敢て天下憂国の士に訴ふ

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敢て天下憂国の士に訴ふ  現今上告事件を特別に集める者(悪ければ取扱ふ者)に、高木さん牧野澤田中村亀山猪股諸君東京法律事務所に私、其他十数名ありて中々の盛況である。而して此機運を作つた者は私は、私であると確信する。  従来上告事件は場所関係より東京の弁護士に、友人関係より知己の弁護士にのみ依頼したのである。依頼さるる弁護士の上告の技倆と成績とを吟味して、少々乍ら、知らぬ弁護士に又は東京の弁護士が上告事件を託するに至つたは近来の事である。而して此機運は誰も作らぬ、併し私。  場所が行為を支配するに非ず。類が類を以て集るにも非ず。只其技倆と成績とに依り、東京の同職特に先輩より上告事件調査の委託を受くる者、私の外に人がある。併し民刑共に、は、他人の名を知らない。  私は同輩若しくは後輩より上告調査を命ぜらるる経験の方が却て少ない。先輩ですら、のに、之れは何故であるか、私がツンボは私の恥でない。私が普通事件全部を人に依頼するからとて、私の恥でない。諸君が餅を餅屋から買ふに何の不思議か之れあらん。私は御召命があれば即刻参内します。  私は普通弁護士としては第二流は愚か、第三流も先づ頗る危いと明見し、上告弁護士としてなら日本では世界一にもなり兼間敷杞憂があると予断した。之れが即ち私が上告専門を畢生の事業として考案した所以であります。就ては私は先づ第一に天下の義人をして上告は凡て必らず上告専門家に遣らせて見ようと云ふ癖を作らせ、一方には上告専門家をして其研究兼営業団体を作らせて見度い。敢て問ふ、天下に憂国慨世の士は無き乎。 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>

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