当所旗印 民主々義と自由主義

当所旗印 民主々義と自由主義
 民主々義は世界の大勢なり天下の輿論なり、之に逆行する頑冥の徒、危険の思想は必ず亡ぶ。当所民主を提唱して茲に八年、所論今日漸く世に認めらる、豈嬉しからざるを得んや。微力到底完全を企及すべからずと雖も又聊か確信する処あり、努力以て信任に応へ成績を挙げ苟も期待に背かざらん事を期す。只憂ふる処は民主に対する世の誤解なり、民主決して民本にあらず、両者は根本に於て全然其意義を別にす、当所は成立に於て聊か他と其国体を異にし民刑上告を以て専門とす。又民主必ずしも刑従にあらず、否其数と実に於て当所は正に寧ろ刑主民従主義なり。然るを故ら頻りに民主を高調する所以のものは唯夫れ時代思潮に順応したるに外ならず、敢て元祖の名義を争ふ意にあらず、区々たる大義名分我に在て又何かせん、当所の眼中、唯福利満腹あるのみ。
 自由主義を以て、専恣放縦無規無則、人を駆つて再び猛獣に回するものなりとするは、畢竟専制家又は其代弁人の曲論なり、愚論なり空論なり、ポリシーなりゴマカシなり。之を当所昨年の実験に徴するに、自由は自在に準範を生じ、準範は自然に規律を為す、秩序あり整然たり、事件に従ひ人物に応じ、料金も亦おのづから一定す、未だ曽て損失あるなし。無料後金何んぞ惧るるに足らん、人間至る処に平均あり。然らば茲に再び自由の大旆を押し立て、旗鼓堂々亦新なる一年を奮戦せん哉。
 大正八年一月一日    東京 上告専門所
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
最終更新:2009年10月25日 20:38
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