レッカー車と、引っ張られてった車

広い通りを繋がったままの二つの車が走る。いかついレッカー車に引かれながら後ろから連行される車は言う。
「お前、俺をどこに連れて行く気なんだ!」
「ぎゃんぎゃん喚くなようるせえなあ」
「ご主人が、ご主人を俺は待たなきゃいけないんだ!」
「そのご主人様が戻ってこないから俺が今お前を連行してるんだが」
「俺たちがいったい何をしたってんだ!」
「さあな。お前のご主人様はそこんとこ、分かってるんじゃないかな」
「……まさか俺、捨てられたってことなのか」
赤信号を前に繋がったままの二つの車は止まる。
「もう俺は、要らない身なのかな」
目の前のバイパスに多くの車両が激しく行き交う。
「俺もう新車じゃないし、傷だって随分ついてるし」
横切る通りの信号が黄色に変わる。
「それでも今まで仲良くやってきたけど、もうおしまいなのかな」
斜交いの赤色に変わった信号の後に、青色に点灯した信号にうながされ二台はゆるりと発進する。
「……大丈夫だよ」
そう言葉をかけるレッカー車に力なく引かれるままの連行車。
「大丈夫だよ、お前の主人、すぐに迎えに来るよ」
「そうかな」
「そうさ。だからそれまでは仲良く行こうや、な?」
広い通りを繋がったままの二つの車が走り続ける。


迎えに行ってやってくださいw


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年04月04日 19:00