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「勝ち続けた男」と「最後に勝った男」でひとつ

「思って、やらないことはなかった。望んだものは必ず手に入れた。
 そうして今まで生きていた。」
そう言って、彼は両手で顔を覆った。
くぐもった声が続く。
「でも……人には逆らえない運命があると知ったよ。
 手に入れたものは永遠じゃない、いつか失われるものだということを
 俺は……忘れていたようだ」
指の隙間を涙が伝う。
長い長い年月を共に過ごしてきて、声を殺して泣く彼を初めて見た。

今、この人を手に入れるのはたやすいことのように思えた。
冷たい涙に濡れた手をそのままに胸に抱き、やさしい慰めの言葉を髪にささやけば、
この人は、今まで忘れていた僕のことを思いだし、
ずっと側にいてほしいと願ってくれるに違いない。
しかし、僕はそれをしない。
あの日、一生気づかせない、想いを告げないと決めたのだ。
そして付き従ってきた、部下として、時に良き友人として、幾年月を。
僕は、最後まで僕の役目を全うしよう。
そしてきっと、笑って終わろう。
それがこの人の望みであり、この人が望んだ僕なのだ。