年の差主従

ベッドの上に体を起こして本を読んでいると、執事がうやうやしく
ワゴンを押してやってきた。
「旦那様、ホットミルクをお持ちいたしました」
「ミルク?」
「このところ、あまり眠れてらっしゃらないようでしたので...」
「私を子ども扱いするのか?」
「ホットミルクの効果は科学的に証明されているのですよ?
牛乳に含まれるトリプトファンという物質は脳内でセロトニンという物質を
作る材料になります。セロトニンは睡眠を誘うメラトニンというホルモンを
分泌させるのです。
また、ホットミルクの温かさは体の中から体温を上げてくれます。一旦、
上がった体内の温度がゆっくり下がる時、人間は眠気に誘われ...」
「わかったよ、わかった。もういい。飲もう」
私は老眼鏡を外して、まだ青い、その青さを努力と情熱でどうにか
しようと奮闘するほほえましいくらい頭でっかちな若い執事の差し出す
カップを受け取った。



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最終更新:2009年07月19日 08:12