chaos boat


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あ、ありのままに今起こっていることを話すぜ。
ラ、ラスボスを倒した。 悪の秘密兵器も破壊した。 僕はグッドエンディングに辿り着いたと思ってた!
あ、あとはお約束の大団円。 僕をヒロインみんなで取り合ってエロエロハーレムエンド。
なんていいねと思っていた時期が僕にもありましたと思っていたら、メインヒロインの二人が ヤ ン デ レ 化 した!
な、何を言ってるかわからねーとは思うが、僕も何が起こっているのかまるでわからねー。
り、梨深の絶対領域でオナニーとか、七海の手首コキで射精とかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。
も、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。

「ふ、ふひひひひ。 こ、これは夢だ……きっとまたいつもの妄想さ……」

そんなことをブツブツと呟きながら、僕は今自分が置かれている状況に必死になって現実逃避を決め込んでいた。
だってしかたない。 こ、これは逃避してもしかたないんだよ、ふ、ふひひひ……。

ほとんど電灯もロクにない薄暗い僕の部屋。 そこで僕を含めた三人は奇妙にもその場にゾンビのように立ちつくしていた。
すぐそこのデスクPCにはさっきまで視聴していたブラチューの映像が流れている。 スピーカーから聞こえてくるその星来たんの萌えボイスが、この重苦しい状況には余りにシュールすぎた。
本当ならイスに座りそれをウキウキ気分で眺めていただろうに、ぼ、僕はなんでこんな修羅場に巻き込まれているんだ……。

「どいてよ、おにぃ。 梨深さん……殺せないよ」

僕の背後で――七海がささやく。
手には十字架を模した美麗なディソードを構えながら、僕の前に立っているその『獲物』にそれをおもいきり振り下ろそうと力を込めている。
その声色には普段のあの無邪気さなど欠片も無く、あの可愛い妹と同一人物だとはとても思えなかった……。

「タク……そこ、あぶないよ? 早くどいてくれないと、タクも一緒に殺しちゃう……」

僕の前で――梨深がつぶやく。
花が咲いているような二刀のディソードを両手に携え、いますぐにでもそれを前に突き出したい衝動を抑えるように――手元をピクピクと動かしている。
それには早く僕の背後にいる『獲物』の血を見たいといった興奮が見え隠れしていて、言葉通りに僕の身体ごと貫きそうなほど禍々しい悪意をさらけ出している……。

そう……し、信じられないだろうけど、これが今の僕がおかれている異常な光景だった。
七海と梨深――二人ともその手にすでにリアルブートしたディソードを構えていて、今すぐにでもそれをお互いの身体に振り下ろしかねない雰囲気だ……。
きっと、ぼ、僕が間に立っているからそうできないだけ。 ここから一歩でもずれれば間違いなく二人はディソードで殺し合いを始めてしまうだろう。
そ、それはいいnice boat ですね。 ふ、ふひひひひ。

……す、少し話を戻そうか。
まずは落ち着こう、僕。 疾風迅雷のナイトハルトがこんなことでうろたえてどうする? ま、まだ慌てるような時間じゃない。
とりあえず最初に言ったとおり、この一ヶ月ほんとに『色々あった』。
詳しくはネタバレになるから言えないけど、ま、まあ結局のところ、その後も僕の日常はさほど変わっていなかった。
あいかわらずフィギュアやエロゲーだらけのこの部屋で毎日ネトゲ三昧だし、愛しの星来たんとのキャッキャウフフも継続中。 あいかわらずのキモオタっぷりだ……ふひひ。
……まあ学校には前よりはちゃんと行くようになったかもしれない。 り、梨深が誘ってくれるから、し、仕方なく行ってるだけだけどね。
で、でも三次元女は相変わらず嫌いだ。 人間そんなにすぐに変われるなら苦労は無いよ……。
ま、まあ一部に良い子もいるってわかったけど、それもせいぜい嫌いじゃないかなって程度。 べ、べべべつに好きとかそういうんじゃないんだからね!

そんなこんなで、こんな卑屈なキモオタの僕でも最近ようやく――ようやく三次元に希望が見出せてきたと思っていた時期もありました。

「ごめんね、ナナちゃん……? タクの大事な妹だからこんなことしたくないけど、ごめんね。 あたしのタクに手を出すなら……殺してあげる」

「おにぃはナナのだよ……? 大好きなおにぃに甘えていいのはナナだけなの。 ナナのおにぃを取る梨深さんなんか……死んじゃえ」

……うん。 ほんとにそう思っていた時期が僕にもありました。
ひさしぶりにこの言葉を使おう――う、欝だ。

やっぱり現実は甘くなかったってことさ。 ちょっと油断したら ご ら ん の 有 様 だ よ !
ヤンデレなんてアニメやエロゲの中だけのものだと思ってた。 もし仮にそんな女の子がいたとしても、僕には絶対無縁のものだと思ってたのに……。
梨深も七海も、ま、まともじゃない。 僕が言うのもなんだけどこれは異常だ。
瞳はまるでガラス玉みたいに感情が感じられなくて、壊れた人形のようにブツブツと同じ言葉ばかり繰り返している。
い、いくら僕への愛が深いからって、これはないよね? な~んて、ふひひサーセンwww。

前の梨深と背後の七海……。
二人の殺気が徐々に阻止限界点に近づいているのを感じながら、僕はこんな状況に陥ってしまった経緯を振り返ってみることにした……。

――――――――――――――――――――――――――――――

「おにぃ♪ おにぃおにぃお~に~い~♪」

シャンプーの良い香りが僕の鼻腔をくすぐる。
女の子の髪からこんなに良い匂いがするなんて、少し前の僕なら想像すら出来なかったことだろう。
胸元に押し付けられている鼻先がとてもくすぐったい――七海が僕の胸に抱きついていた。

「えへへ、おにぃ大好き。 ん~ん~ん~おにぃ~♪」

僕の胸にグリグリと顔を押し付けながら、七海がそう甘くささやいていく。
すこし前まで僕を暗いだのオタクさんだなどと罵っていたくせに……こ、これなんてツンデレ妹?
あまりに現実離れした状況。 つまりはエロゲ展開にまた妄想の類じゃないかと疑ってしまうほどだ。
なにせ僕の妄想は少し人間離れしすぎている感がある。 この前みたいに抱き締めようとした瞬間、泡みたいに消えてしまうなんて鬱展開は二度とゴメンだった。

じゃあ、今こうして胸元に彼女のぬくもりを感じているということは現実だということなのか?
七海のデレデレ言動っぷりは多少信じられないが、僕にはこの感触でどうしても妄想ではないということを受け入れなければならないようだった。
けれど……そ、それはそれでダメじゃないのか?
妹に抱きつかれるなんて慣れてない。 というか、僕は女の子に触れられることすらあまり慣れてないんだ。
七海に抱きつかれているという現実を受け止めていくと、僕はより一層自分の顔が紅潮していくのを感じた。 

「ん? なんかおにぃの身体、あったかくなってきてる……。 熱でもあるの?」

「ち、ちがう。 というかおまえ、な、なに当たり前に抱きついたりしてるんだ。 離れろよ……」

「えーいいじゃんべつに兄妹なんだし。 っていうかわかった、おにぃ照れてるんだー♪」

「ばっ……!て、照れてなんかない! おまえみたいな幼児体型に抱きつかれたって、ぜ、ぜぜぜんぜん嬉しくないね。 ふん!」

「ぷ……バレバレだよおにぃ。ほんとはナナに抱きつかれて嬉しいんでしょ? おにぃは女の子に免疫ないもんねー、ほーらうりうりうり♪」

「ひぎぃ……だ、黙れ小僧! ていうかおまえさっさと帰れよ邪魔なんだよぉぉぉらめぇぇぇぇ!!!」

「やーだ、帰らないよ~だ♪ 今日はおにぃとずっと一緒にいるって言ったでしょ? 絶対はなさないもんね~にひひひひ♪」

どうやらいくら説得しても無駄らしい。
僕の笑い方を真似するようにしながら(バカにしてんのか!)、七海は更に胸元へギュ~っと顔を押し付けてくる。
サラサラした髪が顎の辺りにくすぐったくて、シャンプーの良い香りもふたたび僕の甘えさせてやりたい理性を揺らしてくる始末だ。
というよりこいつ、こんなに僕に甘えて恥ずかしくないのか? 仲がいい兄妹ってレベルじゃないぞ!
それとどうでもいいけど、さっきからお腹のあたりにあたってるプニプニ感はどう見てもおっぱいです本当にありがとうございました。
まあ、あまりに小さすぎて微々たる感触なのが可哀想だけど。 ふひひ、七海貧乳乙。

「だ、だいたい、僕はこれから星来たんとのデートがあるんだ。 おまえなんかと遊んでる暇はない」

「え~、デートっていったってアニメ見るだけでしょ? だったらナナがそばにいたっていいじゃん」

「ひ、一人じゃなきゃ集中できないんだよ! 僕にとってブラチューは人生において何よりも大事な……」

「知ってるよ、おにぃはあいかわらずのオタクさんだもんね~。 あ、じゃあじゃあ、ナナも一緒に見てあげるから、それならいいよね? ね?」

そう言ってクイっと首をひねりながら、僕の目に甘えさせてオーラをぶつけてくる七海……。
おもわぬ三次元妹の萌え仕草に、いいよ…なんて言葉が口を付いてしまいそうになる自分が情けなかった。

やはりおかしい。 今日の七海はどこか様子がおかしいぞ!

幼児体型。 帰れ。 邪魔だ。 これらの僕の突き放す言葉にまるで動じる様子がない。
いつもならちょっと冷たくするだけで「最低!おにぃなんて○○の○○で○○して死んじゃえ~!」のテンプレが返ってくるはずなのに、今日の七海はあきらかに僕への好感度マックス状態だ。
これは今日のブラチュー、妹の視線に耐えながらの羞恥プレイになる可能性があるぞ……。

「た、頼むからもう本当に帰ってくれ。 明日学校の帰りにマクディ奢ってやるから……な?」

「そんなのヤダ。 ナナおにぃと一緒にいたいんだもん……ダメ?」

「ダ……ダァァ……」

どうしてもメ、と続けられなかった。 七海が急にシリアスに僕の瞳を見つめ返したからだ。
両腕はしっかりと僕の背中にまで回されて離さない。 もう、このまま愛の言葉を囁いてもおかしくない密着状態だ。
そしてわかる――七海はきっとわかって甘えているんだ。
こうして粘りに粘って甘えまくれば、なんだかんだ最後には僕が折れてくれるとわかっているんだ……。

先月の事件以来、どうも七海の中で僕はツンデレ兄貴の認定をされてしまっているらしい。
『おにぃは普段はそっけないけど、いざとなったらナナのことを誰よりも心配してくれるの♪』。
な~んてスイーツ(笑)なのろけ話を周りの友達に聞かせまくってるらしく、友人の間では西條七海はもうやばいくらいのブラコン人間。 ていうか恋人同士なんでしょ?状態らしい。
おまけに僕のPCにも毎日ラブメールをよこしてくる始末だし、その内容は取るにたらない日常のことばかり――それをとても幸せな出来事のように報告してくるんだ。
『大好きなおにぃへ』とかいうタイトル、マジで困る。 『血が繋がってなければいいよね?』とかいうタイトルも、本気で焦る。


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