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ゴッホが耳を切った理由

止めてくれ、と思った。
もう何も聞きたくない。批評する声も、
お前は才能がないと嘲笑う声も、女たちのくすくす笑いももう何もかも聞きたくない。
描けと脳の奥で木霊する自分じゃない誰かの声も。
指の先から溢れる色彩なんて持っちゃいない、真っ白なキャンバスの前で明確な
デッサンが浮かぶわけでもない。
俺はお前の絵が好きだよと遠い記憶の向こうで、それだけを頼りにしてきた誰かの
声ももう聞きたくない。
聞きたくないんだ。
描き出した己の姿は、自分を肯定する声を拾うかの様に耳が歪で、それが心底惨めだった。
もう聞きたくない。
批評も、批判も肯定も否定も神の導きも全て要らない。
削ぎ落とした耳の向こう、歪な形の耳はそれでもまだ音を拾い続けた。
描けよと。
俺はお前の絵がとても好きだよと。