題なし


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題なし
 弁護士の一番厭な仕事は依頼人の愚痴よりも判決の言渡を聞く事なり、特に上告には千三つの原則あり、既に早く弁護士控所給仕の電話があれば必ず破毀の報告なり庶務より催促する時は棄却に極つてる。棄却の時は庶務より電話で二階へ、破毀は通知係が大声で駈け上る。人情とは云へ人間程ケチ臭い可愛い正直の動物はない。
 御幣は担ぎ度きものなり。今年いの一番に上告部に受付けた、京都の吉見弁護士と協同の大正三年(れ)第三一七六号が破毀となり、幸先好矣と祝ふ間も無く、続いて送られた三件悉く連瓶打に破毀となつた。通知係は「先生何か魔が指しはしませんか」と云ふ、小生も早速吉見弁護士に「何かの間違故決して御心配なく」と書き送つた、事務所としては天地開闢以来の初物。
 民事部の判決に感服「せぬ」のと「する」のとあり、法理論や根本問題、天下国家は何うでもよいが、折角書上げた論点に、拍子木に鼻の、矢鱈にキチンキチンと「事実認定の攻撃」は「せぬ」、依頼人の懇願止むを得ず、恐れ乍ら提出した不服にも噛んで飲ませる様な理由を付して、呉れる事あるのは「する」、蓋し智仁ブーブは御代の御宝丁寧親切が判事の取柄。
 日本人に大和魂あり、家に家風あり、部に部風なかる可からず、民刑各部の判決を各部に配列し、其親切さ加減、其狡るさ加減を研究して見たが、黒星が遽かに白星となつたり、白星が急に黒星になつたりするので、結局無駄だから止した、此度は主任々々の点取表を拵へて見る事にした。
 弁護士天氷居士の「上告の破毀理由を読んで」は、此形勢では刑事上告は調査に熟練すると云ふ一の事務に化して仕舞ふ、学問の為め慨嘆すべきだ、其救済法はと云ふ大論文だが、余り事務所や月報の提灯持故極りが悪くて遠慮の上没書した、投書は悪口に限る。
 編集会議で今月からは、ズツト引締つた威厳のある月報にすると決議した、「乃公は古来未だ曽て感服したり為めになつたりした議論や論文を読んだ事がない、自分の書いた物が人の為になつては損だ乃公は広告になる事の外は何も書かぬ」と拗ねると、「此奴何時も狡るいから事務所の受けた判決要旨の毎号摘録役を命ずる」と決議された、来月から心配だ。
 二十世紀の山口君が君の悪口が時事通信社の(大正の代表的人物)に出てる、山縣山本同格だからマズ名誉と思へ」と慰める。
 君性は山崎、名は今朝彌、米国伯爵は其通称、明治十年逆賊西郷隆盛の兵を西南に挙ぐるや君之に応じて直に信州諏訪に生る云々、爾来頻りに振はず、天下太平会、帝国言訳商会、私立天理裁判所、軽便代議士顧問部東京上告専門処等は皆君の発明経営する所、惜むらくは君元来ケチにして矢鱈に金を出さず。
 成程何度も来たが金は出さなんだ。日本弁護士綜覧の転載で一寸終りの一句丈けが、真実名誉とこそ思へ何のコレ式の事で。
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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