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ロボットアニメ

「ね、コレ懐かしくない?」
一本のビデオを鞄から出す。
ほぼ毎日、同じ部屋で同じ顔を見ながら同じ発泡酒を飲む慎ましくも至福の一時。
今日もいつもと変わらない、気の知れた相手とのくだらなくも楽しい時間。
「家のビデオデッキがついに壊れて見れなくなったから
 俺のビデオ全部送ってきたんだって。俺の部屋もビデオデッキねーのに。」
「おばさんらしいな。」
「二人で一緒によく見たよなー、ゾイダム。」
「あー。懐かしいな…だけど人気無くてすぐ終わったんだよな。」
そうだった。クラスでも人気が無くて、
熱心に見ていたヤツは俺とお前くらいだった。
「何であんなに人気無かったんだろーな。すっげー面白かったのに。」
昔から二人で連んで、ゾイダムのプラモデルを作ってた。
下手だけど捨てられなくて実家の押入にまだ仕舞ってあるはずだ。
やっぱり昔からコイツとだけは気があった。

「いや、面白くなかったよ?」
「えっ?」
思いがけない言葉が返ってきて咽せこみそうになる。
「設定は人気があった他のアニメを無理矢理詰め込んでたし、主人公も影が薄かったし…」
「えーーーっ!お前も一緒に毎回見てたじゃん!ベクトが好きって言ってたじゃん!」
変なところで秘密主義な所があるコイツから
好きな登場人物を聞き出すのに苦労したから覚えてる。
「お前、よくそんな事まで覚えてるな。」
「すっごい裏切られた気分。………じゃあ、何で見てたんだよ。」
「んーーー………お前が見てたし。それにベクトが馬鹿で単純で目が離せなかったから。」
しばらく考えた後に小さくボソボソと言う声がテレビから聞こえる銃声でかき消される。
「え?ベクトが何?もう一回言って。」
「………。」
「無視かよ。」
(せっかく楽しく昔話をしようと思ったのに。なんだよこの空気。)
昔から俺ばっかりはしゃいで、俺ばっかり楽しんでいて…。もしかしたら今も…。
今までの全てが急に不安になる。
「……俺、馬鹿だからゴメン。もしかして、今も無理に付き合ってくれてる…とか?」
「は?」
「アニメに付き合わせたみたく、今も面白くないけど俺に付き合ってくれてるんじゃないの?」
「違うよ。」
「本当か?」
「本当だ。」
「絶対に?」
「本当だ。」
「嘘だったら?」
「殴っていい。」
昔から何度も繰り返してきたやり取りが少し空気を緩ませる。
「ほら貸せよ、うちビデオ見れるから。」
「えっ、面白くないんだろ?いーよ。」
「いいから。っていうか俺がベクト見たいだけだから。」
「そんなに好きなのか?」

「うん。大好き。」