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筋肉質

 自他共に認める凡人で容姿もまあ並み、惚れた者の目線で言わせて貰えば中の上か上の下ってところだろう。
見ようによっては男らしいと言えないことも無いけれど、下がり眉なのと瞼が重いのとでいつも眠そうな顔に見える。
良く言えば『人に警戒心を抱かせない』、悪く言えば『情けない』部類に入る顔だと思う。背だって僕より2センチ高いくらいだ。
 ……ただ。僕は、彼の後姿が案外好きだ。
 『男は背中で語る』とかいうんじゃないけどね。(彼にそんな器用な真似は出来ない。僕が保証する)
そんな言葉とは関係なく、骨だとか肉だとか、彼を構成するものの動きにつれてうねる影を見ているのが好きだ。
実際、彼は姿勢だけは綺麗なのだ。猫背気味の僕から見れば、正直羨ましい。
多分背中とか胸とか腹とか、そういったところが鍛えられているからなんだろう。
 彼の家の隅にはごつい鉄亜鈴が2つ転がっている。何でも近所に住んでいるお爺さんから貰ったらしいけど、詳しいいきさつは知らない。
とにかく彼はそれをわりと気に入っているらしく、少し時間が空けば重い塊を弄りたおして遊んでいる。
いや、もちろんトレーニングをしているのだろうけど、僕からすれば、どうにも猫が毛糸玉で遊んでいるように見えるのだ。
仕草が妙に楽しげなせいだろうか。
 眠そうな顔をした凡庸な男は、今はぼんやりと窓の外を眺めている。放っておけば何時間でも夜景を眺め続けているか、あるいはまた鉄亜鈴に手を伸ばすかのどちらかだろう。本当に無趣味というか、ある意味退屈を苦としない植物のような男なのだ。
「隆一さん」
「ん?」
 返事から一拍遅れて、彼がのろのろと振り返る。
「こっち、来ませんか」
 僕がぽんぽんと自分の横を叩くと、彼は一回頷いて、ゆっくりと僕の方に歩いてきた。
折角身体の線は綺麗なのに、寒がって服を着込んでいるせいで、今はよく判らない。
まあ、服を剥がした後の彼の身体なんて、知ってるのは僕だけでいいのだけれど。
 冬の長い夜に飽きたら、毛糸玉を弄り倒す猫のように彼を散々に弄り倒して遊んでやろうか。
 近づいてくる彼を見ながら、僕はそんなことを考えている。