「そや、それで六課に君らを迎えよう、っちゅう訳や。」
八神はやてはついさっき、陸士Bランクの試験を受けた、ティアナ・ランスター陸士とスバル・ナカジマ陸士へ六課へ来て欲しいと言った。
「あ、はやてちゃん、お待たせ。」
「お待たせですぅ。」
「はやて、待った?」
そこへ、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、リインフォースⅡが来る。
「さてと、試験結果、いいかな?」
「え、あ、はい。」
スバルは”憧れの”なのはの声に緊張しながらこたえる。
「良く頑張ったと思うけど・・・最後のアレは危ないからね。自分の身を守れないのに人の身を守るなんて無理だよね。」
「「・・・はい。」」
しょぼんとした、2人の声。
「というわけで、不合格。だけど・・・。」
「だけど?」
「このまま2人をランクDにしておくのは勿体無いし危ない、というのが、監督と私の一致意見。2週間の特別講習を受けて、また再試験受けられるように、ね?推薦状。」
そう言ってなのはが差し出した2枚の封筒。
「あ、ありがとうございます!」
スバルとティアナはうれしそうに封筒を受け取る。
「ほな、私への返事は今度でええから。」
そう言うとはやては自分の席を立った。
*
「じゃ、もう一回!テッサちゃんのシールドは結構強いね。ほら、他のみんなも頑張って。」
数時間後、なのはは、漂流者たちを指導していた。
「ディバイン、バスター!」
「!?」
訓練内容は、なのはが放つディバインバスターを受け止めると言うものだった。
「うぐぐぅ・・・。」
こういう毎日が、続いているようである。