廃業萬両の弁解にあらず

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廃業萬両の弁解にあらず  去年東京法律事務所から壱萬円取つたと云ふ評判から或親戚に家政の困難と秘密に属する其内情とを打明けて千円の融通を申込まれマサカ願懸を破る訳にも行かず、断らぬ訳にも参らす、大に閉口した。其外では誤解の為色々面白い思こそしたが格別の損はなかつた。  併し上告廃業の評判には少々面喰つた。事務所で一般に配つた端書に対しても、真実か又は人の喧嘩を見物し度いと云ふ僕等の様な野次馬性からか、之に対する弁解を勧誘して呉れた友人が多かつた、僕としては実際負け惜みではなく、聊かも苦痛を感ぜぬ故、却て友人の親切を用心しただけであつた。処が次には地方の友人から、事務所で要所々々へ出した手紙を甲第一号証として、何故廃めるのかとか是非弁解を為ろとか迫つて来た。併し今更神様を欺くことは出来ぬ、又前の友人の手前もある。考へた末私は三百理屈ではあるが、弁解せずして弁解になる訴訟をオツ初める事に決心し着々と其準備に取掛つた。  処が又能く考へて見ると、仙人で通る田坂君や聖人の如き阿保君を相手に喧嘩をすれば変人の僕が発狂人になるは必定、縦令初めた処が愈々となり佐々木君が出て来て口説かれれば忽ち円満られる事も定まつてる、常に先見の明を誇る僕としては、如かず物の道理の早く解る吉田君と話しせんには、と云ふ様な事から、去年六月頃皆で一堂に会し兄弟の杯をして総てを丸く手打ち、損失平等負担で、計算も本月限りで全部済になりました。依て永らく心配を懸け気を揉ませ、興がらせ、迷宮に入れて置きました諸君に報告終り。 <山崎今朝弥著、弁護士大安売に収録>

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