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「ハロー、ガール」
 その人は右の手のひらをあげた。その顔はつめたく笑っている。無理矢理こじ開けたらしい窓から入ってきた風がその人のかみのけを揺らし、細い髪の毛がなびいて、差し込んできた月明かりがその人の顔を照らした。
「……あなたは?」
「答えている暇と時間はない。私は……」
 その人の右腕が静かに私の腹の中にめり込んだ。
「うぐっ」
 私は目を見開き、そいつの頭を掴んで横に思いっきり倒した。鈍い音がして、そいつの頭は床に落ちていた。
「っつ……う」
 腹が痛い。ずきずきするし、呼吸をすることさえ痛くてまともにできない。
「うう、う」
 私はさっきまで座っていたソファに座った。あまりの痛みに私はソファに横になった。
「……痛いじゃないか」
 さっき倒したはずのそいつはゆっくりと立ち上がって額から流れている血をふいた。少し悔しそうな顔をして、私を睨んだ。
「……こういう事はしたくなかった」
 そいつはあっというまに私の前にたつと、私の髪の毛を掴んで引っ張り上げた。
「っつ!」
「眠ってろ。ストロング・ガール」
 そいつは私にガーゼのような物を押しつけた。すぐに眠気がして、眠ってはいけないと思っても、この睡魔をどうすることもできない。
 意識が薄れ、わたしは倒れた。




「どうする?こいつ。まだ起きない」
 男の声だ。
「……水……とか?」
 女の人の声だ。
「ほっとけば起きる」
 あ、あいつの声だ。
 うっすらと目を開けると、着々とバケツに水をくむ女性の姿が見える。いつか見たような気のする男が、腕立て伏せをして、その横ではソファに座って足を組むあいつの姿が見える。
「……」
 水をくんだ女性がこっちに来る。
 水をかぶせる準備をした女性は私の前で止まり、私の真上にバケツをおいた。
「さーん、にーい、いち」
 と、数を数えている。
「わ、わあ!」
 流石にやばいと思って、私は声を挙げた。ああ、間一髪。私は水をかぶせられずにすんだ。
「……おはよう」
 その人はにっこりと笑った。
「お?起きたな?」
 こいつ……誰だっけ?
「……どっかで会いました?」
「……憶えてない?俺は憶えてるんだけど」
「……おぼえてない」
 その黒い色の髪をした青年は不安げにこっちをみていた。立ち上がってため息をつくと、こっちの方に来て私の顔を覗き込んだ。
「菊田……だ。俺は菊田。憶えていないかい?あの時は水色でツンツンだったからなあ」
 私は記憶の糸をたどろうとした。しかしたどる糸が思い出せない。ええっと、何処にやったかな?
 その黒い髪で、その髪を頭の真ん中でわっておろしている青年は、見覚えがあるようだったし、けれども無いと終われてみれば無いような感じで、どっちかよく分からなかった。
「……さあ?」
 私は小首を傾げた。彼はまたため息をついた。
「本当に憶えてねーのかよ」
 呆れたふうに言われたって、憶えてない物はしょうがないだろ。アホか。そもそもここは何処なんですか
「ここが何処かいってくれれば思い出すかも」
 嘘に決まっている。言われたって思い出せない物は思い出せないんだから。彼は頭をかきむしっていらだってソファに座った。
「……設計図は何処だ?」
「……」
 彼はまた私の目の前に立った。
「……オーディンは何処だ!」
 あ、やっと糸が見つかった。こいつはあの時の変な男か。アームヘッドに乗ってた。アームヘッドはよく憶えてるんだけど。
「ああ、あの時の人か。今思い出した。オーディン?あ、あの設計図か。何処にやったかな」
「……拒否しないのか?」
「え?だって、人の落とした物を返すのは当然じゃないの?」
 菊田の目が丸くなった。
「……とぼけた女だよ。お前は」
「返したいのはやまやまだけど……オーディンが嫌だって」
 菊田の目はさらに丸くなった。
「……なに?なんだって?」
「いや……だから」
 答えようとしたところで、私を見る三人の目が明らかに変わっているのが分かった。
「……嘘偽り無く言え。それは本当か?」
 私は何がなんだかよく分からなかった。
「……本当だけど?」
「……まさか、こんな形で新、戦力が……見つかるとはな」
 菊田は腰に手をあてて、呆れた風に言った。