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一緒に買い物

「今日の晩御飯は何にしましょう」
「うー寒いからなー…鍋がいい!」
「…えーっと、たしか3日前も鍋じゃなかったでした?」
「いいんだよー!貴方の作る鍋、絶品だからな!毎日でもいい」
俺の言葉に貴方はほんのりと頬を染めて、メガネを指で押し上げる仕草をする。
しかし、実際にはメガネはずり落ちてなんてなくて、彼の指は空しく鼻の上を横切った。
その事に彼はますます頬を染めて、照れくさそうに鼻の頭を掻く。
「新しいメガネ、慣れない?」
「いやあ、これ、クセなんですよ。
 でもセルフレームなんて初めてで…似合わないでしょう?」
「あー、俺の見立てにケチつけ…」
「ええ!?いや!その!違います!すみません!」
さっきまで真っ赤だった顔を真っ青に変えた貴方は、小さく何度も俺に頭を下げる。
その姿が可愛くって、俺はいつも貴方に意地悪してしまうんだ。
「冗談。でもホント俺が押し付けたものだから、気に入らなかったら使わなくてもいいんだよ?」
「そんな!とんでもない!
 …嬉しいです。素敵な誕生日プレゼント、ありがとうございます。」
「そ…っか。良かった」
再び色を取り戻した頬と潤んだ瞳に、俺は思わずキスしたくなったけど、
人が行き来する商店街のど真ん中でラブシーンを繰り広げるわけもいかず、
ぐっと唇を噛んで我慢した。
帰ったらすればいい。キスも、それ以上も。

「あ、そういえばコロンの餌が切れそうだった」
「ついでに角のペットショップで買っていけばいいですよ」
「そうだなー。給料も入ったし、いつもより良いメシ買ってってやるかー」
「鍋、何味にしましょうね?」
「んーこの前があっさりだったから、今日はこってり系がいいなー」
「じゃあカレー鍋なんてどうですか?一度作ってみたかったんです」
「あ、美味そう。じゃあそれで。」
「はい。わかりました」

肩を並べて商店街を歩き、交わす言葉は晩御飯のメニュー。
これってなんだか…。

「私たち夫婦みたいですね…って男同士ですけど…」
恋人の台詞に少し驚きながら、それでも俺は頷く。
「以心伝心してる所も、夫婦みたいだなー」
自分で言っておきながら、顔全体が今まで感じた事ないくらいに熱くなる。
二人の顔が真っ赤なのは夕日のせいだけじゃなかった。
人ごみに紛れながら、こっそりと手を繋ぎながら歩く。
“幸せ通り商店街”
その名前は、伊達じゃないみたいだ。