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竜騎士と竜


アズマークは、赤子の拳大の卵を手に、盛大に舌打ちした。

幼い頃に憧れた、竜騎士になって早10年。
今日は、待ちに待った自分の相棒となる騎竜を選ぶ、大切な日だった。
蒼穹を舞う、雄大な竜の背に乗る己の姿を、何度も夢想した。
雄々しく、威厳のあるその背に跨った将軍に続き、剣を振るう己を夢にみた。
だが、突きつけられた現実は、あまりにも残酷だった。

「申し訳ないのですが、貴方の分の騎竜はおりません」
「どういうことだ」
「騎乗用の竜との契約式が、昨日だからです」
「俺は今日だと聞いていた!」
苛立ちから使用人へ当たり散らしていると、彼はアズマークに、くすんだ鈍色の石ころを差し出した。
眉を寄せる彼に、使用人の青年は、困ったようにこう言った。
「そうなると、まだ羽化していない卵しか……」辺りを見渡せば、しっかり自分の竜を確保した仲間がニヤニヤしながら様子を見ている。
この時初めて、自分が騙された事を知り、アズマークは唇を噛み締めながら悔しそうに卵を睨んだ。
そして冒頭に戻る。

卵の大きさから、竜の大きさはたかが知れている。それが、騎乗出来る大きさになるまで、どの位の時間がかかるのか…
想像もしたくない。

結局その日は、卵を掴んだまま、ふて寝して終わった。


翌日。
アズマークは、己の手が小さな暖かいものを掴んでいることに気づいた。
ハッとして目を覚ますと、そこには、額に小さな角を二本生やした少年が眠っていた。
髪は己と同じ黒、肌はきめ細かいが、若干白みが強く、光のあたり具合でウロコらしきものが見て取れた。
「おい…」
掠れた声でアズマークが呼びかけると、少年は、ゆっくりと目を開ける。
その双眸は、とても美しい夕陽の色をしていた。
大きな目をくるりとさせながら、彼はにっこり微笑みながらこう言った。
「おはようございます、マスター。おれに名前をつけて下さい」



リオンと名付けた少年-竜の成長は、なかなか遅かった。
言語や知識の吸収は、目を見張るものがあるのに、体躯はかわらず少年のまま。
竜の姿でも、体が小さすぎて、体格のいいアズマークを乗せることが出来ずにいた。
「でも、竜としては珍しいんですよ。人になれるのは」
「騎乗出来なきゃ意味ねーんだよ」
「それは、あともう一年待ってください。そしたら一気に大きくなりますから!」
「将軍のよりもデカくなれるか?」
「勿論!ヴィオラさんや、カーラさんよりも大きくなります!」
ニコニコと笑いながら、肉にかぶりつくリオンの頭を撫でながら、「しばらくは、このままでもいいか」と、アズマークも小さく笑った。