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自称親分×無理矢理子分


「ねえ、今日もやるんでしょ親分! 連れてってくださいよ」
 金曜日、仕事を切り上げてロッカールームに向かう俺に、後輩がすりよってきた。
 ないはずの尻尾をびちびちと振り回しているのが見えるようだ。
「だめ。お前弱いもん」
「えー! それじゃ永遠に加われないじゃないですか! やらなきゃ上達しませんて!」
「うるせ。よそで修行してこいよ」
「オレはもう親分を心の師匠と定めたんすよ!」
 親分なんだか師匠なんだかはっきりしろよ、と俺はジャケットに袖を通しながら後輩をにらんだ。
「だいたい、お前顔に出すぎんだよ色々と。おまけに戦略もなにもあったもんじゃねえ。
 俺らのやってるチップの天井で、30分もたないだろ。向いてねえよポーカー」
「そんなあ」
 じゃあ、見てるだけでいいですから連れてってくださいよう、と彼は訴える目つきで俺を見上げた。
 俺より身長高いくせに、器用に背中を丸めているのがみじめっぽい。
 こんなのに気に入られたのが運のツキってやつか。しかも見てるだけってマゾか。
 悪友とワイン片手にポーカーを楽しむ集いが、こいつが入るとどうも任侠の気配が漂う場末の賭場になってしまうのだ。
「いいか。ひとっこともしゃべるなよ。俺の視界に入るな。
俺の後ろで黙って2時間座ってられるんだったら、しょうがないからつれてってやる」
「ひゃっほう! 座ってます、座ってます! 地蔵のように座りますよ!」
 ぴょこたんぴょこたん跳ね回り始めた。でかい図体の奴が暴れんなっつの。
 この前のときは、さっさとハコったこいつが退屈してテーブルのまわりをちょろちょろしていたせいで、
つれてきた俺がスパイさせたと疑われ、ビリの罰ゲームである次回の集まりまでの用具保管を押し付けられた。
 大体こんな阿呆にろくなスパイなんかそもそも務まるわけがない。
 濡れ衣なのだが、そんなときに限ってぼろ勝ちして疑われる羽目になったわけで、疫病神としかいいようがない。
 俺はため息をついた。
「2時間で切り上げるオトナの集いなんだからな。終わったら俺んち行ってサシで特訓だ特訓」
 用具が入った紙袋をその胸元に押し付ける。
「持てよ、ほれ行くぞ」
「いいいやっほううう!」
「黙れないんだったら置いてく」
 しかし、こいつ、特訓でなんとかなるのかなぁ……。