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罰ゲームをきっかけに変わった関係

※女装注意

「まったく、まいったよ」
友人の柴本にそうこぼしたのは、別に奴に助けてもらおうと思ったわけではない。ただちょっと、愚痴を聞いてもらいたかっただけだ。
「どうしたの?」
「実は罰ゲームで今度のゼミ合宿の時に女装で歌わなきゃいけないことになってさ」
「……それは、大変だね」
そう答えた柴本の様子が少しおかしかったことに、その時の俺はちっとも気付かなかった。
「そうなんだよ。女装自体もあれなんだけど、それよりも服をどうするかが問題なんだよな。
 誰かから借りるにしても、俺と変わらないくらいでかい身長の女の子の知り合いなんていないしさ。
 着物だったらちょっと小さくてもなんとかなるだろうから、姉ちゃんの振り袖でも借りるかな」
「でも西田のお姉さんって西田の肩くらいまでしか身長ないって言ってなかったっけ?」
「あー、うん。やっぱさすがに無理があるかなぁ……」
俺が考え込んでしまうと、柴本が妙に真剣な顔になって口を開いた。
「西田。誰にも言わないって約束してくれるなら、協力してもいいよ」
「は? 誰にも言わないって何を?」
「それは約束してくれないと教えられない」
正直、服は姉ちゃんに頼めば誰かから借りられないことはないと思う。
しかし柴本にそんなふうに言われたら、服のことよりもこいつの誰にも知られたくない秘密の方が気になって仕方がない。
「……わかった。約束するから協力してくれ」
俺がそう答えると、柴本は神妙な顔をしてうなずいた。

「うーん、西田は手足が長いから袖丈がちょっと短いね。胸はきつくない?」
「あ、ああ。何とか」
柴本の問いかけに答えながら、俺は部屋の中をきょろきょろと見回した。
かろうじてベットの周囲だけは空いているものの、それ以外の空間は色とりどりの衣装と布地やミシンなどで埋まっている。
壁一面にかかっている衣装はどれも柴本の部屋で読んだマンガのキャラクターが着ているのと同じ衣装――しかも全部女性キャラの衣装だった。
柴本の部屋にはしょっちゅう遊びに来ているから奥に寝室があることは知っていたが、その中がこんなふうになっているとは思いもしなかった。
「柴本……これ、女装っていうか、コスプレなんじゃ……」
今、俺が着せられているのも、柴本が全巻揃えてるファンタジー漫画の敵方の女性キャラが着ているのと同じものだ。
女性キャラのものなのに、少しきつめではあるが俺にも着られるということは、やはり俺よりは少しだけ華奢な柴本のサイズに合わせてあるのだろう。
――ってことは、あのふりふりレースのも、露出度高いのも、全部こいつが着てるのか。
すぐ側で俺の衣装をチェックしている男がそれらの衣装を着ているところを想像すると、なぜだか分からないが妙に鼓動が早くなる。
「あ、やっぱり一般人受けする衣装の方がいいよね。無難にメイドかセーラーあたりにしておく?」
言われた瞬間、想像の中の柴本がメイド服に着替えてにっこりと微笑んだのを、慌てて頭の中から追い出す。
「それにしても西田がこんなにシーラの衣装が似合うとは思わなかった。
 こんな逸材と毎日顔を合わせてたのに、どうして気が付かなかったんだろう……」
気が付けば柴本はどこかうっとりとした表情で俺を見つめていた。
女性キャラの衣装が似合うと言われて嬉しいはずがないのに、柴本にそんな目で見られると妙に心が騒いでしまう。
「あー、やっぱりこんなに似合ってるのを価値の分からない一般人に見せるのもったいないな。
 どうせだったらイベントで俺のエリと合わせたい……」
柴本が口にしたのが同じ漫画のヒロインキャラであることに気付くと同時に、柴本がその可愛い衣装を着ているところを想像してしまい、
気が付くと俺はイベントの意味も分からないまま「いいよ」と答えていた。