テスト用ページ・その2

2,経済史の基本的枠組み

A.国家・市場・共同体

(1)国家(政府)←近代以降の国家の考え方

  1. 暴力の集中
    国家とはその支配領域内の他のどの集団にも勝る暴力資源をもつ機構
  2. 暴力行使の合法的認定権の独占
    国家は、殺人と死刑執行の区別;強盗と徴税の区別;不動産侵犯と土地収用の区別など不法な暴力行使と合法的な暴力行使を区別する権能も独占する
  3. 最小限の保護サービスの再分配
    国家はその支配領域内に存在するすべての者を、納税の有無や額、貧富の差に関わりなく、外国人であっても、他社の不法な私的暴力行為から保護する責任を負う
  • ①②に対する見返りとしての③の機能が大事
  • 何故国家は成立するのか?
    • ある立場:
      国家がない状態(無政府状態、自然状態)では、各人は自分の権利を守るしかないため、他者による侵害から自分の権利を実行的に守ることが困難である

      それを裁定する場が必要になる

      近代社会契約説の国家正当化理論(ホッブズ、ロック、ルソー)

    • 異なる立場:
      国家は必要悪ではあるが、大きくなり過ぎないほうが良い

      その極限形態=アナキズム(無政府主義):
      人間の権力欲、攻撃衝動、利己心などを直視してそれらに対する社会的統制の必要を認め、それを国家以外に求めようとする考え方

(2)市場

  • 需要と供給が一致してあるひとつの財について価格が成立し、その価格メカニズムを通じて効率良い資源配分を達成する交換と流通のシステム
  • 秩序維持サービス(警察、裁判所、生活保障)も国家より市場の方がうまく供給できるという考え方もある
    • 国家のやることがいつも正しいとは限らない
      暴力の集中は非常に危険なことを引き起こす可能性もある

      しかし、国家がいらないということにはならない
      市場で国家をなくすとすれば(市場が国家機能を担うとすれば)国家以上に危険なものを生み出してしまう可能性がある
  • 市場は①と②は満たしているのに、③の機能は果たさない
    国家が正当性をもつのは両方でバランスを取っているからである
  • 市場は決して国家成立前からある自然的秩序ではなく、国家を前提としている
    (財貨の交換は大昔からあったが、市場は近代国家が成立してからである)
  • 市場は国家が作った法律やルールに基づいて初めて機能する
    • 例:財産権、独占禁止法

(3)共同体(近代前後で性質が変化していると考えることも可能だが……→後述)

現在も存在するが、人間のレイシとともに古く、市場と違って国家がなくても存在しうる

  1. 構成員間の価値・信念の共有が外部の者との間よりも高い
  2. 構成員間の人間関係が直接的で多面的である
  3. 援助の循環を通じて長期的に負担と利益が均衡化される実践が集団内に存在する ↓
    構成員間の平等が重視される
    国家における再分配と違って、所得とサービスの再分配を国家的強制なしに実現できる
  • 限界:
    1. 工業化の進展とともに業績主義的競争や人の流動性が高まると維持できなくなる
    2. 平等を過度に追及することによる問題(安定はしているが停滞的)

      この秩序のなかでは自由は抑圧されやすい(プライヴァシーの欠如)

(1)(2)(3)のまとめ

  • 国家、市場、共同体はそれぞれにメリットとデメリットをもっており、どれかひとつだけを肥大化させると弊害が大きい

    社会システムを考える場合には、国家、市場、共同体という3つの要素を並存させて、相互の「抑制と均衡」をはかることが大事である
  1. 国家の組織的暴力と集団化の脅威(ソ連型共産主義)に対して

    分散的決定システムとしての市場と分権的秩序としての共同体がその緩和をはかる
  2. 市場における弱肉強食・格差拡大(市場原理主義)に対してて

    国家は独占規制や社会保障によって、共同体は相互扶助によって公正な競争を維持し格差の拡大を防ぐ
  3. 共同体による個人の抑圧・排除(戦前のムラ社会)に対してて

    国家は人権保障と法の支配の貫徹によって、市場は共同体外での生活機会によって個人の自由を救済する。
    (例:移動の自由がなければ、不満をもったままその共同体に留まらねばならない)
  • 共同体
    • 非自発的共同体……結社やアソシエーション。自らの意思で加盟・脱退。
      例:企業、政党、労働組合
    • 自発的共同体……近代以前の共同体。

B.前近代社会の共同体的構成~

「共同体」は国家と市場に比べれば前近代社会においてより重要であった

前近代社会では個人の活動に対する共同体の保護と規制が非常に大きかった
個人が共同体から自立する余地は非常に限られていたて

近代社会の成立=個人が共同体の保護と規制から自立していく過程
近代資本主義は、封建社会のなかから長い時間をかけて次第に形成されてきた

封建社会の2つの側面

  1. 一面で資本主義の順調な発達を阻害したり歪めたりした
  2. 他面で近代資本主義成立のための前提を用意した ↓
    近代資本主義の成立を考える際にはその前提として封建社会の特徴を理解することが必要
    封建社会の解体は、共同体の解体を重要な要素として含んでいた
    (※解体は非自発的)

C.共同体の一般的規定

  1. 資本主義社会における富の基礎形態は「商品」


    前近代社会における富の基礎形態は「土地」ないし「土地所有」
    単なる居住の場所ではなく、労働の場所であり、生産活動にとって必要不可欠な原始的労働集団の一大倉庫でもある
  2. 資本主義社会では、人と人との経済関係は市場における商品交換の形をとる


    前近代社会では、人と人との経済関係は共同体の保護と規制を受けながら営まれる
  3. 土地は共同体によって占取されるが、他方で個人的な生産活動の結果として得られた財貨は個人によって私的に占取される

    共同体は「土地の共同体的占取」と「労働用具・財貨の私的占取」という二つの契機をもつ

    この共同体に「固有の二元性」の孕む矛盾が、様々な歴史的形態の共同体を生み出すことになる
    (変化の原動力)

D.共同体の諸形態

  1. アジア的共同体
  2. 古典古代的共同体
  3. 封建(ゲルマン)的共同体

封建的共同体の基本的特徴:

  1. 血縁制的な関係は既に決定的な意義をもっていない
    土地占取者の地縁的集団である「村落」が土地の共同占取および成員の私的活動を規制する主体
  2. 「村落」全体によって「共同」に占取された「土地」が、各共同体成員によってすべて「私的に」保有され相続された~封建的共同体における各共同体成員によって私的に占取される「土地」
    1. 宅地と庭畑他
    2. 共同耕地:
      通常30ないし60の「耕区」に分かれていて、各共同体成員は各「耕区」のなかの細長い「帯状耕地・地条」を私的に占取した(混在耕地制)

      「耕地」とは、ひとまとまりの土地ではなく各「耕区」に分散している耕地片の総体
      (図1-1ドイツの一村落の概念図:プリント5,6頁の裏)
    3. 「共同地」
      各共同体成員は、共同地に対して自己の「耕地」に比例した使用権をもつ
      この三種類の「土地」の総和が共同体成員の持ち分の単位(=独「フーフェ」、仏「マンス)、英「ヴァーギット」)
    • ①宅地と庭畑地+②共同耕地+③共同地利用権
      各共同体成員は、この1フーフェを私的に占取することによって慣習的に標準的な成員としての資格を与えられていた
  3. 平等の原理的内容
    • 各成員家族の必要と能力という実質にかかわりなく「形式的に」1フーフェが割り当てられた

      「形式的平等」の原理


      1,2では各成員家族の必要と能力に応じて「土地」が分配された

      「実質的平等」の原理
      例:帝政ロシアのミール共同体の「定期的割替」
      (時が経てば、家族の構成・人数が変わるので、それに合せて……)

E.共同体規制

封建的共同体は、血縁的関係は薄められ実質的には地縁共同体となっていた
しかし私的に占取された土地は、近代社会におけるような自由な私的所有ではなく一定の共同体規制のもとにおかれていた

  1. 耕耘は大型の有輪犂(いわゆるゲルマン犂)によって行われた(←混在耕地制)
    (図表2-4 アルプス以北に普及した有輪犂、図3-1~3-4)
    有輪犂を使う順番や、耕す方向を決めなければならない
  2. 耕地はほぼ3つに均分され三圃制農法(開放耕地制)によって行われた

    混在耕地制と開放耕地制の故に共同体的規制が必要(耕作強制)
    (図表2-5 三圃式農法の作付家庭)

    三圃式Three-field system(1600から減少)
    穀草式(1600から増加、1900へと減少)
    輪栽式(1725から)
  3. 共同体成員は、共同耕地の持ち分に比例して共同地持ち分をもった
    当時の技術水準のもとでは一定の合理性をもっていたが、耕地の分散や共同体規制の存在は農民間の競争や経営の発展を阻害するものであった
    共同体の発展は、経済史的には「固有の二元性」の孕む矛盾から理解できる
    封建的共同体において「私的独占」の契機はぎりぎりのところまでせいちょうしていた
    近代資本主義は、封建的共同体を解体させることによって初めて成立しえた

F.共同体における保護

  • 共同体は成員を規制するが、他方で保護を与える
  • 成員が共同体の規制を受ける(=支配に従い義務を果たす)ならば、保護(=権利と生活)が保障された

  • 近代資本主義社会が共同体を解体して成立するということは、規制から逃れるとともに、保護(生活保障)も受けられなくなったということも意味する
    • 共同体が解体すると規制も消滅するが、生活保護の必要もなくなった
  • 貧困問題の発生
    • 前近代社会における貧困問題はどのように処理されていたのか
      ---一般に貧困の主たる原因は、失業、疾病、老齢
    • 現代社会では、これに対して保険とか年金とかで対処する


      これらのリスクに対して前近代社会では共同体と家族が対応
  • 共同体によって平等の度合いは異なっていた
    • 「実質的平等の原理」のもとでは不平等が固定化しないような仕組みがビルトインされていた


      封建的共同体における「形式的平等の原理」では「実質的な平等」は次第に保証されなくなった
  • 経済的基盤に格差が生じていた
    • 北西ドイツの村落住民の階層化:
      完全フーフェ農民 9世紀~12世紀
      世襲小屋住農民 13世紀~15世紀
      共有地小屋住農 15世紀~16世紀
      農民屋敷地内小屋住農 16世紀~19世紀
    • 「フーフェ」を与えられる農民家族の数は増えず、持ち分の少ない農民、後には土地をもたない住民(農村下層民)が登場
    • 彼らは、共同体によって生活を保障されたが、完全農民と条件は同じではなく、経済的基盤に格差が生じていた
    • しかし、共同体の解体とともに格差がさらに広がることを抑えるものもなくなった

      国家(政府)による社会保障(救貧法)の登場

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最終更新:2009年10月13日 12:49