※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

はじめてのおつかい

豚肉と、玉ねぎと、福神漬け。
…たったそれだけの買い物でも、その時の俺にとっては大冒険だった。
一緒に遊んでたマサキを無理矢理引っ張ってって、近所の八百屋に行ったら玉ねぎがなくて、
子供の足で歩いて20分かかるスーパーに行ったら、帰りに思いっきり道に迷って、
こけて、袋破れて、玉ねぎ転げて、悔しくて、…すっげえ泣いたのを覚えてる。
マサキが服の裾で玉ねぎ抱えながら、もう片手で俺の手をぎゅっと握ってくれて、
それが痛いけど暖かかった。とにかく心強かった。
でもマサキは口ひんまげて、泣くの必死で堪えてて、
…家の灯りが見えた途端、俺より大泣きしてたのも、覚えてる。

「絶対欲しいの何よ」
「えーと、福神漬け、肉、…豚肉安いからそれで。あと玉ねぎ」
「了解。…マジで?」
マサキが挙げた3つは、見事にあの時と被ってた。
「わざとじゃねえだろな」
「わざとじゃねえですよ。…いやホントだって、偶然」
笑いを噛み殺しながら、マサキは続ける。
「道に迷うなよ」
「迷わせたのお前。俺は大丈夫ですー」
「コケても泣くなよ」
「はいはい」
「ホントかねえ。俺一緒じゃないよ、手繋いでやれないよ」
「いらねーよ、バカ」
ニヤニヤするマサキに苦笑しつつ、俺はキーを手に取って、
「んじゃ帰ってきたら繋いでね」
「へ」
不意打ちくらってぽかんとするアホ顔に見送られながら、新居のドアを閉めた。
…んじゃ、こいつと暮らしてから初めてのおつかい、行ってきますかね。