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不思議ちゃん受け


「俺、三崎先輩の事が好きかも知れません」
「そうか、ありがとう」
「はい」
夕日が眩しい部活の帰り道、隣を歩いていた後輩の司がぼそりと呟いたので視線を隣に向けたが、
司は前を見たまま、こちらを見ることもなくいつもと変わらない無表情で歩いていた。
口数の少ない彼は他人との会話を億劫と感じているのか、普段の会話からして自分の意思を一言伝えただけで会話を終わらせる癖がある。
その所為でチームメイトに誤解されている点は多いのだが、本人がそれを苦に思っていないのだから
たかだか部活の先輩である自分にはそれ以上何も出来ない。
せいぜい、こっそりと彼の言動にフォローを入れるので精一杯だ。
「……」
「……」
「……ん?もしかして、今のは告白か?」
「はい」
不自然なニュアンスに疑問に感じ、思わず足を止めると同じように足を止めて、変わらず前を見たまま頷く。
「…そういうのはそんな風にさらっと言うもんじゃな…いやそうじゃなくて」
「そうですか、先輩。好きです」
今度は足を止めて、こちらを真直ぐに見つめながら。いつもと寸分違わない無表情で。
本当に告白をされているのか疑いたくなる程、さらりと、無感情に。
普段から口数が少なく、その数少ない言動からも心情が読み取りにくい彼だが、嘘や冗談を言うタチではないからこれは本気の告白なのだろう。
いや違う。そもそも、男同士で好きだの何だのと言われても困る。
「ええと、俺は…」
「では、俺はこれで。失礼します」
「は!?」
可愛い後輩を傷付けないよう、どう断ろうかと慎重に言葉を選んでいる途中。
いつもの別れ際のように深々と頭を下げられ、いつもと同じように別れの言葉を告げられる。
「ま、待て!お前、今俺に」
「はい、好きです」
「…俺の返事はいいのか?」
「はい、先輩は、俺と同じ好きじゃないですから」
「でも、俺は先輩が好きなので。先輩に嫌われても好きなのは変わらないですから」
「だけど、一緒に歩いてたら俺の中が先輩で一杯になって、外に出さないと弾けそうになったので」
「ええと、だから」
「司」
「はい」
いつもより、ずっと口数の多い司の顔は泣きそうで、それでも視線を俺から逸らすことはない。
「もう少し俺に考える時間を寄越せ」
「はい」
「お前は他人とよく話し合って意思の疎通をさせる必要がある。そこの公園にでも寄っていくか」
「はい」
ごく自然に、司の手を取り公園へと足を向ける。
「…先輩の考えてる事はよくわかりません」
「気が合うな。俺もだ」
眩しいほどの夕日は既に半分ほど沈んでいて、空が紫に変わりかけていた。