※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

同行営業

「少しは勝手が解ってきたか?」
先輩がオレに向かって缶コーヒーを投げてよこす。
「はい。大体は・・・」 って、ウソだけどな。
初めっから終りまで、あんたのことばかり見てた。
あんたの声ばかり聞いてた。
ハウツーも担当者の顔も全然頭に入っちゃいない。
あんたはそんなおれの心中を知るはずもなく勝手に続ける。
「このルート、おまえに任すんだからしっかり頼むぞ」
「任すって・・・」 なんだって? 聞いてないぞ、そんなこと。

「おれな、郷里に帰るんだ」
「親父が脳梗塞で倒れちまってさ、家業継ぐんだ」
「課長には言ってあるけど、まだみんなには内緒だ」
そんな困ったように笑って言う事がそれかよ。
初対面から気になってて、やっと一緒に仕事できて。
「おれにだけ」って打ち明ける言葉がそれなのかよ。あんまりだろ。

「おまえの仕事振り見ててさ、後釜にって頼んだのおれなんだ」
「よろしく頼むな」

極上の笑顔で、別れを先取りかよ。
それでも、胸が締め付けられて幸福感が湧き上がるおれって。
いっそこのまま押し倒しちまおうかな。っと、マジで考える3秒前。

おれの明日ってどっち?