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敵国の騎士(受)を倒し、そのままお持ち帰りする攻

男達は武器を取り、戦渦の中に人命も豊かさも失われてゆく、血腥い時代であった。
古くより隣国の友誼を育んできた二国でさえも、
いつしか裏切りと報復の連鎖に絡め取られて久しかった。

ガツッ、という鈍い音とともに横様に薙いだ愛剣が硬い感触をとらえる。
次いで痺れるような衝撃が伝わってきた。
(やったか…?)
見守る男の目の前で、騎士はついに膝を折る。
大剣で身を支えてふらりと立ち上がり、そのまま前のめりに倒れた。

腕には覚えがあった。基礎も駆け引きもあざとい戦術も、全てあの男に教えられた。
十五年前、父が家庭教師にと雇った流れの傭兵。
見事な赤毛に、煙るような水色の眼をしていた。
「貴族のお坊ちゃま」と馬鹿にされるのは我慢ならなかったから、必死に学んだ。
しかし、生きた伝説と謳われる騎士をこの手で打ち倒すことが出来ようとは。
彼があらかじめ肩を負傷していたのは僥倖と言う他ない。

取り囲もうとする部下を制して、男は倒れ伏した騎士の傍らに片膝をつく。
手ずから騎士の防具を外し、男はしばし言葉を失った。
そしておもむろに力を失った体に腕を差し込み抱き上げた。
周囲にどよめきが広がった。
「この男を如何なされるおつもりです。上に知れたら責任を問われるのはあなたですよ?」
その場の誰もが抱いているであろう疑問を、副長が控えめに代弁する。
「私は城へ帰る。他言は無用だ。」
こともなげにそう言い残し、男は騎士を馬上に担ぎ上げる。
呆然と立ち尽くす部下達を残して、蹄が地を蹴った。

「随分探しましたよ。まさか、隣国で騎士になっていたなんて…。」
帰路、男は夢見るように呟いた。十五年ぶりの再会だった。