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one+one

素晴らしい偶然。僕は君とぶつかった。
白い息が止まって、鼻の先が赤く染まる。
そう、素晴らしい偶然。僕は君とぶつかった。

白い息が宙に舞う。
君は目を丸くして僕を見る。
ああ、その気持ちは僕だって同じだよ。

君が居なくなって2年。
いつだって心に引っ掛かっていた君が、どうしてここに居るんだろう。

久しぶりなんて言葉じゃ埋められない溝が、確かに僕らを遠ざける。
その溝は変わらないまま、家までの坂道を歩く。

何を思って君は、僕の隣に居るのかな。
ああ、君の意志では無いだろう。

それでも、ねえ、

君の家はあっちからでも帰れるよ?


左の指に指輪が光る。華奢な指が余計に浮き上がる。
月影に入れば、2人だけのスポットライトがあたる。
この瞬間、僕らは僕らになれるかな。

自転車の向こうに君の足音を聞きながら、夜の道を歩く。
君はずっと話し続ける。まるで僕を阻むように。
上手く行かない事ばっかり話さないでさ、楽しい事だってあるだろう?

そんな気持ちを察したように、君はため息のように微笑んで、そしてまた歩きだす。

君の長い髪が、細い肩が、透き通る肌が、その横顔が、幸せだと主張する。
愛されている事を感じさせる。

きっと、幸せなんだろう。きっと、愛されているんだろう。

そう、僕の知らない誰かに。いつか僕がそうだったように。そして今も、同じように。

僕は知らずに君を遠ざける。君は知りながら僕を遠ざける。
そう、君はその事を知っている。そして僕も知っている。きっと誰よりも、君よりも。


ああ、月影が2人を照らす。1人と1人が照らされる。
僕らは僕らになれないまま、1人と1人で歩き続ける。

見えないものを、それでも確かに痛感して、その度に僕は空を見る。
特別にはなれたって、1番にはなれないよ。

例え君が1番でも。例え君が特別でも。ああ、いつか君をさらえたら。


曲がり角で微笑んだ君に、僕は笑って手を振った。
素晴らしい偶然は偶然のまま、君の背中を見送ろう。いつか運命にしてみせる。


君が見せた笑顔は、僕の隣と何も変わらない。
君の笑顔だけが、僕の存在意義だった時と。

そうやって君は、いつだって僕を見つけてくれた。ああ、あれは夢じゃなかったんだ。


なあ、名前も顔も知らない誰か。君にあの子を預けるよ。

ただ、僕が迎えに行くまで。
僕があの子を見つけるまで、それまで。

泣かしたら承知しない。

ただ、僕はあの子を渡さない。
いつだって僕を意味付けてくれたあの子は、何よりも輝くから。


その光に手が届くのは、僕らが僕らになるのは、ほら、もうすぐだ。