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裏切り者

「うわーん、タケルー。ヨシが裏切ったぁ」
ぴーぴー泣きわめきながらカズヤが首にしがみついてくる。
背中を撫でてなだめ、タケルは憮然とした表情で後からやってきたヨシヒロに視線を向けた。
「で、今度は何事?」
「なんもしてねぇよ、俺は」
「嘘つけ、裏切り者のくせに!」
瞳いっぱいに涙を溜めたまま、カズヤは振り向いてヨシヒロに人差し指を突き付ける。
タケルははしたない、とその指を握って、ヨシヒロに目で促した。
「つか俺ァ、カズの『同盟ごっこ』に参加した覚えはないぞ」
「ごっこって言うな!」
「ごっこで十分だ。なんだ『バージン同盟』って、こっぱずかしい」
カズヤの趣味は同盟を組むことだ。それもほとんどが「抜け駆け禁止」を掲げたもので、
タケルとヨシヒロはいつも引きずり込まれている。
同じ先輩(♂)に惚れていたときの『紳士同盟』から始まって、全員フラれて『フリー同盟』、
今度は別々の人(全員♂)に恋をして『片思い同盟』と変遷を重ね、そろって彼氏持ちとなった今は
『バージン同盟』と称して「秘密でエッチすましちゃわないこと!」と一方的に約束させられている。
「え、じゃあヨシ、やっちゃったの?」
「まぁその、なりゆきっていうか、雰囲気っていうか」
「約束破ったー。ヨシの裏切り者ぉー」
「だから約束してないって。だいたいセックスなんて、恋人がいれば自然な流れだろ」
気怠そうに髪を掻き上げる仕種が色っぽくて、タケルはちょっとドキッとする。
遊び人のヨシヒロが未経験なんて最初は信じられなかったが、今ならその違いが分かる。
「そんなの、シンイチさんが大人だからだろ。俺はアツシといてもそんな空気にならないぞ」
「そりゃカズたちがお子様だからじゃねーか。タケルなら分かるよな?」
「え、タケルももうやっちゃったの?!」
「え、あの、」
急に話を振られて、タケルは顔が真っ赤になる。
ユウスケと二人きりの時は、そういう空気になりやすい。彼に「先輩」なんて甘く呼ばれると、
もうどうしていいか分からないくらい身体が熱くなる。
だがそのたび、勉強だなんだと理由をつけてタケルはごまかしてしまうのだ。
まごまごと俯いていると、勘違いしたカズヤが再び騒ぎだした。
「うわーん、タケルにまで裏切られたー」
「ち、違、ままままだやってないっ」
「そうだぞカズ。お堅いいいんちょーのタケルが、そうそうエッチに持ち込めるわけないじゃん」
「う、うるさいよ!」
けらけらと笑うヨシヒロに怒鳴り返しながら、そういえばどの同盟の時も、
最初に裏切ったのはこいつだったな、とタケルはなんとなく思い出した。