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イケメン若者×リストラハゲリーマン

最近の俺の楽しみは、大学帰りに近所の公園でハゲ親父に援助をしてやることだ。
初めて俺がこの爺に気づいたのは一週間前。
その時この湿気た爺は、俺が不味くて捨てたタコ焼きの残りを、
辺りを見回しながら公園に張ったテントから出てきて、ゴミ箱から漁っていた。
ホームレスの類に会ったのは生まれてはじめてだった。
一応スーツは着ていたが、遠目にもいつ洗ったんだか分からない代物で、
まあ、顔の造りはしょんぼりしてるが年相応で悪くは無い。
だが顔はうすい髭に覆われているのに頭には後頭部にしか毛が残っていないのが惨めさを強調している、
白髪混じりのハゲ親父。
たぶん、これがリストラさせられた奴の末路なんだろうな、とは思った。
俺の親父はこういう奴らを切って捨ててんだろうなとも、
こいつも俺には劣るが顔はそんなに悪くないからハゲてさえ無かったらヒモくらいにはなれたろうに、
ひどく可哀想な奴だなあとも、思った。
気がつくと俺は空いた缶ジュースの中に5百円玉を入れて、ゴミ箱に向かって投げて、茂みに隠れた。
ハゲ親父は一瞬ビクッと固まったが、辺りを見回すとまたゴミ箱を漁る。
缶ジュースの中に入った金に気づいたおっさんは、目をキラキラと、あどけない笑顔を作り……。

以来一週間、俺はあのハゲ爺に寄付を欠かしたことは無い。
募金さえしたことない俺なのに、なんだろうか。一種の中毒のようなものだ。
今日も湿気たおっさんの笑顔のために缶の中には五百円玉。
振りかぶって投げようとする、その手を背後から誰かに捕まれる。
「なっ……」
「あ、ああ、あなたが、"カンカンおじさん"ですか!?そうですよね……!?」
振り向くと、そこにいたのは例のハゲ爺(笑顔のキラキラ度当社比五割増)だった。
(不味い……金あげてるのが俺だって気付かれた!)
俺は恥ずかしさやいたたまれなさ、その他若気の至りという名のその場の勢いにかられ、
イケメンすぎる顔を隠しながらおっさんの手を振り切った。
「待ってください、一言お礼をっ…………」
おっさんの声が風に掻き消されるまで、俺は逃げた。
――おっさん意外といい声してた。
――身長思ったより低かった。
――体洗ってなかったっぽいな。後で体洗える所それとなく提供しないと。
そうして衝動にかられるままに走り、駅まで辿り着いた所で、今更ながらに思う。
「……俺のあだ名、"カンカンおじさん"なのかよ」
……リストラにあうのも分からないでもない。酷ぇネーミングセンスだ。
おっさんのよく着ているにジャケットのロゴ、訪問販売メインの会社だったよな、アレ。
だが。
「ぁあ~あ、明日からどうやって寄付しようか……」
頭の中の最優先事項はこっちだ。
とにもかくにも、さっき見た至近距離のおっさんの笑顔は、プライスレスでした。
「畜生、ハゲ萌~」