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昨日

昨日のことを思い出した。
村上と、夕方まで一緒にいた。
駅で別れる時間まで、駅ビルのでっかい本屋で心ゆくまで新刊漁ったり、専門書パラ見したりした。
本屋に入る前に公園で飲んだ暖かい缶コーヒーのおかげで、実にゆったりした気分で過ごした。
公園の桜はすっかり散ってしまっていたが、枝変わりなのか、
一枝だけ、もうまばらな花を残している木があって、
それが風に吹かれて最後の花びらを散らすのを、ベンチで見ながら飲んだ缶コーヒーだった。
村上が、
「まるで祝福の」
言ったと同時に、自分でも無意識の正拳突きが奴の腹に決まったっけ。
「さっき食べた天津飯がぁ……」
悶えた村上。これ見よがしに大盛りなんか食べたからだ、馬鹿。
あいつのアパート近くの中華料理屋は天津飯が美味いんだ。ラーメンは不味いけど。
俺の方は少々食欲不振だったから、嬉しそうに注文する村上にちょっとむかついたな。
意地でも残したりしなかったけど。
幸い、昼前の早い時間だったから、店内は二人っきりで。
昼飯っていうか、朝昼兼用だったから早めの時間だったんだ。
朝飯は食べてなかった。そんな暇無かった。
とにかく人に見られたくない気分だったから、他に客がいないのはありがたかった。
店に行くのに村上の部屋を出るときは、なんかもう、顔上げられないぞって感じだったもん。
世間様は、みんなとっくに休日を元気に満喫してるっていうのに。
お天道様はあんなに明るく真っ当に輝いてるのに。
後ろめたい。
そのつい30分まで、暗い部屋で俺達は布団の中だったから。
男二人で。昨夜のまま素っ裸で。外の喧噪を聞きながら。
目を閉じたまま聞いた、低い、好きだって言った村上の声が耳に残る。
そういう朝は初めてだった。
俺も、と呟くのが精一杯だった。

ああ、今日どんな顔して村上に会えばいいんだろう。