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売れっ子俳優の弟と普通のサラリーマンな兄

上司のやけ酒に付き合って終電で帰宅。
誰もいない狭苦しい部屋に帰ってテレビをつける。
先に風呂に入ってから持ち帰った仕事をやろうか、などと考えながらチャンネルを回すと、
とても見慣れた、だが何度見ても不思議に見飽きない顔が現れた。
本当に同じ両親から生まれたのか?と思わず親の不義を疑ってしまいそうな、
自分とは違う繊細で、だが男らしい面立ちの男。
ちょうど主役の女性を追い掛けて走ってきた所で苦しそうに肩で息をしている。
その顔ですら男前だから軽くムカつく。
これはたしか去年の秋ドラマの再放送だ。
何度も見たから知っている、この後、男は女に「愛してる」と囁き口づけるのだ。

「俺はさぁ、台詞で愛してるって言う時は全部兄ちゃんのこと考えてるんだ」
「…それは相手の女優さんに失礼じゃないか?
それに役者ってのは役に成り切らないといけないもんだろう」
「役作りなんて人それぞれだよ。
俺は本当に愛してる人の事を考えながら演技する。
そうすると俺の嘘の演技に本当の感情が乗る」
「…なんだそりゃ。
まぁお前がどういう気持ちで演技しようが、どうでもいいけどな。
お前の出る番組なんて見ないし」
「ひでぇなー」

テレビではちょうど嫌がる女を宥めるように、しかし少し強引に男が抱き寄せ、優しく囁く。
「愛してる」
男に合わせて自分も呟いてみる。
けれどこんな言葉自分は彼に一生言ってやれそうもない。

すると計ったようなタイミングで、
玄関でガチャガチャと騒がしい音がし急いだようにドアが開いた。
「兄ちゃん帰ってるー!?」
俺は慌ててチャンネルを変えるためにリモコンを探す。