医薬の法律

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医薬の法律           米国医学博士 日本弁護士 山崎今朝彌       問題 ■或医師が七月一日午後二時腸窒扶斯病疑似症患者を診断し七月二日朝十時頃、再び診察を為すことなく其時初めて診察したる事とし初めて警察署に、伝染病届、患者何某病名腸窒扶斯疑似症、大正六年七月二日十時診断と記載して届出たり、後日発覚して検事に起訴され第一、二審共、実際診断した時より十二時間内に届出を為さざりし点は、伝染病予防法第二条により、事実診断せざる日を届書に書き届出たる点は、刑法第百六十条、医師警察署に提出す可き診断書に虚偽の記載を為したるときは三年以下の禁錮又は五百円以下の罰金に処すとの条文に依り、双方にて罰金五十円に処せられたり。       解答 ■私は右判決の後の分を不当と信じ、刑法第百六十条に所謂医師の診断書とは、医師が診察の結果に対する判断を表示して、人の健康上の状態を証明する為めに作成する文書を指すものなれば、伝染病予防法第三条の規定に依り医師が伝染病患者を診断したることある旨の届出を為す為めに作成する届書の如きものは診断書にあらず。被告は只伝染病予防法第三条の届出期限を過したる為め、単に被告が為したる日時を詐り記入したるに過ぎず、即ち被告は官に対し虚偽の申述を為したるに過ぎず、此場合は警察犯処罰令第二条二十一号の、官署に対し不実の申述を為したる者は三十日未満の拘留又は二十円未満の科料に処す、とあるに該当するものなり。との理由にて大審院に上告したる処、大審院は私の意見全部を容れ、前判決を取消し、十二時間内に届出を為さざる点に付き罰金十円、届出書に虚偽の事を書きたる事実に付き警察犯処罰令違反として科料五円に処したり。       問題 ■商人には商号登記があつて店名を登記すれば、他人は再び其店名を使用する事が出来ず、萬一之れを使用する者あれば取消を求め又は損害を訴へる事が出来るが、医者は其病院(医院、療院)名を登記して不正競争者の害を防ぐ方法は無きや。       解答 ■商業登記は商法第十六条に依り商人のみ為す事を得、商人とは商法第四条に規定する如く商行為を営業とする者にて、商行為とは商法第二百六十三条以下に列挙せる営業等なるも、医師は其中に類別しあらず、従て医業は商行為にあらず、又医師は商人にもあらず、故に医師は病院名を登記する事を得ず、故に医師会に特別の規約なき以上何人も勝手の場所に於て順天堂病院東京病院又は平民病院等を随意に設け得べし。 ■然らば如何なる方法を以てするも病院名を登記する方法なきかと云ふに、病院を民法第三十五条商法第四十二条により会社となすときは商法の規定に従ひ病院名即ち会社名を登記する事を得、現に法団法人合資会社何々医院の広告各所に見ゆ。 ■次に問題となるは、右の方法に依り登記したる病院と同一名義を使用する者あらば之れを差止めるを得るや如何にあり、或は病院が既に会社の取扱を受けて登記したる以上は他の会社と同様他人は之れを侵すを得ざるべしと、一応道理ある処なるも、会社組織により病院名を登記する事が出来る事と其名義を専用する事とは異る事故、他人が同一名義を用ひても仕方なし。 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に修正した。> <底本は、『平民法律』第6年11号7頁。大正6年(1917年)12月。>

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