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アナログ×デジタル

「……あ」

騒がしい教室ン中であいつの小さな呟きが妙に大きく聞こえた。
普段話すこともない、でも妙に目を引くあいつ。
困ったような諦めたような表情で懐中時計の文字盤を眺めている。

懐中時計って時点でまずありえない。
おまけにケータイも持ってないらしい。
パソコンももちろんないらしい。
たまに休み時間に万年筆で手紙を書いていたりする。
聞いた話によるとメールの代わりなんだとか。ありえなさすぎ。

「どした?」

声をかけると驚いたような表情で振り返った。そりゃあ驚くかもな。
多分同じクラスになってから初めてだ、話すの。


「ねじを巻いておくのを忘れて、今見たら時計が止まってた」

こいつの時計は電池式ですらないらしい。
とりあえず腕に巻いていた時計をはずして渡した。

「今日1日貸してやるよ。巻いてもすぐに動かねんだろ?それ」

ああ、ますます驚いてる。俺だって驚きだよ。

「ありがとう」

大人びた声でそういうと時計をはめた。
なんだかデジタル時計が似つかわしくなくて浮いている。
違う世界っぽいよなあ。デジタル主義な俺とアナログ主義なあいつ。

でももう少し近づいてみたい。
そんなことを思うのはどうしてだろう。割り切れないこの気持ちはなんだかアナログ的だ。