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「キクダ。なにか、手伝うことはあるか?」
 電動の車いすを押しながら、全身ギブスだらけのアイネアスがやってきた
「はは。車いすに乗った奴が手伝える事なんて、何もないなあ」
 菊田は鍋の中にローリエの葉を落とした。
「今日は、何?」
「ん?菊田の特製ミートスパゲティさ」
「ふーん」
 アイネアスは車いすをくるりと回すと部屋の方に進んでいく。
「ああ、そうだ。パムの、チョコレートアイス、買ってきてやったぞ」
 アイネアスは踵を返した。
「っ!本当?」
「ああ。本当だ……けど、今は喰うなよ。食事前だから」
「……わかったよ。キクダ」
 菊田はゆであがったスパゲティの上にミートソースをのせた。
「さ、できあがりだ。」
 菊田は白い湯気を昇らせるミートスパゲティを片手に一つずつ持ちながら、アイネアスと部屋に入った。
 菊田はアイネアスのテーブルに食事をのせた
「さ、めしあがれ」
「……いただきます」
 アイネアスは、菊田の買ってきた中古の介護用の機械を使って、スパゲティをほおばった。
「たまには、コメでも良いんだぞ?」
 アイネアスはいつものように食べかすをとばしながら、言った。それを菊田が指を差しながら注意する。
「食べかす飛んでるって。飲み込んでから言えよ。……俺、お米アレルギーなんだよ。はは」
「へえ。そうなのか」
「まあね。だから、いつもはジャンクフードばっかりかな?そっちはインスタントと、チョコレートアイスかい?」
 菊田は冗談交じりに言った。しかし、アイネアスは表情はそれを冗談とは受け止めれていなかったようだ。
「……どうしてわかった?」
「ぶはははは。冗談のつもりで言ったんだけどな、あはははは。まさか、本当だったなんて。いやあ、ホント、スゲーなあ、お前」
 菊田は頭を支えながら下を見ながら笑っていた。
「わ、わらうなっキクダ!」
「だって、おもしろいもん。はー、くくくくく」
 菊田は何度も思い出し笑いをして、アイネアスの殺気に気が付き、何事もなかったかのように食事を再開した。
「なんで、御蓮の軍人に?リズ人だろ?」
「……償い……とでも言おうか、昔、まだこの国が荒れていたかな。名前も知らないけど、少しの間だけ遊んだ友人が、闇に消えるのを……私は止められなかった。黙って、見て、見ぬ振りをした。……あいつは……」
「アイネアス、だから、御蓮の軍人に?」
「……ああ」
「さ、早く喰わないと、冷めるぞ?」
 アイネアスは少し冷めたスパゲティをほおばった。
「……うまいな」
 突如、菊田のポケットがうなり始めた。
「?どうした?キクダッ!敵か?なんだこの音は」
 菊田はポケットから携帯電話をとりだした。
「……なんだ……。携帯電話か……」
 アイネアスは安心したような息を漏らした。菊田が電話に出る。
「もしもし。ああ、李か。ああ?大丈夫だって。何の心配してるの?大丈夫。危なくはないから。ああ、それは、ちょっと怪我してるリズの人を、また?またって何だよ」
 その言葉を聞いているアイネアスにはまさか。と言いたげな表情に変化していった。
「ああ、それは大丈夫。あー、ああ、できたの?そうなんだ。んじゃあ、点検ね。うん。わかった。オーケー。うん」
 菊田は電話を切った。
「……?どうした?アイネアス」
 アイネアスは菊田の方をじっと見つめると息をスッと吸って、顔を上げた。その目は菊田を確実に捕らえた。
「どうした?」
「……い、いまの電話の相手は……誰だ?ゴンザエモン」
「女房だ」
 菊田は冷静な判断力を持っている人間ならすぐばれそうなにやついた笑い方をした。
「……女房……そうか……」
「いや、嘘だけどね。」
「……うそ、だと?」
「あははは。信じたな?アイネアス!」
 菊田は腹を抱えて、アイネアスを指差しながら笑い始めた。
「……キクダ……貴様……」
「あ、もう、足の方とか、治ってるんじゃないの?」
 キクダが話を逸らす
「……はあ。そうだな。キクダ。」
「やっぱり、リズの薬は違うな。骨折もすぐなおる。後、一週間ぐらいだよ」
「……早く、包帯を取ってくれ」
 菊田は、アイネアスの足に巻かれた包帯を取った。
「ヨシ。治ったな。歩けるか?今日の分の包帯の交換は、自分でできる……よな?」
「……わかったよ」
「じゃあ、俺はもうすぐ、ここを出る」
「っ!どうしてだ?キクダ!私はまだ治っていないぞ!」
「肋骨も治ったし、肩も、比較的順調だ。ここから御蓮はそう遠くない。……じゃあな」
 菊田は外に出ようとする。アイネアスは必死になって追いかけようとするが、殺気まで車いすに乗っていたから、そんなに速くすすむことはできなかった。
「……ゴンザエモン……」
 アイネアスの手が、一瞬だけ、菊田の裾に触れた。菊田が振り返る。
「……アイネアス、お前は軍で、俺は、世界を変えるために、生きる。……またいつか、生きて会おう」
 菊田はポケットの中から一つのネックレスを取り出した。
「アンティーク物だぞ。俺は、それに誓おう」
 菊田はアイネアスの返事を待たずに、草や木の枝をかぶせられたスルトのコックピットに飛び乗った。
‘ククク。良いのか?菊田’
「……いいのさ……」
 菊田は通信を開いた。
「李か?名前、決まったぞ。……ああ。」



「……トゥ・チェンジ・ザ・ワールド、っていうのはどうだ?」