広告記事の取消文・右の記事法律講義


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広告記事の取消文
 本誌六月号の読者は、欄外にあつた面白い広告文を読んだ。処があの広告文が、日本伯爵の逆鱗に触れ、幹事が呼付けられて大目玉を頂戴したかして、十三日に社会政策実行団幹事の一人、中村太八郎君が来られて、大に私を叱り付けた。続いて幹事の寄合から評議員会の招集となり、会では、土方伯に対する不敬を以て、私を除名する事に衆議は一決したが、幸ひ斡旋する者があつて、私の名誉の為めに、除名は止めて諭旨退官と云ふ事に敗けて呉れた。
 そこで今度は諭旨退官の通知と正式の広告記事取消の遣外大使は誰が局に当るかと云ふ問題で随分議論もあつたとの事ですが、先づ当今では、兎に角堺利彦君に如くものなしと云ふ訳か、十五日の朝同君が来られ依願免官の諭旨の外大体左記取消文言の如く、達しがあり且つウンと油を取られた
      広告記事取消請求書
 拝啓、貴殿御発行の「平民法律」第七年六月号欄外に御掲載有之候、平民法律所広告記事中に、顧問、日本伯爵土方久元と記載有之候へ共、当団に於ては未だ伯爵閣下に顧問を御願致したる事無之のみならず、或一派の人より多少危険人物視せらる米国伯爵と名を列せられ、世に誤解を招く様の事有之候ては、当団として誠に伯爵に対し面目なき次第に付、以後篤と御注意相成度、又私としては顧問となりたる事絶対に無之、名誉推薦顧問の意に有之候なら、堅く御辞退申上度候
 右様の次第に付此全文御掲載の上至急前記広告記事全部取消相成度、此段新聞紙法により及請求候也。
 大正七年六月十五日
          日本伯爵 土方久元
          社会政策実行団
          右二名代理人 堺利彦
米国伯爵 山崎今朝彌 殿
 私があの広告を無断で無料掲載したのは、何も悪意があつた訳ではなく、従兄弟同志の間柄であつて見れば、日本伯爵からソー大した問題も起るまいと天から馬鹿にして懸つたのが悪かつたのでした。然るにコー諸君から、真面目に掛合はれては、誠に一言の申訳をする勇気もなく、只管恐縮して退却するの外ありません、依て茲に恭しく前記広告全部を取消し敢て謹慎の意を表します。併し左の広告は是非御一読を乞ふ。
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 平民大学令第八条に依り、左記を本学名誉学員に推薦す。
          元帥、議長、公爵 山縣有朋
          学長、米国伯爵 山崎今朝彌
          元宮内大臣元伯爵 渡邊千秋
          実業家男爵 大倉喜八郎
          教授、法学博士 上杉慎吉
  大正七年七月
              平民大学
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右の記事法律講義
 土方伯が事実平民法律所の顧問で無いのに無断で顧問として広告したる本件の実際問題に於て、土方伯は如何なる権利があり、発行人は如何なる責任があるかは、中々興味ある法律問題です。が土方伯は(一)新聞紙法の規定に従ひ其取消を求め、応ぜざるときは、其点に付告訴する事が出来る(二)平民法律所又は社会政策実行団と云ふものが泥棒団体と云ふと同一であると、云ふ前提で、名誉毀損の刑事問題又は慰謝料請求の民事訴訟を起す事が出来る。併し此前提は迚も問題にならない又米国伯爵と名を並べたと云ふ点も問題にはならない。要するに前記(二)の権利は到底行はれないと断言するを正当と信ず。
 上段文例中の堺利彦君の肩書代理人は、土方伯に対しては複代理人であらふと思ふ。複代理人とは、土方伯を実行団で代理して、実行団から又堺君に代理を頼んだ事である、又実行団が土方伯の為に為す行為は、土方伯から頼まれたかも知れぬが、頼まれもせず、丁度無断広告の如く、勝手にやるのかも知れぬ、法律上前者は有権代理又は単に代理と云ひ後者は無権代理と云ふ、実行団が有権代理であらふと無権代理であらふと、又堺君が代理人であらふと複代理人であらふと、之れを又単に代理人と云ふは法律上敢て差支ない。
 最後に、平民大学令第八条に依て平民大学名誉員に推薦された上記諸氏は勿論の事之れを辞退する事が出来る。
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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