工場閉鎖の場合


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工場閉鎖の場合
      工場閉鎖中の給料は支払ふべきものなり
 工場閉鎖は休業、廃業及締出しの三つを想像する事が出来る。休業、廃業に就ては別に論ぜず締出は職工に対抗する為工場資本家が用る労働戦術の一つで経済上職工を困しむる目的を以て全部又は一部の職工に対し臨時若は永遠に自己の都合若くは其他の理由にて職工の入場を拒む行為である。故に休業廃業には締出の為の休業廃業があり又工場閉鎖には解雇首切を伴ふを常とするのである。
 工場閉鎖中の給料は支払ふべきものであるや否や、民法六百二十三条には雇傭は当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約し相手方が之に其報酬を与ふることを約するに因りて其効力を生ずとあり、之のみに依れば雇入契約が成立すれば雇主は雇人に報酬を支払ふ事を要する如きも次条の労務者は其約したる労務を終りたる後に非れば報酬を請求することを得ずとあるを見れば労務に服せざる者に報酬請求権なき事明である工場閉鎖の場合は働主が労務に服せざること論なければ此規定のみよりすれば、働主に休業中の給料請求権なき道理なり。併し之れは大に不都合なり、抑も働主となる程の者は皆賃銀に依て生計を立て以て露命を繋がんとするものにて、金持が国利民福や道楽金儲の為めに事業を経営するとは其目的が根本に於て異る。資本家から見れば労働者などは機械や牛馬と違ひ、別に輸入も注文も面倒も要らず雑作なく何処からでも持て来れる品物であらふが働主の立場から見れば資本家はソウ容易くは見付からぬ、得られぬ、然るを其大事大切の資本家が工場閉鎖を勝手に行ひ而かも働主に給料を遣らなんでもよいとしたなら労働主の立つ瀬はない。よし勝手ではなく止むを得ざる事由で工場閉鎖即ち休業廃業するにしても其止むを得ざるは工場主の不仕合せで其罪咎を働主の所へ持て来てはならぬ、如何に無慈無悲の世間でも之を正当とは認められぬ、誰の考としても此場合は、休業中又は廃業後相当の期間中の給料は働主に支払すべきを相当と考へる、或は職工側に不都合のあつた時も休業中の日当を支給しろと云ふ事は不公平であると云ふかも知れぬ、が此場合は解雇すればよいではないか。此理由に依て民法第五百三十六条の第二項には雇主の責任に帰すべき事由に因り働主が義務を履行する事能はざるに至りたるとき(即ち工場閉鎖の場合等)は働主は反対給付(給料)を受くる権利を失はずと規定した、尤も働主が休業中他に勤務して双方より日当を取る等は余り甘過ぎる、故に但書には、但自己の義務を免れたる結果利益を得たるときは之を雇主に償還(差引)する事を要すとしてある。又民法第六百廿八条に依れば、事実職工側の不都合で休業しなければならぬ位の時なら解雇ができる。
      工場閉鎖の時よく起る問題
 工場閉鎖の時よく起る問題だが、裁判になると工場主から屹度職工から入れた雇入契約書や誓約書が出て、其れには何時何時工場主の都合で休業しても其に就て鐚一文請求仕らず候と書いてある、而して職工等は何時でも之に驚いて面喰ふ。併し之れはイツも云ふ通り例文に過ぎない約束文で無効のものである、優勝者と劣等者との契約はイツでもコンナもので弱い方が強い方の言なり次第になる、而して双方共ドウでも之れに依らふと云ふではない、命ずる方でも掟だからマーチヨツト判をと云ふて出す、押す方でも録々見もせず無論読みもせず捺す、高利貸証然り借家借地証然りである。而して此等は何れも(無理の部分だけ)裁判上例文である掟である無効であるとされてる。工場閉鎖の場合も亦然り。従てソンナ特約があつても工場閉鎖は不法である。併し此不法と云ふは只賃銀支払を要すると云ふ不法に過ぎぬ故、職工には賃銀請求の外損害要償の権利はない。
 締出しの場合即ち労働争議に於ける工場閉鎖の場合には同時に解雇し又は臨時に休業して後首切る、従て解雇は直ちに効力を生ずるか又は二週間後に生ずるか、解雇を申渡されたる後は出勤を要せざる否か、特約の効力如何、慣習なりや否等の問題が頻発するが之れは解雇と関連するにより其項に説く事とする。
<山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>
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